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君と僕と傷跡  作者: くろいきつね
7/10

7話

お久しぶりです、7話です。

今日の学校生活は、一言で言うと『平穏』だった。

特に何か大きな事件があったわけでもなく、昨日の花山との寄り道の事を誰かに言われることもなかった。今日あったことを強いて言うならば、昼休みのサッカーで正吉が友達の顔面にボールをぶつけて危うく乱闘騒ぎになりかけたことぐらいか。まぁ皆そこまで本気で怒ってたわけじゃないけど。

いつものように僕は靴を履き替えて、学校を後にした。今日は金曜日なので向こう2日はここに来なくて済むと思うとせいせいする。僕は足取り軽く学校を後にした。

見慣れた街並みを、時折周りを見ながらなんとなく歩いていると、花山の家が見えた。彼女は何をしているんだろうか。少なくとも、今日は学校に来ていなかった。

少し歩いて僕の家に着いた。鍵を開けてドアノブに手をかけ、戸を開く。さっき頭をよぎった疑問は、もう消えていった。

靴を脱いで家に上がり、手洗いうがいをするとそのまま二階の僕の部屋へと入って、制服を着替えて回転椅子に座り、今僕とその周りで流行っている某プロ野球のソシャゲをやり始める。とりあえず今はいいガチャが来てるので、エナジーを貯めよう。

しばらくだらだらとゲームをしていると、ようやく10連ぶんのエナジーが貯まった。早速ガチャを引こう。

何も出ない、爆死した、もう二度とやってたまるか。

怒りに身を任せ回転椅子に座りながらくるくる回っていると、なんだか腹が減った。時間を見ると、6時過ぎだった。

昨日は何食べたんだっけ、カレーか、それじゃあ今日は何買おうかな。

のんきにそんなことを考えながら、僕はコンビニへと向かう。まだ空は青く、鮮やかに澄んでいた。





土曜日が過ぎて日曜日、2度寝から目覚めた僕はなんとなく動画を見ながらゲームをして過ごしていた。今日は特に用事もないので、このままゴロゴロしてよう。

気が付けば、いつの間にかお昼になっていた。ある程度見てなかった動画を消化できたので、僕は椅子から立ち上がって伸びをして、腰を回すとポキポキと音がして、なんだかすっきりした気持ちになる。

朝ご飯を食べてないから、少し腹が減ったのでリビングに降りてみると、お母さんがいた。僕が『何かない?』と尋ねるとお母さんは『パンならある』とスマホを弄りながら答えた。

パンだけじゃ少し物足りないし他に何かないかな、と冷蔵庫を開けるとハムとチーズがあった。これをパンにのっけて食べよう。

昼飯を食べ終わると、僕はまた部屋に戻って動画を見ながらゲームを始めると、時間はどんどん過ぎていって、いつの間にか午後の3時になっていた。

なんだか今日、何にもしてないな、いや、昨日もか。

なんか、こうやって休みの日をぼうっと過ごすの嫌だな、けど用事もないのに外出るのもなんかなぁ。どうしよう。

もういいや、外行こう。

スマホをポケットに入れ、玄関へ降りて靴を履き、そのまま外に出る。今日は曇りだったので、暑さも少しはましだった。じめじめしてることには変わりないけど。

特に理由もなく、その辺をうろついてみる。最初は通学路を少し歩いて、適当な曲がり角で曲がって、なんとなく大通りの方に出てみて、また曲がって通学路に戻った。

少しその辺をうろうろしていただけなのに、汗をかきそうだ、特にやることもないし、やっぱり帰ろう。そう思って少し早歩きで帰り道を歩く。

「あら、慎太郎くん?」

聞き覚えのある声が後ろからした。振り向いてみると、そこには花山のお母さんが立っていた。お母さんは濃い化粧をしてやたらとおしゃれっぽい服を着ていて、右手にはエコバッグをぶら下げていた。買い物にしては服装がどうにもお洒落なのを見るに、どこかから出かけて帰りしに買い物をしてきたというところだろうか。

「こんにちは」

「こんにちはぁ慎太郎くん、最近どう?」

「え?最近は...まぁまぁですかね?」

最近どう?と聞かれても、どうもないから答えに困る。

「あらそう?よかったぁ」

そんなどうでもいい話をしていたら、僕の中に一つ、疑問が生まれた。

「あの...そういえば...」

「花山は今...何してるんですか?」

僕がそれを言った瞬間、お母さんの顔が一瞬曇った。

「あの子は...部屋にいるわ、3日前から、ずっと」

「...そうですか」

やっぱり、と思った。お母さんは黙って、それ以上詳しい理由を話さなかった。

お母さんが僕に言ったのは、ただ一つだけ。

「よければ...あの子の話を聞いてくれない?私が聞くより、慎太郎君の方がいいと思うわ」

「...」

正直、あまり気は進まなかった。僕は花山がどうなっているかは知りたかったし、心配もしている。だけれど話を聞くのは、気が進まない。

話を聞くと言っても、どう聞けばいい?そもそも僕に何ができる?僕が変に関わったせいで、彼女をさらに傷つける事にはならないだろうか?

駄目だ、僕が行っても絶対どうにもならない。でもこのまま断るのもなんだか後ろめたい感じがする。いやでも、どうしよう。

「慎太郎君お願い...きっと、あの子も喜ぶわ」

「...いや...まぁ、はい」

結局僕は、はっきり断るわけでも了承するわけでもなく、ずるずるとお母さんと一緒に花山の家へと行った。

「お邪魔します」と言いながら玄関をくぐると、前も見た狐みたいな置物やビンの中に花と水が入ったものがあった。僕はそのまま靴を脱いで家に上がる。

花山の家は、玄関先以外も昔とほとんど変わっていなかった。玄関を少し進んだところにあるリビングでは山のお父さんが洗濯物を畳んでいて、僕と目があった。とりあえず軽くお辞儀をしておいた。花山のお父さんはお母さんと違って、あんまり喋らないから変なことを言われずに済む、気が楽だ。

「じゃあ慎太郎君、一華のこと...よろしく頼むわ」

リビングを出てすぐの二階へ上がる階段の前で、お母さんはそう言って僕にぺこりと頭を下げた。

僕は「ああ...はい」と、何とも煮え切らない返事をして、そのまま二階へ上がる。階段を上がってすぐの部屋、そこが確か花山の部屋だ。

部屋の位置も、昔と変わっていなかった。木製のドアも、全部あの時のままだ。

いざ部屋の目の前に立つと緊張して引き返したくなるし、やっぱり断っていれば、なんてことまで思ってしまう。

それでももう、今更後には引けないから、僕はそっと手を伸ばし、ドアをノックして、一言。

「あの...花山?」

それだけ言うので精一杯だった。あたりは水を打ったように静まり返っている。

突然、がちゃりとドアが開いた。突然のことにびっくりして一歩後ずさった時、部屋の中から人が出てきた。その人はきっとろくに手入れもできていないであろうぼさぼさで長い髪の毛を揺らし、夏場だというのに長袖で、よれよれのジャージを着ていた。

花山だ。心なしか三日前会った時よりも目の下の隈は濃く、やつれたような印象を受ける。

彼女は僕を見て一瞬、目を見開いて驚いたような表情を見せ、そしてそのまま下を向いて、細い手を伸ばし僕の服をつかんできた。

「...なんで」

寒空の下に放り出されていたように弱々しく、震えた声だった。その反面、僕の服を握る力は強い。

「なんで...来ちゃったのさ...」

僕はどうしたらいいかも、どういう声を掛けたらいいのかもわからずに、ただずっと突っ立って、花山に服を掴まれていた。

ふいに服にかかっていた力が緩んでいき、手が離された。掴まれた部分を見ると濃いしわが刻まれている。

「...入って」

花山はドアを開けたまま僕に部屋に入るよう促したので、それに従って部屋に入る。

部屋の床には本が何冊か散らばっていて、投げ出されたようにリュックが転がってたが、床に落ちてるものと言えばそれだけなので、特に散らかっているとは感じなかった。

彼女の部屋は、なんというか物が少なかった。軽く見渡しても、床に落ちてるもの以外で目に付くのはクローゼット、テーブルとその上のノートパソコン、本棚、壁際のベッドとその上に置かれてるニョロニョロのぬいぐるみぐらいだった。

昔はこの部屋は子供部屋みたいな感じでおもちゃとかが色々あったのだけど、まぁ変わりもするか。

ふと、後ろでがちゃんと音がしたので振り向くと、ドアが閉められていた。花山はまだ下を向いている。

二人きりだと思うと、やっぱり気まずい。座って良いのかもわからず立ったままじっとしてると、花山が「座って良いよ」と言ったので、床に正座した。花山もテーブルをはさんで僕の向かいに座る。

僕らは目を合わせることもなく、ただ二人してじっと黙っていた。

僕が何をしに来たかはわかっていたけれど、喋る気になれなかった。

ふと、彼女のベッドを見た。そこには、白いニョロニョロのぬいぐるみがあった。僕と花山が前行ったゲーセンで、彼女が3、4回ぐらいで取ったやつだ、枕にしたりしていたのだろうか、少しへたっていた。

「あのさ..そのぬいぐるみ、前とったやつ?」

僕は彼女に話しかける。とにかく、この雰囲気から逃げたかった。

「...うん」

彼女はうつむいたまま、そう答えた。

「あー..あの時すごかったもんね、すぐにゲットしてさ」

「いや..はは、偶然だよ」

「「...」」

また、沈黙が場を支配する。

「...あのさ、なんか花山の家来るの、久しぶりだよね」

「...君、昔はよく来てたもんね」

「特に用事もないのに、しょっちゅう行ってたりさ」

「...急に家に泊まりにきたりしてたよね」

「あったね、あとめっちゃ暑い日なのに一日中公園で遊んだりもしたよね」

「...夕方まで遊んで、お母さん達が探しに来てたよね」

「あー、あったね、それとあの時なんでか二人してお母さん達から隠れてたよね」

「そんなことしたね、悪い事してるみたいで、なんだかさ...楽しかったなぁ」

「あとさ、雨上がりの公園でさ、砂場に水が張ってたからプールみたいにして遊んでたこともあったよね」

「ははっ、二人して泥だらけになって、お母さんに怒られてたよね」

僕らは、思い出を語り合った。楽しかったことや怒られたことなど、いろいろ。

ふと、花山と目が合った。彼女の顔はさっきとは違って、昔みたいに笑っていた。

肩の力が抜けて、場の雰囲気が柔らかくなったような感じがする。なんだか、気が楽だ。それに、こうやって話すのは少し楽しい。

あれ、そういえばなんで僕は昔こんなに仲の良かった花山と疎遠になっていったんだっけ、何かあったような気がするけど、なんだったっけ。

はい、毎度の事なんですけど遅くなりました。申し訳ございません。

なんか話を追うごとに投稿頻度が長くなっていっているような気がするんですけど...すみません、次こそ早めに出します。

~裏設定コーナー~

花山と石場が昔よく遊んでた公園の名前は『八井児童公園』

花山母と花山父は、職場で出会って結婚した。

花山母の年齢は現在44歳、父は45歳。

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