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魔王国の宰相 (旧)  作者: 佐伯アルト
Ⅹ 不穏の魚影
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1節 冬季

 冬が訪れ、魔王国が外への干渉を絶った間にも色々あった。聖王国が帝国を神敵とみなして戦争を仕掛けたものの、エイジ率いるゲリラ隊によって半数が殲滅されて戦闘継続不能になったり。宰相一派が王国内に潜入しつつ、各地の奴隷オークションにて魔族らを中心に莫大な富を以て買い叩き、結果王国中の奴隷が激減して革命、解放運動であると大動乱が沸き起こったり。他にも色々あったりした。事業で手一杯の魔族に代わって、一部幹部と魔犬隊が大活躍なのだった。


 だが、それは冬の序盤のこと。以降は国際情勢において目立つ出来事はなかった。


 しかし、それは全体を俯瞰した場合の話。魔王国内では様々な改革が進行していた。


 まず、ユインシアの遺構は冬が本格化する前にロープウェイが開通していた。以後も定期的にメンテナンスや効率・安全化などの拡張・補強工事を都度行い、今ではだいぶ安定した運行が可能となっている。それを用いて、工場で生産した魔道具や兵器、精密機器や重要なパーツなどを輸送していた。


 それだけでなく、居住区間のおおよその再整備が完了し、個人住宅や共同住宅では賄いきれなかった分の人を匿うことが可能となった。寧ろ、そちらの方が設備的にも優れているので、一部立場ある者はこちらに優先的に居住したいと申し出る者が多かったほどだ。


 次に、魔王城の改築が大いに進行した。魔王城別棟が建てられ、そこへ研究・教育機関や司法、病院や図書室など記録機関等が移設、集約されるようになった。本館には、新たに議会用の義堂が設けられたほか、空いたスペースは制御室などだけでなくリラクゼーション施設等が増設されていた。内部でも、カードキーなどアクセスロックがかけられるようになり、対空砲や魔術障壁などの防衛設備も整ってきた。


 最後に、周辺について。港湾の整備は概ね完了したが、石油コンビナートはそのあまりの広大さと複雑さから、一部こそ稼働したものの、構想の五分の一も完了していない。その代わり、王都周辺を囲う防護壁はほとんど完成しかかっており、迎撃設備も十分に充実してきていた。また、大陸全土を覆う鉄道については、大陸東岸から帝都。王都にかけてある程度が開通している。



 このように魔王国は、活動の鈍るであろう厳冬にも拘らず大いに発展していた。その立役者は、遺構のみならずユインシア自身の功績が大きい。岩石・鉱物を扱う権能のおかげで、建材の確保は容易かった。植物を司る権能のおかげで、食糧不足になりかけた時は応急的に穀物を生産することができ、建材としてのも木材を確保することもできた。


 冬になる前に彼女を引き入れることができたのは僥倖だった。まさにこのためと言わんばかりの、最適なピースなのだ。彼女がいたことで、当初想定されていたよりも産業等の大幅な躍進と、人口の減少を食い止めることができたのだから。



 その間宰相一派は何をしていたかというと……イチャついていた。そう、ただひたすら甘々に過ごしていた。仕事だ教育だと色々やっていたが、何かにつけて一緒に仲良くしていた。


 その頃にはユインシアも彼らに打ち解け、馴染みきっていた。


 先述の通り彼女は大活躍だったため、ことあるごとにエイジによってベタ褒めされ、今ではデレデレに惚れてしまっていた。初期の頃の怯えぶりは何処へやら、今でも少しの遠慮はあるけれど、他の子達に負けじと甘えようと頑張っていた。勿論、やることもヤっていて。



 それら冬の詳細については、別の機会に譲るとしよう。



 今は予定がとても押しているので巻きます。就活も控えていて忙しいので。

 冬に起きたアレコレ。詳しくは、落ち着いた時に短編集を出しますのでお待ちください……


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