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魔王国の宰相 (旧)  作者: 佐伯アルト
Ⅱ 魔王国の改革
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幕間 ダッキの魔王城生活 ②/2

 今朝の件で確信したが、このままダッキとの関係を有耶無耶にしておくと、彼女のトラブルメーカー気質からいずれ問題が起こることは間違いない。


「じゃあそろそろ、オマエと俺はどんな関係か定めようじゃないか。オマエにとってのオレ、オレにとってのオマエなんだ?」

「わたくしにとってアナタは、ご主人様、つまり飼い主ですわ!」


「飼い主だと? て事はお前はオレにとってペットとってことかよ…。なら、それで良い。ペットになるということは俺に完全服従するということだ。少しくらい手を噛むことなら許してやるが、裏切ったら容赦無く始末するからな。」

「だいじょぶですよ。まさか、裏切ったりなんてしません! 昔のことで懲りましたから」


「ホントかぁ?」

「信じてくださいよぉ〜」

「はぁ、いいだろう。では早速、ついてこい。」



 不思議がるダッキを引っ張って行った先は、統括部の執務室だ。


「おい、ダッキよ。このオレのペットになるということは、お前もオレの上司である魔王様の部下であり、魔王国の一員だ。つまり勤労の義務がある。という訳で、シルヴァ、こいつの教育を頼んだ。」

「はいぃ⁉︎」


 まさか自分が仕事をする羽目になるとは全く思ってなかったのだろう。ダッキは驚愕のあまり目を見開き、尻尾がピンッ! と、ボフッ! となった。


「え、わたくしも働かなくてはいけないのですか⁉︎」

「ああ、当然だ。それに昨日言ったじゃないか、オレの秘書になるって」


「ペットは仕事をしないと思いますけどぉ」

「うっ……。いや、オレはお前から知的な感じがする。信頼しているのさ。」


「えっ、そうですかぁ? エヘヘ〜。まあ、そこまで頼られちゃあ仕方ないですねぇ。やりましょう!」


 思ったが、こいつ案外チョロいのでは?


「という訳で、頼んだぞ、シルヴァ」

「えぇ⁉︎ わたしが、ですか…?」

「頼む! お前だけが頼りなんだ!」

「そ、そこまで言うのでしたら……全く仕方ない方ですね」


 おや、チョロいのはダッキだけではないようだ。



 エイジがシルヴァにダッキを押し付けた後、彼が向かった先は寝室だ。宰相に就任してからというもの、施設設備制度の改革に統括部としての仕事、魔族化やそれに伴う鍛錬、出張して交渉したり幻獣と激闘を繰り広げたりとかなりハードだったため心身ともに疲れている。少しでも休むために、至福の二度寝タイムなのである!


 二度寝にはフワフワモフモフがいないが仕方ない。愛しのベッドに潜ろうと毛布をめくると、そこには先客がいた。


「ハァイ、エイジクン、久しぶり〜」

「モルガン⁉︎」


 そこにはスケスケで煽情的なネグリジェを纏ったサキュバス幹部が居たのだった。


「ここで何を⁉︎」

「ウフフ、ワタシがここにいるってことはぁ、ヤルことは決まってるでしょう? つ、ま、りぃ、一緒に寝ましょ?」


 モルガンが言ったことには含蓄がある。言いたい事は文字通り一緒に寝るということではなさそうだ。


「ご無沙汰で溜まってるでしょ? さあ、キて。」


 据え膳食わぬはなんとやら。深く考えず身を任せることにした。



 気づいた頃にはもう日が傾き始めようとしていた。二度寝をするつもりが耽ってしまい、休むどころかさらに疲れることになってしまった。だがスッキリしたのも事実。今度こそ寝ようと寝巻きに着替え、目の前の女を抱きしめた。



「ふぅー、やっと終わりましたわぁ!」


 やっと封印から解放されたばかりなのに、今度は机に拘束されるとは。新しく学ぶことが多く、慣れないことでどっと疲れてしまった。


「お疲れ様でした。やはりあの方が見込んだだけのことはありますね、思っていたより飲み込みが早いです」


 そんなダッキをシルヴァが労り、称賛する。が、ダッキの関心は別の所にある。


「ありがとうございますシルヴァさん。ところで、あの人は何処ですの?」


 それを聞くと、シルヴァの眉尻がピクリと動く。


「……さあ、知りません。護衛であるはずの私すら置いていったまま、よくいろんな所に行きますからね」


 シルヴァの言葉はエイジへの不満たらたらな様子であるが、ダッキは敏感にもシルヴァが自分を警戒しているのがわかった。と同時に内心ほくそ笑む。


「あらあら、貴女はあの人が大好きなのですね」

「ッ……いえ、素晴らしく尊敬できる方ではありますが、そういった感情はありません。…ああ、エイジ様のことですが魔王様なら彼の行き先を知っているはずです。魔王様なら、基本的に玉座の間に御座しますよ」


 逃げたな、と思うダッキであったが、これ以上追求すると自分に対するシルヴァの警戒度を上げ過ぎてしまうであろうからとやめることにした。ただ最後に一言


「貴女、隠しているようですが、わたくしと同類の匂いがしますわねぇ」


 結局シルヴァのダッキに対する警戒度は爆上がりしたのであった。



「ごっしゅじんさま〜! あなたのダッキですよ〜!」


 シルヴァの提案に乗ってベリアルのもとを訪れ、エイジは城から出ておらず自室にいるであるということから、秘書二人は彼の寝室を訪れたのであるが、


「……ううん? ……あっ、しまった! 鍵かけるの忘れてた!」

「ご主人さま………えっ?」


「………ああ、見られた。これは厄介なことになったな……」


 彼の傍に半裸でいかがわしい格好をしている女がいるのだから、これはもう修羅場である。


「エ、エイジ様?」

「なに⁉︎ シルヴァ⁉︎ ああもう、厄介さ倍増だ……。」


「これは、どういうことですか? 説明してください!」

「ふう……面倒なことになったな……どうすれば」


 彼自身半裸である。言い逃れはできそうにないが。


「ワタシたちはァ、セフレってトコロねェ。関係を持ってて、愛情もあるけど、恋人ほどではないって感じよォ」

「なっ、おいモルガン⁉︎」


 モルガンがエイジにもたれかかりながら、そんなことを言う。そして割と的を射ている。


 そしてこんなことを聞いて二人が黙っているはずもない。ダッキはいろんな感情が混じりあったかのような赤面になり、シルヴァはというと顔が思いっきり引き攣っている。完全にやらかした、失望されたのでは、とエイジは絶望しかける。が、


「わたくしにはそんなことしてくれませんでしたのにぃ!」


 突如ダッキが素っ頓狂なこと(少なくともその場にいた者たちにはそう受け取れる)を言い出す。しばらく呆気にとられたエイジだったが、


「バカ言うな。ペットに欲情する飼い主などいるものか‼︎」


 いち早く頭を整理し、この場を濁すチャンスだと思ってダッキイジリを始める。


「わたくしには欲情してくださらないのですか⁉︎ ほらっ、ほらぁ!」


 肩や胸元をはだけさせて、蠱惑的な仕草をする。が、しかし


「悪いな、行為後で今は賢者タイムだ。それに、インキュバスの特性で自分の性欲は完璧にコントロールできてしまう。しようと思わない限り、欲情しないんだ」


 さらに必死過ぎて、本来持つ色気を出し切れていない。


「そ、そんなぁ……」


 項垂れるダッキであった。__まあ、そこまでしたいと言うのなら吝かではない。だが、あえて焦らすのも手だ。手を出すのはしばらく後にしよう。それまで焦らしたりからかったりするのも面白そうだ__などと考えるが、その場はまだ収まっていなかった。


 エイジはシルヴァの方を恐る恐るチラリと見る。見るからに剣呑なオーラ、正直こちらの方が問題である。その様子を見たシルヴァは、


「はぁ〜………多少は仕方ないかと思いますが、そのような淫らな行為はお控えください。宰相としての名声に傷がつく恐れがありますので」


 長いため息をついたあと、少々呆れたように注意する。


「は、はーい…」


 エイジは大人しく首肯し、反省した風にする。多少好感度は下がったかもしれないが、失望されなかったようで安心。していると、


「なにより、そのことでしたら、私がお相手いたしますから……」


 え、そっち⁉︎ となるエイジ。でも一応今更ではあるが硬派なところを見せておかねば、となり、


「いや、オレは望まない相手とはしたくなくてね。相手からしたいと言われるまで手は出さないさ」

「……そうですか」


 どことなく残念そうなシルヴァ。エイジも気づいていたが、残念ながら二人とも色々と不器用なので進展なしなのであった。


「あら、終わった? 私帰ってもいいかしら?」


 さっきまで面白そうに眺めていたモルガンが、伸びをしてベッドから降りる。


「え、ああ…」


 皆に構わず部屋から出て行こうとするモルガンであったが、秘書二人の横をすれ違う時、挑発的な笑みを浮かべ、その瞬間三人の間に火花が散った。ように見えた。

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