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魔王国の宰相 (旧)  作者: 佐伯アルト
Ⅶ 宰相の諸国視察記 後編
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7 デモンズハウンド ③

 早朝。デモンズハウンドは地下一階、鍛錬場に招集される。


「おはよう。早速今日から仕事をしてもらいます。ですが、その前に……」


 エイジがパチンと指を鳴らす。すると、テミスとレイエルピナ率いる数名の魔族が棺のような巨大な箱を引き摺りながらやってくる。


「制式装備を作成しておきました。これから説明していきますので、お好きなものをどうぞ」


 目の前に置かれた箱の鍵を外すと、それを蹴り開け、中からいくつかの武器を取り出した。


「まずは近接武器から」


 取り出したものは、カッターナイフのような剣。エイジの使用する十握剣と酷似しているが、切先の形状や刀身に節が入っているなど、よりカッター味が増している。


「この剣を正式採用にする」


「……その剣、切れ味は良さそうだが、耐久性はどうなんだ」

「ふふふ、よくぞ聞いてくれた」


 エイジは正面に剣を立てると、真横から殴る。すると……ポキリと容易く折れてしまった。


「折れてんじゃねえすか」

「おうさ。耐久性は皆無。だがな……」


 またもゴソゴソとコンテナボックスを弄ると、何かしらの立方体を取り出す。


「ここに替刃が入ってる。柄のここにあるトリガーを操作すると……外れる。そして新しい刃を差し込むだけで交換可能だ」

「どうやって運用するんだ、それは」


「まあ、しなりの入っていない日本刀としてのイメージが近いが……切れ味鋭いけど脆いんで、折れたらガンガン取り替えるスタイルがメインとなる」

「それのメリットは何なんです」


「とにかく軽い。振ればわかるさ。あとは構造が単純だから、鍛える必要がないし、大量生産に向いている。弱点としては防御には使えないこと、それから魔導金属製なのでそれなりに高価。折れた刃は再利用したいので拾ってね」

「魔導金属……⁉︎ 確かに、こいつはすごく軽いな」


 軽く振るだけでヒュンヒュンと風を切る。


「一刀でもいいし、二刀流でもいい。魔力伝導率も高いから強化もしやすいしね。ああ、しかもこの剣だけではないぞ」


 次に出したものは、ビームソード。円筒のスイッチを押すと、魔力の刃が発振される。


「魔力の刃を形成するビームソード。高エネルギーで対象を焼き切れる。刃がほとんど無いようなものだから軽いくせに、しっかり相手と切り結べる。この筒の中に魔晶石が組み込まれているからスイッチ一つで簡単に、しかもレバー操作で出力と刀身の制御もできる。弱点としては、どこから触れても切れるので、諸刃の剣よりよっぽど危険だということ、それから、エネルギー切れ問題で長期戦には向かない。以上だ、これらの武器が気に食わないなら、ロングソードやサーベルも用意しよう」


 その高水準技術がふんだんに使われた高級武器に、多くのデモンズハウンドたちは興味をそそられた様子。しかし一部は、あまり喜んでいない。


「ふむ、使い慣れた武器があるのか……だったらその武器、構成材質を魔導金属に置き換えて、新たに鍛造しようか」


 それらは、好んで使う武装のある分隊長やそれに類する実力の者たち。それに気づくとすかさずフォローを入れる。その提案には彼らも強く反応し、期待するような目に変わった。


「もちろん、ある程度成果を出してから、ボーナスとしての実施にはなるけどね」


 好感触を得つつも注意をすると、一旦ブレードは置いて、別の武器を取り出す。


「次はコイツら、射撃武器。でも気をつけてくださいね、この武器の技術はブラックボックス化どころか、この武器の実在自体を知らない者も多い。魔王様や軍の総帥までもだ」


 その事実は、彼らにとっても衝撃的だった。まさか、魔導において最先端を行くこの国のトップ格でさえ知らないようなものを任されるのかと。それはなかなかのプレッシャーである。


「その武器というのは……コイツだ!」


 取り出したのは、ハンドガン。多くの者は、そんな小さいものが? といった様子で、既に使用されたのを見たことがある一部も、それが? といった反応だ。


「使い方は簡単。狙いを定めて、引き金を引くだけ」


 紹介のアシスタントとして、テミスが木製の的を設置。エイジはそれを狙い、難なく撃ち抜く。


「この通り。おっと、魔力がある者しか使えない、なんて思うなよ? マガジンには魔晶石を差し込んであるので、誰でも魔弾を撃つことができる。しかも、別タイプの銃なら金属製の実体弾を射撃することさえできる」


 もう片方の手では、実体弾の拳銃を同じ的に撃つ。


「さらに、この銃はあくまでサブウエポン。別の種類がいくつかある」


 二つ目のコンテナを開けると、そこをまたゴソゴソしていくつか銃火器を取り出した。


「まずは、ハンドガンより威力と射程が向上したノーマルライフル。これが通常装備になるかな」


 見た目としてはハンドガンとライフルの中間、サブマシンガンに近い形状か。シンプルなフォルムをしている。


「本当はアサルトライフルの方がいいけど、作れなかったので、これをデフォルトにする。さらに、この武器のいいところは拡張性が高い点だ。これにオプションパーツとしてロングバレルとスコープを取り付けることで、さらに長距離の狙撃も可能になる。また、銃身の下部には、ランチャーを付けられる。専用の爆発する弾を装填して、爆弾として使えるんだ。それの代わりに、銃剣を付けるって手もある。どうだ、汎用性の塊みたいだろ」


 実際にガチャガチャと弄りながら、その性能を見せつける。


「制圧力に不安があるならコチラをどうぞ。二連装サブマシンガン。連射力が極めて高く、牽制などに高い適性がある。……まあ、武器としてはこんなところかな。他の武器案とか、使ってみたい魔道具があるなら言ってくれ。では、次に防具に移る」


 全ての武器を丁寧に収めると、また別のコンテナを開く。


「籠手に脚甲、胸当てに兜、そしてシールドだ。シールドは腕に装着しても、手に持っても使える。さらにこれは魔道具でもあるのでね、小規模ながら魔術障壁の展開も可能だ。残念ながらそれ以外の防具は魔導金属ではないが、上質な金属を使用しているので、ある程度の防御力は保証する」


 解説しながら、マネキンに一式装備させていく。それを隊員たちに触らせ、使い心地を想像させてる。


「よりによって肝心の防御力が、と思うかもしれないが、大規模な戦闘行為は想定していない。そもそも銃で牽制するのが基本戦術で、近付けさせないのが前提。あとは、魔道具は大量生産が難しく、数百人分をすぐに用意するのは難しかったんだ。すまないね、これから少しずつ支給する。まあ、その頃には戦闘服もできているかな。現在、魔導繊維を鋭意研究中だ」


 エイジは不満へのフォローとして説明をペラペラ喋っているが、すでにほとんどの隊員たちの意識は新兵器へと向いている。


「では、その新武器と共に任務に赴いてくれたまえ。既にイグゼに編隊の案は練ってもらってあるので、あとはそれを基に協議してくれ。また、朗報だ。魔王国の設備と人員を貸し出すので、輸送に関してはサポートがつくぞ。それから、この子を預ける」


 エイジは笛を取り出すと、ピィ〜! っと吹く。すると、部屋の隅で今か今かと待ち構えてきた少女が嬉しそうに駆け寄る。


「狼型の幻獣、ジンだ。幻獣なのでな、スタミナもパワーも十分。馬車を引くのも、非常時の戦闘もこなせるはずだ」


「え? おれにお仕事って、お外に行かなきゃいけないのか⁉︎」

「嫌なのか」


「……うん。ここで、もっとご主人と一緒にいたい」


 耳と尻尾が垂れて、しょんぼりしている様子。思っていたよりも、まだまだ精神は幼いらしいが……何より救出してから共和国に旅立つまでの数日で、ずいぶん懐かれてしまったらしい。エイジは嬉しいような、困ったような微妙な表情。


「ジン、お仕事頑張ったら、いっぱい褒めてあげるから。それから、あのおじさんは優しいからね、ご褒美に美味しいもの買ったりしてくれるかもだ」

「本当か⁉︎」


「ああ、約束するよ」

「本当のほんとうか⁉︎ 約束だぞ!」


 一転、やる気に満ちたように、目は輝き尻尾もピンっとする。


「というわけだ。アリサーシャ、頼んだぞ」


 マジで頼むぞ変なことすんなよ。そんなメッセージを、威圧するような目つきから感じ取ったアリサーシャは冷や汗。


「では、武装の紹介はこれで終わりだ。これから二時間ほど、ここは君らに開放しておく。他の魔族らも入ってこれないよう貸切にしてあるからな、存分に試すといい。満足したら、一階の食堂で食事を摂り、用意が整い次第出発を。残った人員、それから帰って来る者のために、今日中に部屋を正式に手配しておくから。オレからの連絡事項は以上……イグゼ、あとは任せる」


「ああ、任された。……寝不足なのだろう? 休んではどうだ」


「大丈夫……と言いたいところだが、君にさえそう見えてしまうのなら、相当まずいね。ここで無理すれば却って効率が落ちる、お言葉に甘えて仮眠をとらせてもらうよ」


 一仕事終わって気が抜けたのか、大欠伸をしながらフラフラと部屋を出ていく。


「君たちもしっかり休んでおきなよー!」


 最後に一言メッセージを残して。


「そうですね、私たちも寝ますか」

「ふぁ……ちょっと無理しちゃったかも。流石にキツい」


 この兵器らを実際に開発、さらには紹介の補佐までした二人の負担はエイジに劣るものでもない。彼の後を追うように退室した。


「では」

「はい、後始末はわたくし達が」


 この二人は、彼らよりはちょっとだけ睡眠時間が長かったために、もう少しだけ頑張れる。


「帰ってきたばかりだというのに、もう皆満身創痍ではないか……思ったより怖いぞ魔王国」


 だがブラックに見えるのは、自分から無理をしていき、しかもそれは自らの身勝手のツケであるエイジ、そしてその周囲だけなのだが。イグゼはすっかり怯えてしまっていた。

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