10話 王国と襲撃②
少年は僕たちに助けを求めた。
「誰でもいいので!」
それでも誰も動かない。
「誰でも……」
「おい小僧。」
その少年の後ろに、デカい図体をした男が歩いてきた。背中に大剣を背負っている。
「ここに居る冒険者は物理攻撃に特化している。誰でもいい訳ないだろ。アンデッドだぞ。物理攻撃なんて聞くわけねぇんだ。」
男は少年に強くそう言った
「それでも頼む!戦ってくれ…」
「じゃぁここに魔法使い居るか?居ねぇだろ。」
この少年は魔法大国という理由で帝国から来たのだろう。恐らくヘル村。魔法大国ではあるが、この貿易都市の魔法使いは魔法学園か王都へ向かう。だからここに居ることはない。そう、僕以外は。
「はい!」
「あぁ?あんたみてぇなチビが魔法使い?笑わせるな。」
「笑いたくないのか。じゃぁ、バカにして笑うな。」
「何言ってんだお前…」
あれ?自分でも何言ってるか分からねぇ。
「私は魔法使い。ここで見せてやろうか?」
「見せてみろよ。どうせ出来もしねぇ癖に…うぉっ」
僕は風魔法で男を飛ばした。
「……お前今、詠唱無しで…」
「ん?こっちじゃ普通じゃないのか?なぁ、フランメ。」
「えっ?」
「なんで俺を呼ぶんだよ…」
そういえば、フランメはこっちじゃ名の知れた冒険者らしく、剣王なんて呼ばれてた時もあったとか。フランメが剣王ねぇー。
「すげぇな。名前を聞いただけで怯えたぞ。さっきまで子供相手にいい気になってたおっさんが。」
「おっさん?」
「行くぞフランメ。アンデッドがなんで来たのかは知らんが。ところで君、アンデッドが来たのってどこ?」
僕は子供にそう聞いた。
「ゲール帝国のヘル村…」
「……!」
予想通り。あって欲しくは無かったが、本当に危機的状況だ。
「とりあえず行こう。馬車はある。」
僕はそう言って、馬車のある検問に向かった。
その間、その場にいた全員が驚いた表情を見せていた。
―
「襲撃はいつ頃?」
馬車に乗っている少年にそう聞いた。
「昼頃…」
「私たちが出た後か…住民の避難は?」
「分からない。」
そんな話をしていると…
「前から魔物が!」
馬車の前にタイガーウルフが現れた。
タイガーウルフは打撃に弱く、打撃系であれば魔法でも物理でもダメージを与えることが出来る。魔法であれば『水弾』や『岩槌』、物理であれば剣や大盾など。
タイガーウルフはアンデッドに比べ倒しやすくはあるが攻撃力が高い。そのため、最低でも2人居ないと勝てることは無い。防御力を抜けば中級の中でダントツに強い魔物。
「タイガーウルフ?!」
「とりあえず私が…」
「いや、俺が行く。」
僕が馬車を出ようとした時、フランメが僕を止め、1人で行こうとした。
「腐っても冒険者。護衛任務を終わらせねぇと報酬が出ねぇんでな。」
フランメはそう言うと、馬車を前から飛び降りた。
「後は任せろ。お前は村を頼む。」
「………あぁ。絶対死ぬなよ。」
「死なねぇよ。」
フランメのことを信用し、僕と少年と男は、村に向かった。
―
村は結界を張ったばっか。そのため、魔物は簡単に入れない…はず。
アンデッド襲撃前、魔物の出現率が上がっていた。理由として考えられるのに、指揮官の存在があった。魔物は魔力に反応し近づくため、指揮官程の魔物にある魔力に反応する。
もし、指揮官が存在するのだとしたら、結界を破られる可能性は十分にある。
「村だ…!」
村に近づいた時。アンデッドの数を知った。
「なんだ…あれ…」
少年は絶望したような声で、そういった。
村の前に居たのは、見る限りでも、村にいっぱいに入る以上の量の魔物。10…30…60…どれくらいいるか、検討もつかないほどいる。
「とりあえず僕が行ってきます。」
「大丈夫か?」
男が僕に大丈夫かと確認した。僕はフランメの言葉を思い出した。
「大丈夫ですよ。僕も冒険者なんですから。」
僕は馬車を飛び降り、空中に飛んだ。
―
ヘル村の住民はギルド地下に戻っていた。
僕は少しづつ低空にしていき、ビフトの家の前ら辺に落ちた。
僕の足が地に着いたのと同時に、ビフトと冒険者が家から出てきた。
「ノルス?」
「村が襲撃にあったって…」
「そうか。じゃぁ、お前も作戦に参加してくれ。」
「分かった。」
ビフトは僕に作戦を教えてくれた。
作戦はこう。まず、グレイ以外の冒険者は、前に出てアンデッドの量を減らす。その隙に、グレイが村に魔物を入れない条件の結界を張る。ノルスは1晩明けるまで村に出てもらう。と言うようなもの。
「……ところでノルス。お前結界張れるか?」
「結界?」
結界魔法は今日買った魔術書に結界魔法の事が書かれていた。
僕も少し読んだが、条件付きの結界はまだ出来るようになっていない。状態効果上昇やバリアなどの結界魔法しか使えていない。
「状態効果上昇とかなら…」
「じゃぁ、戦っている冒険者にそれをやってやれ。なんの効果なら出来る?」
「魔力、体力、攻撃力とかなら。」
「それを全部同時に出来るか?」
「はい。」
「じゃぁ後でやってくれ。」
「今できますよ?」
「え?」
魔法は無詠唱で発動できる。後でやるより、今やった方がいいだろう。
「いや、いくら無詠唱だからって結界は流石に…」
グレイが僕にそういった。
「出来ますよ?」
「……でも遠いいし…」
「出来ない距離では無いですよ?」
「……分かったわ。今やりなさい。」
「分かりました。」
僕は直ぐに地面に手をかざし、結界を張った。
「本当にすぐ…」
「条件付き結界出来れば良かったんですけどね。」
僕はグレイを見てそう言った。
グレイが少し笑った気がした。
―
作戦会議終了後、僕達は直ぐに柵の方へ向かった。
柵の周りには沢山のアンデッドの死体があった。
僕はその死体を見て、何かが動いたのに気づいた。
カラカラっ
死体動き出した。それでも少ししか動かない。いや、動けないのだろう。魔法で攻撃しても、魂は天に帰るまで消えない。それでも地に留まるのは天に帰る縛りを誰かが付けていた。だから指揮官が操りやすいアンデッドをこの村に攻め入れていた。僕はそう考えていた。この考えが合っていれば、アンデッドは心まで操られている可能性がある。
それが合っているのかも分からない。けど、今僕がこの魂に縛りをかければ、魂は天に帰らず、アンデッドの心も元通りになり、人間と共同出来るかもしれない。
そんな考えが頭に浮かんだ。
僕はアンデッドに治癒魔法をかけた。縛り付きの。
僕の考えがあっていたのか、死体は起き上がり、ぼくに従うようになった。しかも話せる!
「何をすれば良いでしょうか。」
凄い丁寧に話しかけてきた。
「じゃぁ、村にいる魔法使いを守っていて。」
「分かりました。」
アンデッドは村に入ろうとした……が、結界にぶつかった。
「…ん?アンデッドが!アンデッドが村に入ろうとしてるぞ!」
1人の弓矢使いが結界にぶつかったアンデッドを指さしそういった。
「待って待って待って!こいつは僕の指示に従ってるだけだから!」
「じゃぁお前がこの襲撃の犯人か!」
「違う、そうじゃない!」
気付いたら、弓矢使いの後ろに何人かの冒険者が集まっていた。
「こ、こ、これが証拠です!」
僕はそう言って、横のアンデッドの死体を治癒し、冒険者に攻撃しないよう指示した。
「これがなんなんだ?」
「なんというか…これは憶測なんだけど…今みたいに、魔物の魂は、骨と魔力を集めて、新たな魔物となる。それがアンデッドだと思うんだ。」
「だからそれがなんなんだ?!」
みんなが、僕を敵を見るような目で見てきた。僕は少し泣きそうになった。
「今みたいにアンデッドを作るには、魂に縛りの魔法をつける。そうすると、僕の指示に従った。そんな感じで、アンデッドを操る犯人がいると思うんだ。」
「だったらお前が犯人じゃないのか?!」
「話はまだある。最近ここら辺で魔物の出現率が異常に上がった。魔物は普通、魔力が多いものに集まる習性がある。でもここら辺に魔力が多い洞窟も建物も作られていない。それなのに魔物が集まるのは、魔力量が異常な魔物が現れたに違いない!」
僕は冒険者達に強くそう言った。
冒険者達は納得したのか、僕に謝ってから戦いに行った。
しかしどうするか。魔物が結界内に入れない。この前僕が倒れてから、結界条件を下げたらしいけど…
僕はそのまま考えながら立っていた。




