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泰平の魔物 原  作者: 敗北者
1章
11/12

11話 魔術書


 魔書。魔法書、魔術書、魔導書などの総称。魔書は魔術に関する、主に魔力や魔法について記載されている書物のこと。

 魔書は魔法書、魔術書、魔導書の3つに分かれている。

 魔法書は四大元素系魔法や攻撃魔法など、常人が扱える程度の魔法に関することが記載されている。

 魔術書は魔法書より強力で、なおかつ常人が扱える程度の魔法に関することが記載されている。

 魔導書は魔法書や魔術書より圧倒的に強力で、なおかつ常人には扱え無い程度の魔術に関することが記載されているとされている。


 魔術書は主に飛行、結界、元素など。強力ではあるが、常人が扱える事の出来る魔法。

 僕は結界について記載されている魔術書をリストで購入。条件付き結界の習得が完了していない中、結界内にアンデッドを入れる方法を模索している。

 結界に穴を開ける方法は、結界を作る際に行うこと。結界を張った後から穴を開けることは不可能と魔術書には書かれていた。つまりはアンデッドを今結界内に入れる事は不可能。

 何も無理にアンデッドを結界に入れる必要は無い。だが、アンデッドを救える方法を発見し、救えるアンデッドがここら中に居る。この状況で、アンデッドを見捨てれば、アンデッドは苦しみ続けるばかり。アンデッドを今救えば、後々かなりの戦力にもなる。つまり、結界に穴を開けるのは、この村を救うことでもある。


「どうすれば…」


 考えて出てきたのは一つだけ。結界を壊す。

 結界に穴を開けるには、作成中だけ。つまり、今結界を壊し、すぐ穴が空いている結界を作る。これしか方法が無い。

 だが、この作戦には欠点もある。条件付き結界の破壊方法が分からない事だ。条件付き結界を破壊する方法は、魔術書にも書かれていない。そもそも、破壊する必要が無い。20日ほど経ったら自動的に消滅するからだ。

 作成済み結界に穴を開けるのは不可能。結界を破壊してから穴付き結界を張ることも不可能。

 詰みだ。考えても無駄。頭にはそんな言葉しか浮かんでこない。


 あちこちで、魔法発動の音や、骨が崩れる音が聞こえている中、頼まれてもいないことに必死になっている自分に腹が立っていた。


 必死に思考を回転させた。1つ思いついた。

 結界を二重に張るとどうなるのかと。試してみる価値はある。結界を同じ場所でに二重に張れば、片方の結界は破壊されるのでは無いか。

 でも今の僕には条件付き結界を張れない。

 僕はダメ元で結界に触れた。

 結界は少し白く光った。


 何かを感じた。自分の中に、何かが入った感覚がした。何かに似ていた。それは、魔法習得に似ていた。

 僕は確信した。結界魔法を習得したのだと。そして試した。魔法発動直前の感覚。行ける。僕はまた、確信した。

 僕は今村周辺に張っている結界に重ねて穴付き結界を張った。

 予想していた通り、結界は破れ、新たな結界が張れた。


「よし。入れ!アンデッド。」


 僕は2体のアンデッドに指示を出した。

 アンデッドは指示に従い、結界内の魔法使いを守っていた。


 次に僕は、縛り付き治癒魔法を倒れているアンデッドにかけた。アンデッドは次々に立ち上がり、結界内に入っていった。

 そして僕は、アンデッドと戦っている冒険者にこう叫んだ。


「魔法を倒したアンデッドは、私が治癒する!死体はそのままで倒しておいて!」


 すると、冒険者の1人が僕に言ってきた。


「倒したアンデッドを治してどうする。あんなの治したところで動く骸骨…屍を動かして何になるって言うの?」


 言ってきたのは双剣使い。忍者のような服装をしている女が、僕の前に瞬間移動して来た。

 僕は一瞬動揺したが、補足を始めた。


「…アンデッドは意思疎通が可能。訓練を重ねれば、それなりの戦力になる。少なくとも中級冒険者くらいには…」

「……本当に?」

「本当だ。今もアンデッドは私の指示に従っている。」

「ならいいだろう…」


 双剣使いは、また瞬間移動で戦場に戻った。


――


 グレイが魔法陣の上に手をかざし、詠唱を唱えていた。

 そこで大きな音がした。

 何かが割れる音。

 グレイは上を見た。結界の欠片が落ちながら消えていた。グレイは困惑しながらもそれを見ていた。結界の欠片が完全に消えた。結界は消えていなかった。

 グレイは何が起こったのか分からず、そのまま詠唱を続けた。


 少し経つと、魔物が目の前に現れた。

 結界は張れている。そんな中で、なぜ魔物がいるのか…またもや、グレイは困惑した。魔物の正体はアンデッドだった。

 だが、いくら経ってもアンデッドは襲ってこない。


 何が何だか分からないまま、グレイは魔法結界の詠唱を唱え続けた。


――


 僕は今倒れているアンデッドを全て助け、アンデッドと戦った。

 この前の魔物襲撃より、魔物の数が少ないからか、アンデッドの数は少しづつ減ってきている。


「あともう少しで夜が明ける。アンデッドは日光に当たると動きを止める。もう少しの辛抱だ!」


 そう、大剣使いが言うと、空が白く光った。

 青の混じった白だった。

 その光が現れたのと同時に、ある声が聞こえた。

 その声は透き通った声で2重に聞こえた。


「これで終わりだと思うな、人間よ……ん?エルフもいるな?」


 フード付きのローブを着た者が、空中で煙をまといながら立っていた。

 ローブは僕を見ながら「エルフもいる」と言った。ノルスの正体がますます分からなくなった。


「警告しておく。貴様ら人間共が行った悪行は、時を越えようと、当事者でなかろうと、償われることは無い。」


 みんながそのローブを見た。

 確か、魔王は元々人と魔物から嫌がらせを受けたとか……と言うか、どうしてこいつは「時を超えようと…」とか言ってたんだ?当事者がどうこうはまだ分かるが、時を超えるって……魔王が嫌がらせを受けたのなんか、1000年も前の話だろ……?


 僕は魔法で飛び、ローブに近づいた。


「貴様…なんのつもりだ?」

「なんのつもりもないだろ。こんだけ大勢の人が戦ってんだ。その状況を作った奴がここに居るのに、無視するわけないだろ。」


 僕はかなり強めの口調で言った。


「………あぁ。お前はあのエルフか。」

「?」

「なら話は早い。」

「待て待て、なんの話だ?」

「とぼけるな。お前は魔王に仕えていた者だろ?」

「何言ってんだ?」


 僕とローブはお互い話が噛み合っていないのか、混乱するばかりであった。


「……お前……」

「え?」


 ローブは僕を強く睨みつけた……気がした。下を向きながら力を込めて放った一言。その言葉がローブから放たれた途端、ローブの周りに強い風が吹いた。

 僕は飛ばされそうになりながらも、距離を取りながら腕で頭を守った。


 風が無くなり、僕は腕を落とし、前を向いた。

 ローブのフードは取れていた。そこにあったのは……髑髏ドクロ生きる屍(アンデッド)だったのだ。


「貴様!私を騙しましたね?」

「えっ?ちょっ、おい、待てよ…」

「もう遅い!貴様はここで排除する…今更助けを求めるな!」


 ローブは少し距離を取り、詠唱を唱えた。


「我を従え、絶対的力を持つ魔王よ。」


 ローブが詠唱を唱えるのと同時に、ローブの前には魔法陣が現れた。


「今こそ力を貸し、彼の背信者を膨大な魔力で押し潰せ!」


 ローブの前にある魔法陣が白く光り、それと同時に天空が光雲が消えた。


「一一ぁぁぁ……」

魔力マジック…」

「一あぁぁ…」

放出レイディエイト…」

「あああぁ!」


 魔法陣が白く、強く光った瞬間。上から何かが落ちてきた。

 骨に当たる音が響いた。大きなものがアンデッドの頭上に落ちたのだ。


「あぁぁぁぁぁ…!」


 その岩の上には、よく見ると人が乗っていた。かなり幼い、女の子が乗っていた。

 その岩はそのまま地面に落ち、アンデッドを粉々にした。

 よく見るとその岩は、魔力で出来ていた。


「……ん?う、おっとと。」


 僕も下に降りて、岩を浮かべ、アンデッドを助けた。ついでに治癒魔法もかけて。


「…えっ?てってて。」


 僕は岩を下に置き、アンデッドに"縛り"をつけた。

 戦っていたアンデッドは倒れ、アンデッドと戦っていた冒険者はその場に座り込んだ。


「……なぜ…」

「えっ?」

「…なぜ私を助けた…」

「だってお前、魔王に仕えてるんだろ。」

「…なら、私はあなたの的になる存在のはずだ。」

「……お前、今僕のこと"あなた"って呼んだだろ。なら、少しは感謝の気持ちがあるんだな。」

「……」


 僕は続けて話した。


「僕は魔物と戦うつもりもないし、むしろお前たちと仲良くしたいと思っているくらいだ。」

「え?」

「魔物と人間は全く違う種族。考え方や持っている力。その違いから、その者を拒絶する者もいる。それは魔物でも人間でも言える事だ。それでも、少なくとも僕は、君たちを拒絶なんてしない。」

「……」

「人間全員が、悪いやつとは限らない。そんなの魔物にも言えるだろ?」

「あっ…」

「魔物も人間も、お互いの違いを受け入れず、拒絶ばかりするものはいる。それでも、僕は魔物も人間も、助け合うことが必要だと思うんだ。」

「……!」


 僕は立ち上がり、倒れたアンデッドに一斉に縛り付け治癒魔法で治した。


「いくら悪い奴がいても、そいつを殺しては、お前も悪いやつなんだ。」


 僕はローブに手を伸ばした。


「創り直そうよ。この世界を。」


 僕はローブにそう言った。

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