▽.忠犬、射手に学ぶ
その日、ハンスはいつもより早く学院へと到着した。
(……少し早く来すぎたか)
師キース・ヴァン・トラスティーナとの鍛錬があるとはいえ、学院にはろくに人の気配がない。
教師の何人かはいるだろうし、寮生活の生徒がいるはずだが、あまりに早く着いてしまったのか校庭にも廊下にも人の姿はなかった。
その静寂の中をハンスは軽い足取りで歩いていく。
休日をシャルルと過ごした事はもちろん、予想外のプレゼントをたくさん貰った事で、ハンスは過去類を見ない程に上機嫌になっているのだ。
緩みそうになる頬を抑え、キースと約束をしている修練場を目指す。
(クッキーもケーキも美味かったな)
シャルルが手ずから作ってくれたというお菓子を思い出す。
箱の中に詰め込まれたカップケーキはどれも可愛らしく、クッキー同様スミレたちのようだった。
少し硬めの生地にかけられた甘い砂糖のコーティングも色とりどりで、丸まった猫のようなフォルムも含め見ているだけでも楽しいものがある。
女子供がお菓子屋の前で目を輝かせる理由が分からなかったが、なるほどこういう事かと、ハンスは妙に納得した気持ちになったのだった。
だからといってケーキ屋に並びたいわけではないが、シャルルの用意したケーキは思わず手を彷徨わせてしまうくらいに魅力的だった。
色によって味も違く、ハンスが最初に手に取ったのはブルーベリーのものだ。
ほんのりと甘酸っぱい味が口の中に広がり、心地よい酸味が手伝ってあっさりと食べ切ってしまった。
(甘いものもたまには悪くないな)
家族に何個かとられてしまったが、母エリンが気を利かせ、半分近くはハンスの手元に残っている。
本当は食べるのが勿体なくて保存しておきたいが、腐らせては元も子もない。
毎日一つずつ味わっていこうと、ハンスは残りのケーキを貯蔵室にしまい込んだのだった。
クッキーはというと、プレーンやココアといった数のあるものは口にしたが、スミレたちを模した特別仕様のものにはまだ手を付けられていない。
(シャルルは菓子作りにもセンスがあるんだな)
砂糖のコーティングによって模様を描いているらしいが、そんなものは初めて聞いた。
貴族には相手にされてないとはいえ、ハンスとて商会の人間である。
流行や新商品には一応程度には目ざといつもりではあったが、シャルルの作ったクッキーはまったくの未知のものだった。
(あれを売り出したら流行るだろうな。シャルルの発想には驚かされるばかりだ)
だが今はまだ自分だけのものにしておきたい。
家族も見ていないスミレたちのクッキーを胸の中にしまいこみ、ハンスは辿り着いた修練場のドアへと手を伸ばした。
(…………開いている)
ゆっくりとノブを回し、鍵がかかっていない事を確認する。
かなり早く来たと思ったが、キースはさらに早い時間から準備をしているようだ。
ハンスは申し訳ない気持ちを覚えながらドアを開けた。
「おはようございます、教授」
「今日は随分と早かったな。良い事があったようだが、そんな間抜けな面をしていると、変な連中に絡まれるぞ」
「……そんなに間抜けですか?」
「そうだな。恋人が出来たとぬか喜びしたまま戦に臨む馬鹿くらい間抜けな顔だ」
まだ恋人じゃないと言いかけ、ハンスは口を噤む。
(まだも何も俺の一方的な想いじゃないか)
そんな未来があれば良いと願うが、所詮はただの願望だ。
ハンスは無言でクロークを脱ぎ、腹筋に励むキースの横で、雑念を払うようにストレッチを始めた。
「いつも俺が来るより早く始めてるんですか?」
「そういう事になるな。お前が稽古をつけろと言ってくるまで僕もサボっていたからな。少しでも以前の感覚を取り戻そうと躍起になっているわけだ」
「なら次からはもっと早く来ます」
「……影の努力を何だと思っているのやら。まあいい。それが終わったら加護のコントロール練習をしておけ。僕には僕のノルマがあるからな」
掠れた声を吐き出しながらもキースは鍛錬の手を止めない。
体を伸ばすハンスを横目に、腹筋を終えたキースは右手首を支えに左手を床に着いた。
「っ…ぐ、う………」
「教授…!」
「僕の事は良いから、お前もさっさと準備をしろ」
駆け寄ろうとするハンスを制し、キースは左腕に体重を預ける。
見た目には問題ないように見えるが、残されたキースの左腕には僅かにとはいえ麻痺が残ったままだ。
右腕は言わずもがな欠損と痺れによってマトモに使う事は出来ない。
その状態にも関わらず、キースは腕立て伏せを始めるのだった。
ハンスは気もそぞろにストレッチを続け、体をほぐし終えるやいなや言われた通りに加護の訓練へと取り掛かる。
しかし、じんわりと腕立て伏せの回数を重ねるキースが視界の隅に映り、どうにも集中が続かない。
「この程度で気を散らしていては死ぬだけだぞ」
「………分かってはいるつもりです」
「分かってないから言ってるんだ。決断を下す事と非情である事はまったくの別物だ。お前に非情さを求めはしないが、いざという時に決断出来るよう心こそ鍛えておけ」
汗を垂らしながらもキースは鋭く言い放つ。
棘のある物言いだが彼なりの気遣いだ。
ハンスは頭を振り、すっかり作り慣れた氷の斧をいくつも生み出していった。
刃の大きさ、形状、柄の長さ、装飾――そのどれもに寸分の狂いも生じないように絶えず斧を作り出す。
気の散っていた最初の方は歪みが酷かったが、後半にかけて精度を取り戻していったようだ。
明らかに形の悪いものは砕いているものの、その数はこの1時間だけで数十本にも及んでいる。
ダラダラと大量の汗が全身を伝うのも構わず、ハンスは納得がいくまで氷の生成を続けた。
「そのくらいにしておけ」
加護のコントロールに没入するハンスへとキースがタオルを差し出す。
最後の一本を仕上げたハンスはタオルを受け取ると乱暴に汗を拭った。
早く作ろうとすれば形は乱れ、狂いなく作ろうとすれば時間が掛かる。
ある種、典型的な壁にぶち当たり、ハンスは肺一杯に吸い込んだ息をゆっくりと吐き出した。
「焦る事はない。僕から見てもお前にはセンスがある。少しばかり我慢が効かないのが欠点だが、そこさえクリアすれば騎士として大成できるレベルにはなるだろう」
「俺が目指しているのは騎士ではありません」
「騎士と言っても様々だ。僕のように王国に仕える者もいれば、一個人に忠誠を誓う者もいる。お前にとってもけして縁のない話ではないと思ったんだがな」
「それは………」
皮肉めいて笑うキースにハンスは唇をぎゅっと結んだ。
個人に忠誠を誓うという一点でのみ語れば、ハンスが目指す姿はまさしくそれだろう。
(……そんなに顔に出ているだろうか)
とはいえ良い気分はしない。
開口一番の間抜け面と言い、あまりに見透かされているようでハンスは汗を拭うのと同時に額をこねくり回す。
不愛想やら怖いやらばかり言われてきたハンスだけに、それ以外の感想を提示されるのは妙な気分だった。
「――それで、どんな良い事があったんだ?」
呼吸を整えるハンスの向かいにキースが腰を下ろす。
機嫌の良いハンスに少なからず興味があったのか、固い表情のままハンスの顔を覗き込んだ。
「三日前が俺の誕生日だったんですが――」
「今初めて聞いたんだが?」
「聞かれた事がなかったので。それで昨日、俺の家にシャルルが遊びに来てくれたんです。当日も祝ってはくれたんですが、改めてケーキと年度末のパーティーで着る服を贈ってくれました」
「なるほど。どうりで浮かれているわけだ。だがそうか、パーティー……もうそんな時期なんだな」
キースが遠い目で天井を仰ぐ。
浮世離れしたキースにとっては、パーティーなんてものは参加も避けたい行事なのだろう。
「教授は踊られないんですか?」
「僕と踊ろうなんて女はいない。ダンスなんてろくに経験もないし、今年も壁と同化するだけだ」
やるせなくため息を吐くキースだが、教師ともなれば不参加というわけにはいかない。
それはハンスもさして変わらなかったが、気持ちにはいくらかの変化があった。
シャルルから贈られた服を思い出すだけで、苦手意識のある人込みも何て事のないものに思えてきたのである。
当日にはシャルルもいるのだし嫌な事ばかりではないはずだ。
いざとなれば会場を抜け出せば良いだろう。
(……壁でも見て回るか)
ついでに壁に張り付くキースを探そうと、ハンスはパーティーでの目的を明確にしていった。
誰かと踊る気は毛ほどにもなく、シャルルの警護にのみ力を注ぐつもりだ。
(俺に広い世界を見せようとしているみたいだが、俺はシャルルさえいれば良い)
歪んだ感情だと分かっていても、それが全てだ。
決意を固めるように、ハンスは胸に下げた首飾りを握りしめた。
「……少し手合わせをしておくか」
談笑も束の間、キースが折りたたんでいた膝を伸ばし立ち上がる。
引いてきた汗の最後の一滴を拭きとり、ハンスも身構えた。
「お前に本気になられても困るからな。あまり熱を上げ過ぎるなよ?」
「教授こそ少しは加減をしてください」
「本気で相手をしてもらえるんだから光栄に思った方が良いぞ」
言葉と同時に鋭い蹴りが飛ぶ。
ハンスはその一撃を両手でガッシリと掴むと、そのままキースの体を横なぎに回転させた。
右側へと転がったキースは難なく受け身をとり、床すれすれまで姿勢を低くする。
軟体な動きはそれだけで相手を翻弄するのに適し、ハンスは僅かに踏み出すのを躊躇った。
そうして地味にも見える熾烈な駆け引きを繰り返し、ハンスの拳が薄い腹を突き上げる。
しかし吹き飛ばされたキースは顔色一つ変えずに爪先から床へと降り立つのだった。
「――教授は蛇みたいですよね」
突き出した拳に手応えはない。
衝撃を全て逃がされてしまった事だけが伝わり、ハンスは呆れたようにキースを見つめた。
「まともに当たれば死にかねないからな」
「ちゃんと加減はしてます」
「僕はもともと後方支援だ。最前列を担うお前の頑丈さで測られても困る」
マントを翻し、キースは壁へともたれかかった。
今日の手合わせはここまでという合図だ。
「力にだけ頼りすぎるな。お前はもっと視野を広げた方が良い」
「ご指摘ありがとうございます、教授」
軽く頭を下げるとハンスは持ってきていた替えの服へと袖を通す。
着替えをしながらも、今にも眠りこけてしまいそうなキースを振り返った。
「教授はナサニエル・エインワーズという男を知っていますか?」
年齢はたしか18歳だったか。
自分たちのように学院に通っていたのではないかと思い至り、着替えの片手間に尋ねてみた。
ハンスたちよりいくらか年上の男ではあるが、キースはこれでも勤続8年目だ。
ナサニエルについても何か知っているのではないだろうか。
「聞き覚えがあるような……」
「ミオン伯爵家に仕えている、白と黒が半々の髪と目をした長身の男です」
頭を捻らせるキースに昨日も見たばかりの特徴的な容姿を告げる。
そこまで伝えてようやく回路が繋がったらしい。
「言われてみればそんな奴もいたな。あまり印象的な生徒ではなかったが……」
だがキースはナサニエルの事を印象にないと言い放った。
あの特徴的な姿のどこをとって記憶に残らないのかが甚だ疑問なものだ。
気にかかる事があるにはあるが、客観的に見てナサニエルという男を忘れるのは難しい事だろう。
ハンスは思考を巡らせながら、なおも頭を捻らせるキースの言葉を待つ。
「もう3年も前か。何でもソツなくこなす男だったとは思うが、特筆して悪い点も良い点もなかったはずだ。教室では中心にいるような――いや、誰とも話さない寡黙な男だったか?教師に好かれる好青年だったような覚えもあるし、兎にも角にも話を聞かない問題児だったような記憶も………どういう事だ?まるで定まった印象が思い出せない」
目を見張るキースに、ハンスは腑に落ちるものを感じとった。
あの男はたしかにいなかったはずなのだ。
それがシャルルの傍にいるという事は、どちらかに齟齬があるという事だ。
(やはりあの男には何かがある)
シャルルの最も身近な場所にいる相手を信用出来ないのは、ハンスにとってかなりの痛手だ。
ランド・スチュワートにして祖父であるクリスティアンは信頼に足るが、何度考えてもナサニエルを信じ切る事は出来そうになかった。
「実は俺もあの男の事がよく分からないんです。手合わせをした感じ、只者じゃないのはたしかですが……」
「手合わせをした事があるのか?」
「はい。バロッドの件でシャルルの家に行った際に一度だけ」
「ふむ……何でもいい、話してみろ」
キースに促され、ハンスな思い出せる限りあの日の戦いを口に出した。
癪に障るがナサニエルという男はかなりの手練れだ。
加護を抜きにした単純な戦闘能力でも、変身したサマルなんかよりもよほど強いだろう。
事のあらましを告げるとキースは眉間に皺を寄せた。
「念のため聞くが、本当に凍らなかったのか?」
「俺の作った氷に触れても凍らなかったので、発熱か何か、凍りにくい体質に変化する加護の持ち主だと推測しました。そこに関しては教授の方が詳しいと思うのですが……」
「…………おかしい」
キースがぼそりと呟く。
「地の加護だった事は覚えている。だが僕の記憶ではたしか……」
三年も前の事となると思い出すのも難しいのだろう。
他人に興味のないキースなら輪にかけてだろうが、毎年50人から100人程の生徒を見送っては迎えてを繰り返す教師には猶更の事かもしれない。
それでもキースは懸命に記憶を掘り起こした。
「そうだ――相手のオーラが見える――そんな加護だったはずだ」
「え?」
「あまり自信はないが、肉体を変質させる加護ならもっと記憶に残っているはずだ。特筆する印象がないと言ったように、加護も特別変わったものじゃなかったと思う」
その言葉にハンスは耳を疑った。
自身が感じた能力との差異はもちろん、キースの告げた加護には別の心当たりがあったからだ。
「お言葉ですが、教授。相手のオーラが見えるのはシルビア様――シャルルの姉君の力です」
この記憶に間違いはない。
対象の周囲に流れるオーラを通し、この後に起こりうるだろう可能性を示唆するのがシルビアの加護だった。
未来予知にも近しいその能力によって、シルビアは魔女と呼ばれながらも社交界でも引っ張りだこの存在となっている。
「似たような加護はどこにでもあるが、お前の話を考えるとそれが本質じゃないんだろうな。僕の目さえ欺くとなれば相当な策士という事だ。簡単に答えが出るようなものじゃないだろう。どのみちエインワーズは嘘の申告をしていたというわけだが、もしかしたら…………」
視線を落としキースは左手で目元に触れた。
頬をなぞり、重々しく口を開く。
「お前には一つ先の話をするとしよう」
ナサニエルの話題を打ち切ったかと思えば、キースは視線を戻す。
真剣な眼差しにハンスは息を呑んだ。
「お前にだから伝えるが、加護は昇華させる事が出来る」
「昇華、ですか?」
「僕の加護も元来はただ視力を上げるだけのものだ。しかも最初は1か10かでしか調整できなかった」
通常の視界と加護を使った視界の落差に苦しんだとキースは過去を懐かしむように嘆息した。
たしかに双眼鏡を使っても、かえって見たいものを見失う事がある。
それに似た感じなのだろうと頷き、ハンスはキースの言葉に耳を傾けた。
「僕の場合、まずは強化の幅を変えられるように特訓した。ここに関しては次年度から授業でやっていく事になるが、加護を使う上での応用といったところだろう。お前にやらせている特訓もその取っ掛かりのようなものだ。そして今から話すのはその先だ」
ハンスはごくりと唾を呑み込む。
着替えの手を止め、じっとキースの目を見つめた。
「僕は視力の強化とは別に、この目一つで照準を合わせる事が可能になった。自分と相手の動きを計測し、確実に当てる場所を割り出す能力だ。ただの照準器とはわけが違う。端的に言えば、視力の強化に必中を付け足したようなものだろう――団長には『絶対照準の魔眼』なんて呼ばれたりもしたな」
射手としてこれほど優れた力はないだろう。
それこそが魔眼の射手と呼ばれる所以だったのだと、ハンスは熱心にキースの話に聞き入った。
その熱意に蓋を落とすように、キースは顔を曇らせる。
「だがこれは諸刃の剣だ」
苦悶ともとれるキースの表情にハンスはただ黙って頷いた。
しっかりと首肯したのを見届け、キースは躊躇いがちに言葉を溢していく。
「まず神力のもたらす負荷については理解しているな?」
「当然です。神力を取り込む、あるいは加護として放出する事で生命力が削られます。その際に強い疲労感を覚えますが、これらは寝食によって回復する事が出来ます」
「その通りだ。最悪死ぬという点が抜けているが上出来だろう。だが加護を昇華させてしまった場合は違う。通常、神力なしに加護を使う事は出来ない。対して昇華した加護は生命力そのものを食らい、神力なしに加護を発生させる事が出来てしまうんだ。これが意味する事が分かるか?」
神力がもたらす負荷については基本中の基本だ。
だがそこに神力を挟まず、生命力そのものを直に消耗してしまうとすれば。
「肉体への重度の負荷、ですね?」
「そう。強大な力を扱える代わりに、肉体そのものが代償になる。当然その力に頼った僕は視力のほとんどを失ってしまった。僕は目にまつわる加護だったから、そのままここに負荷が働いたんだろう。失明こそ免れたが、目も腕も失った僕が弓をとる事は二度とないという事だ」
淡々と、けれど一言一言が重苦しい言葉を連ね、キースは指二本だけが残された右腕を持ち上げる。
その手を左手で包み、光の宿らない瞳を伏せた。
「本当は教えたくはなかったが、師として伝えておくべき事だろうと判断した。とはいえ、これは使うべき力でも、まして頼るような力でもない。だがいつか必要になる日がくるかもしれない。だから僕はあえてお前にその道を示そう。身になるかどうかはお前次第だが、まったくの無駄になるという事はないはずだ」
「…………ご教授お願いします」
「もう少しくらい躊躇って欲しいところなんだがな。まあ、それだけお前も本気という事か。楽な道じゃないだろうが、提示した以上、最後まで付き合ってやる」
キースが苦笑する。
やるせなさすら感じさせるその微笑を見据え、ハンスは拳を固く握りしめた。
(たとえ地獄であろうと構わない。俺はお前を――)
その拳を解く前に朝一番の鐘が鳴り響いた。
次に鳴るのは始業の合図で、のんびりしていられないとハンスは手早く荷物をまとめた。
普段より早く始めたとはいえ、朝の時間はそう余裕のあるものではない。
身支度を整えた二人は、今後の方針を決めたところでこの日の鍛練を終了する。
「今日の授業準備は来なくて良い。ちゃんと体を休めておけ」
「ご指導ありがとうございました」
頭を下げ、教室ではなく校門へ向かう。
ハンスの頭の中は、すでにシャルルの事でいっぱいになっていた。




