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泰平の魔物 原  作者: 敗北者
1章
12/12

12話 女神と悪魔


――


 アンデッドの魔力反応が先程から途切れている。そう感じたグレイは、右前にいるアンデッドに話しかけた。


「ねぇ、なんでこんなとこにいるの?」


 詠唱は既に必要を無くし、魔法陣に魔力を流し込むだけで良くなった。


「私たちは…」

「うわぁぁ!……あんた達話せるの?」


 グレイは驚きながらも、冷静になり、アンデッドに話し続けた。


「はい。私たちは、主人に指示をもらい、あなたの保護に参りました。」

「誰よ、主人って」

「…銀髪のエルフです。」

「は?」


 グレイの知っている中でも、銀髪のエルフは1人しかいない。ノルスだ。


「まさかノルス?でもどうして……そもそも、アンデッドを従えることが出来るの?」


 グレイがそう聞くと、左前のアンデッドが答えた。


「私たちは、あなたも知っての通り、魂を基礎とし生命を維持しています。ですが、肉体なしの魂は天に引っ張られるように昇ります。その魂に縛りをかけることにより、魂が地上に留まることが出来るのです。」

「つまり、ノルスはアンデッドに縛りをかけ、この地に留めた……一体何が狙いで…そう言えば、他のアンデッドは?さっきから魔力反応に途切れてて…」

「それはきっと、主人がアンデッドを助けたのでしょう。もう、私たちに敵対意志を持つアンデッドは存在しないという事ですよ。」


 アンデッドの言う事が正しければもう結界を張る必要は無くなった。だが、敵であるアンデッドを信用するのも…と、グレイは考えていた。だが、それが本当だとして、わざわざ魔力を消費する必要も無いだろうと、グレイは考えた。そしてグレイは魔法陣だけを残し、魔力を入れなくした。


 グレイはアンデッドと柵の入口に向かった。


――


「創り直そうよ。この世界を。」


 僕はローブにそう言った。

 日が昇りかけ、辺りが明るくなっていた。日光はアンデッド達に当たり、アンデッド達は動きを止めていた。


 だが、ローブは動き続けていた。


「……私は…」


 ローブは話し始めた。


「私は、魔王様に仕えている。魔王はあなたも知っての通り、嫌がらせを受けていた。それは種族を問わず、人間も魔物も…魔王は元々、第2種族の共存計画に力を入れていた。生まれつき、魔力と知力を持ち合わせた魔物が、そんな計画に協力を…と、気に食わなかった、連中が、魔王と魔王の手伝いなどをしていた主を襲撃した。まだ10歳だった。」

「おい、ちょっと待て。僕が聞いてた話と全然違うんだけど…」

「大陸ミズルと大陸ヘルは2万kmほど離れている。海を挟んだその大陸同士の情報は、海の所々にある島を渡り、送られる。そのため、情報は少しずつ変わっていく。」


 ローブは後ろの岩を見た。


「あの白いローブの少女も、海を渡れば黒いローブの少女に変わるかもしれない。」

「あんたたち、さっきから私を無視して話を続けないで。ねぇ、ローブル。」

「……!なぜ、私の名を…」

「知らないわけないわ!私があなたを作ったのよ?」


 僕はある女性を思い出した。

 ……て言うか、ローブルって…今僕が頭の中で読んでいたこいつの名前に"ル"が付いただけじゃねぇーか。


「お前、フレイか?」

「そうだよ?」

「……いや、嘘は良くないよ…」

「フレイか聞いたのはあんたでしょ!」


 魔を司る神、フレイ。ノルスとノルナを作った女神だという。


「あなたが、私を?」

「そうよ。あなたも結構な出来だったもの。」

「そんなことは無い!」

「「……!?」」

「私はこの身で生まれた訳でもない。その私を作った?ふざけるな!」

「……作ったのはあなたの前の姿…」

「は…?」

「あなたを作っていた時、私は、死んだのよ。」

「…何を、言っているんだ?」


 フレイは話を始めた。


「魔を司る神。私は魔力や肉体で、新たな生命を作り出している。1000年程度の頻度で、作っている生命は、種族が持つ能力の一定のラインを超え、一言で言えば超能力を手にする。超能力は私が意図して作り出す訳ではなく、作る最中に、その生命が私と繋がることで、私が持つ能力の一部がその生命に共有される。それにより、その生命に能力が宿る。」

「……私が生まれたのは、約1000年前。私はその頃人間として生まれました。魔力が多く、勇者などと呼ばれるほど慕われてしまうようになりました。それでも嫌だったのは、その頃から何故か魔物と人間の共存計画が中止されたのです。その頃、ある魔物が『悪魔』と呼ばれるようになったのです。その魔物を倒してくれると私は勇者と呼ばれるようになったのです。」

「待った。その話って…」

「はい。先程の話の続きみたいなものです。続けます。私はその勇者と言う呼称のようなものが嫌いになっていきました。そして、私は王国中にその事を訴えました。『あの魔物は、悪魔では無い』と。だが、その行動が、王国が反逆と捉え、その国1番の大魔術師に捕まりました。私はその後、公開火刑を受けました。あの時の痛みは、今でも忘れません。私はそのまま白骨化し、魂だけが自分の縛りで留まりました。」


 縛り。アンデッドを回復した時から確信は着いていたが、この方法は合っていたらしい。


「その時、私の元に魔王様が来たのです。白骨化状態の私に魔法をかけ、アンデッドにしたのです。私は元々魔力量が多かったためか、魔王様から認められ、私は魔王様の元に仕えました。」

「つまり、今回の魔物とアンデッドの襲撃は、魔王が指示したのか?」

「……半分正解半分不正解です。」

「は?」

「魔物襲撃は私たちの独断行動。アンデッドが魔王様の指示です。」

「おい待て、今、"私たち"って言ったか?」

「はい。」

「つまり、指揮官らしき者が、お前以外にいるのか?」

「はい。」

「そいつは今、どこにいる…?」


 ローブルは少し黙ったあと、話し始めた。


「……王国と帝国の間に存在する森。その南。つまりはこの村に1番近い。」


 僕はその言葉を聞いて、思い出した。

 あの少年だ。

 僕はあの時、馬車を飛び降り村に向かった。馬車を飛び降りたのは森の辺り。

 飛行魔法の速さは馬の速さと同じ。それなのに僕は飛行中、馬車を見ていない。

 悲鳴が聞こえても…とも思ったが、馬車は厚い布で覆われている。

 それにあの少年は、声が小さかった。

 あの少年がギルド前で叫んだ時、ほとんどの人間が気づいていなかった。

 つまり、あの時、あの馬車がローブルの仲間に襲われた可能性もある。と、言うこと。


 馬車は見ていない。悲鳴も聞いてない。

 可能性が出る条件は揃っている。


 確信した。

 確証なんて考えている暇は無い。

 今思えばそうだった。この村に着いてから随分立っているというのに、馬車がまだ来ないと言う事実。


 気付けば僕は、走っていた。

 魔法なんて手慣れて無いものは使わず。ただひたすらに、走っていた。


――


 グレイは柵の前に立ち、アンデッドの言葉に信用が出来た。

 冒険者は地に座り込み、アンデッドは倒れていた。

 柵の前の先には、大きな岩があった。

 その岩の前には動いているアンデッドと幼い少女が立っていた。

 グレイはアンデッドに聞いた。


「あのアンデッド。なんで動いているの?」

「あのアンデッドは魔法で日光が効かない魔王の手先です。」

「……!」


 グレイは魔王の手先と言う言葉を聞いて驚いた。


「じゃあいつを…!」


 グレイがそう言いながらそこに走ろうとした時、アンデッド2人がグレイの腕を掴んだ。


「何よ?!」

「あの者は、もう主人により、善良な者に戻ったと思います。」

「どう言うこと?」

「主人が脳を共有し、情報を送ってきました。その内容は、あの者は、善良その者に生まれ変わったと…」

「……仕方ない。」


 グレイは納得し、冒険者の手当に回った。


――


 森には、昨晩より魔物が増えていて、その魔物全部が、1つの場所に集まっていた。


「どこだ……どこにいる!」


 僕はとりあえず、その集まっている場所に行ってみることにした。途中、飛行魔法を使い。



 魔物の集まっている場所には、木に寄っかかった馬車があった。

 僕はその付近に降り、布を取った。そこには…何も無かった。誰もいなかった。

 遅かった。追いつくはずがない。


「クソッ」


 僕は右下を見ながらそう呟いた。

 そこには足跡があった。


「なんだこれ…」


 僕は近付いた。魔物を避けながら。

 感じた。魔力を。微かに感じた。その魔力がある足跡は、道を外れた場所へ続いていた。


 その奥には焚き火の跡があった。

 もう遅い。間に合わなかった。何も、無かったんだ。


 僕は自分に対する罪悪感と無力感に襲われながら、村に向かった。


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