2話 人の村
本に書いてあったのは、ほとんどがある少女のこと。
その内容は少女の生まれた日や年齢、名前等が書かれていた。そして最後に、その少女は魔物である事が書かれていた。
その少女が魔物である証拠として書かれていたのは、その少女の姿が人間とは異なることが書かれていた。具体的に、その少女は耳が長く、赤い目と赤く長い髪を持つ。そして、人間とは比にならない程の魔力を持つらしい。
まず、この世界に魔力が存在したことに驚いた。そして、この少女は誰なのかと考えた。
ちなみに、その少女の名前は「ルヴト・ノルス」と言う。
この日記に書かれている少女について考えた。
その結果、まずこの世界の人々と接触していないため、考えても無駄という結論に至った。まぁ、仕方ないよね。情報ゼロだし。
さっき言った通り、今現在での情報が限りなく少ない。
今はもう夜。今日はとりあえず寝て、明日から情報収集を始めよう。
ここに来た以上、元の世界に帰れる手段が見つかるまで、この世界で生き延びないといけない。
そう思った僕は、小屋に入り、ベットに横たわった。
―
大きな音が鳴った。あちこちで建物が崩れる音がする。
山の上から、津波で流される建物を見ていた人々は、皆、絶望感に打ちひしがれていた。
そんな中、山の端で人が落ちた。
見えていなかったのか、雪で凍った草の上に足を乗せ、滑り落ちた。
津波は山のすぐ下まで押し寄せていた。落ちた人はその津波と山に挟まりながら、流されて行った。
確実に死んだだろうと、誰もが思った。
男は流されながら、茶色く濁った水を飲み込んだ。男は助けも呼べずに、ただ流されていた。
―
「はぁっ!?」
勢い良くベットで起き上がった。
さっきのは夢だったのか。
前の世界では、当たり前のように聞こえていた鳥の囀りも、この世界では音沙汰もない。
少し寂しく感じた。
そんなことはさておき。
昨日の日記に書いてあった少女を探そうと、僕は外に出た。日記を持って。
昨日の星が無かったかのように、前世で見たような太陽の光が、空の雲と緑色の野原を輝かせる。
風が小屋に向かって吹いた。小屋は少しガタガタと揺れた。
風は涼しく、何処か懐かしく感じた。
僕は、遠くを眺めた。
目の先には山があり、その麓ふもとに何かがあった。
そこを目指し、歩き出した。
――
ヘル村 村長の家
「お父ーさん。」
「どうした?」
「魔法の本他にない?」
「ない」
「えー…」
髪の長い女の子とそのお父さんらしき人の会話。
「もうこの村の本、全てを読み終えた。国に行かないとないぞ。」
「じゃぁ国に行くよぉ。」
「冒険者でも付けてけ。」
「はーい…」
――
木に着いた。
周りに何も無いのに、何故か1本だけ。立っていた。
この辺で休憩しようと、僕は背を木に付けたまま、しゃがみ込んだ。
3分くらい経った時。
目指していた方向から、何かがこちらへ走ったできたのが見えた。
何だろうと思いながら、得体の知れない動く何かを目で追った。
その何かがこちらに近付くにつれ、それが人影である事に気づいた。髪の長い、少女の様だった。
少女がこちらに近ずいて来るのと同時に、その少女が今の自分の姿に似ている事が分かった。
その少女が僕の前に来た時、少女は「-----」と、僕に言ってきた。
そういえばと思い出したのは、この世界で日本語が通用するかどうかの話。通じる訳ない。そもそも、僕がこっちの世界の言語を理解出来てない時点で分かることだが。でもなんでなの日記は日本語だったんだ?
そんな事を考えていた次の瞬間。頭の中に、日本語が浮かんだ。その言葉は『やっと見つけた』とあった。恐らくこの少女が言ったものだろう。
頭に日本語が浮かんだのと同時に、何故か分からないが、少女が放った言語が理解出来るようになった。
…いや、ホントになんで?
少し経った後、僕は少女に聞き返した。
「君は?」
と。
少女は続けるように返してくれた。
「私はノルナ。そこの村の村長の娘よ!」
元気よく僕に言ってきた。
と言うか、なんで僕の言語が理解できるの?
「貴方は?」
「ぼ…私はノルス。」
僕は少女の質問に素直に答えた。
話す直前まで、自分が少女の姿である事を忘れそうになったけど。
僕は今の体の名前が分からなかったから、日記に書いてあった『ノルス』という名前を使わせてもらった。
「へぇ〜。私と名前、似てるのね?それによく見たら、貴方、私にそっくりじゃない?背も目の色も…」
「確かに、そうですね。」
少女と姿や名前が似ているなんて、双子みたいじゃないか。
「もしかしたら、私たち双子なのかもね?」
「あ…」
考えていることまで同じ…これは偶然か?
「ところで貴方。こんな所で何してるの?」
やべっ。人と会った時どうやって話すか考えてなかった。
「えぇっと〜。ここら辺で、泊まれる場所を探している旅人と言うか〜えぇっと〜…」
「…?」
少女は首を傾げながら、目で訴えかける。
やばい。いや本当にやばい。
前世ですらほとんど話してなかったってのに…ここはひとまず…
「ぼ、冒険者になりたくて、村を探している旅人です!」
目を瞑りながら、かなり大きな声で言った。
目を半目にしながら少女を見た時、気づいた。
…めっちゃ、目キラキラさせながら見てくる。
しかも手まで握っちゃってさ!
「貴方のみたい方を探していたの!」
「へ?」
「是非1度、うちに来てくれない?」
「え?」
(え?えええええええええええええ?!)
――
少女に釣られるたまま、僕は村に来てしまった。
と言うか、なんでこの子は僕が冒険者になりたい!って言った後、直ぐに目をときめかせていたのか。
分からん。
それより、村の整備や警備が充実しすぎではないか…戦争でもするのかと思うぐらい皆は慌てているし、カンカンとなる鍛冶屋らしき所にも人が集まっていた。
戦争するにしても、ここまで攻め込んでくる人間なんて居ないだろうし…魔物とかいるのか?確信はないが、転生しているという確実が存在する以上、ここが魔物の存在する異世界の可能性は十分に高い。
そんな事を考えていると、少女が立ち止まった。
下を向いて歩いていた僕は、直ぐに正面を見た。そこにあったのは村の中でも、少し大きめの建物だった。恐らく、ここが村長の家なのだろう。
今度はドアが開いた。ゆっくりと、ドアノブが回された。
ドアが完全に開いた時そこに居たのは、村の人より少し大きい体と、まだ若いように見て取れるような澄ました顔。これが村長なのか。
ていうか、若すぎないか?この年で娘を持つとは…
村長に対しそんな事を考えていると、村長は突然…
「おい!」
と、叫んだ。
なんだ?僕がみたいな見知らぬ奴と娘が一緒にいるからか?
「お前今何時だと思ってるんだ!」
「……ごめんなさい…」
空見ても、まだ全然明るいぞ?
「あっすまない。…ん?…君は?」
「私はノルス。冒険者を目指している旅人です。」
村長は僕に対し、少し目のシワを寄せながら質問を投げかけた。僕もそれに答えた。すると村長は…
「嬢ちゃん。あんた1回俺と会ったことあるか?」
「いえ?ありませんが…」
今の体のことは、まだよく分かってない。だからこそ、下手な事は言えない。
村長はノルナと目を合わせた。
ノルナは首を傾げたが、村長は事情が分かったのか目を閉じ、僕の方を向いた。
「嬢ちゃん、話がある。中でしよう。ノルナも。」
「はーい」
「わかりました。あと、私はノルスです。」
「あぁ。そうだったな。ノルス。」
そう言い、3人は村長の家へと入っていった。




