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魔王国の宰相 (旧)  作者: 佐伯アルト
Ⅲ 帝魔戦争
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8 戦後譚 ②/4

 「んっ……ここは?」

「やあ、ようやくのお目覚めだね。おはよう。」


 テミスが目を開けると、そこには祖国を荒らした憎き、被害を聞いた限りそれほどでもなくなった、あの男が脚を組んで座っていた。そして、自分が魔術によって大の字に拘束されていることに気づく。


「なっ、なんだこれは⁉︎」


 拘束を解こうともがくが、しっかり固定されていて動けない。


「逃げられないよ。無駄な抵抗はやめたまえ」


 彼、エイジが椅子から立ち、歩み寄って来る。そしてテミスもやや落ち着きを取り戻し、状況を把握しようとする。


「ここは何処だ……今は、何時だ……」

「ここは魔王城地下一階の牢で、大体夜の十時ごろ。時差を考慮すると、寝ていたのは六時間強かな?」


 まだ、たいして時間は経っていない。そして、攫われ眠らされる直後のことまで思い出す。


 場所と時間とシチュエーションも理解した。次は、自分の体の状態を確認する。ヴィクトリアやレガリアなどの武装も、全て取り上げられているようだ。今の装備は、鎧の下にインナー代わりに着ていたワンピースのみ。彼の言葉通り、抵抗は無駄らしい。


 とはいえ、体は異様に楽だった。戦闘のダメージや鎧の反動は無く、そして六時間も吊るされた割には苦痛がない。となると………と、ここで甘えた結論に至ってしまう。そんなはずはなかろうと思い、ともかく反抗する。


「私をどうするつもりだ!」

「そうだねぇ、もう予想はついてるんじゃないかな?」


 魔王国の宰相は、外套とグローブを取り、姫の真正面に立つ。


「キミ、魔王国に屈しないか?」

「ッ! ふざけるな! 誰が、我が祖国を荒らした貴様らなどに!」


 思い出した。攫った直後、そんなことを言っていた。当然、拒絶する。


「そうか、やっぱりそうなるか……。拷問は嫌なんだけどね、仕方ないか」


 そう言うと、彼は慈しむように、美姫の頬に手を添える。その感触は、不快ではない。だが、この人を受け入れるわけにもいかない。テミスは複雑な感情を抱く。


「貴女は芯の強い女性だ。そして、オレは知っている。意思の堅い人に、ただの苦痛を与えたところで、決して屈しないと。先程の戦いでもそうだった、君は折れなかった。だから、ボクが与えるのは苦痛じゃあない。辱めだよ」


「なんだと⁉︎ くっ……敵に辱められるくらいなら…いっそ殺せ‼︎」


 そう皇女が吐き捨てると、彼は一瞬驚いた表情をし、そしてニヤリと笑った。


「悪いが、そうはできない。なにせキミは、美しいからね。殺すのは勿体ない」


「なら、舌を噛み切るまでだ!」

「おっと危ない!」


 すると彼は何処からか布を取り出し、彼女に噛ませた。


「んー! んー!」

「そういうことをするのも、おおよそ想定済みだ。まあ、間に合わなかったとしても、魔術を掛けて回復させたんだけど。さて、いくらかしたら外してあげよう。だが、自害しようだなんて思うなよ。苦痛が増すだけだからな。自害など、相当の覚悟がいるはずだからね」


 それでも視線は、目前の敵を睨めつけたままだ。


「ふむ、やはり投降の意思はなさそうだね。では始めるが、その前に二つほど確認だ。」


 猿轡を外す。姫騎士は舌を噛もうとするが、やはり彼の言う通り無駄なことだろうと諦め、質問に答えることにした。


「やはり貴様は、このようなことを平気でするのか。見所があると思ったが、失望したぞ」


「おおっと、それはすまないことをしたね。では、まず一つ。キミに恋人はいるかな?」


 顎に手を当てながら訊く彼の質問の内容に、テミスは戸惑う。


「……フン、いませんね。もう少し後なら、許婚でもいたでしょうけど」


 何故そんなことを訊くのか、まさか……と思うが、即棄却。目の前にいるのは、血も涙もない悪漢に違いないのだから。


「ほう、なら安心してできるな。ボクは人の女に手は出さない主義なんだ。では二つ目。君は処女か?」


 テミスの思考が止まる。ーー今彼は、なんと言った? 人の女に……いや、ともかく次の質問に……て、なんだこの質問⁉︎ーー


「さあ、どうでしょうね」


「答える気はない……と。デリカシーの無い発言であることは認めるが、嘘でも処女と言えばいいものを。そしたら、手加減してあげたのに……」


 そう言うと後ろに回り込み、軽く抱きしめ、耳元で囁く。彼女の体は、軽く震えた。遂に、始まるのだと身構える。


「本当に、屈しないんだね? 今ならまだ間に合うよ? 大人しくしてくれれば、こんなことしなくて済むんだ」


「ふん、好きにするがいい。私は誇り高き帝国の姫騎士! 貴様ら魔王国になど、決して屈しない‼︎」


「そう、じゃあ、始めるよ。」



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