夢中 運命の呪縛
ふと気付くと、何かの風景が見えていた。地球でも、魔王城の周辺でもないようだが……。
__これは……夢か?__
聴覚も触覚もない。まるで体が無いみたいだ。
眼前に広がるは、荒れ果てた大地。地面には幾つものクレーターが空き、空は赤黒く曇り、生命の気配は無い。辺り一面には、ナニカの残骸が転がっている。明らかに、この現象は、自然のものなどではなく。茫然と眺めていると、背後より何か、大きな影が差し……
「ぅわッ⁉︎」
大声と共に、エイジは飛び起きる。
「今のは……一体……?」
気付けば全身汗だくで、気持ちが悪い。心臓は早鐘を打つ。まるで悪夢でも見たかのようだ。
「夢、なのか……?」
しかし。その光景は、脳裏にしっかりと焼き付いていた。夢であれば、目覚めた瞬間にぼやけ始めていてもいいはずだが。
「だと、したら……」
エイジは目を押さえる。
「この、能力が……」
目を閉じるだけでは何も見えてこないが、思い出すと鮮明に浮かんでくる。
「何だ……何なんだありゃあ‼︎」
その光景を細部まで注意深く眺める。残骸は、どうやら生き物の…
「これは、この光景は……」
その禍々しい景色は、尋常ではない。
「まさか、世界の……⁉︎」
その結論に至ると、エイジの手は力無く落ちる。
「……だと、したら」
頭を回す。想像力には、自信があった。
「オレが、力を渡されたのは…」
連想し、震える手を見つめる。
「それが、与えられた使命だとでもいうのか……? オレには荷が重すぎる……」
嫌な考えばかりが、頭をよぎる。
「伝えるべきか……いや」
自分は、まだ完全には信じられていない。それに彼らは、持っている能力を知らない。
「ッ! まさか、宰相になるということさえも……いや、これは……」
どこまでが、仕組まれているのだろう。そこまでは分からない。
「…………っ、ハハッ、ハハハハハ……オレは、どこまで運命に翻弄されるんだ?」
せっかく重労働から離れ、現世のしがらみから解き放たれたと思ったのに。
「……宰相になれるというのなら、これはチャンスだ。自分だけでなく、魔族達の力をも全て……どれほどなのかなんて分からんが、少なくとも、発展させられれば人間などよりよっぽど……だとすれば、この座は、逃せない! 例え、どれほどの重責であろうと!」
魔王国の宰相。それがどのようなものになるか。今は全く想像できない。あまりにも情報が足りなさすぎるからだ。だが、臆してこの千載一遇の機会を逃せば、この結末を変えることはできないだろう。
「いつ、なんだろうな……発展は、間に合うのか」
言わばこれは、いつ倒産するかも分からない会社を、社内改革に新商品開発、戦略転換などを成し遂げ、根底から変革させるような……一大プロジェクトを指揮するようなもの。社員の人数も能力も、全容などカケラも分からぬのに。
「ははっ……あ〜あ、こりゃ、今日は寝れそうにねえや」