3.はじまり③
眼を開くとそこは森の中だった。
木々の感じを見ると、そこまで俺が知っている日本と大きくは変わらないような気もする。
「はいはい、お約束の森ですか、そうですかそうですかって違うわ!」
さっきと同じこと言いそうになったわ!!
「いや、これどうすんだよ。とりあえず下級魔法でも撃ってみるか?」
頭の中に思い浮かぶのはさっきよりも圧倒的に数えられる程度の魔法の数々。
俺が思い浮かべたら恐らく下級魔法なんだろうな、これは。
「よし、ファイアボール!」
俺が高らかに叫んだ瞬間、ひりつく様な熱風に包まれた。
目を覚ますと、そこは先程見た白い空間だった。
俺は今一状況もつかめている状態できょろきょろと辺りを見ますのだが、何もない空間であり床も天井も壁も何もわからない……気がする。
最早床だとわかる証拠に、俺は椅子に座っている。
その椅子は俺が今までの人生で見たことのないような素材で作られており、とりあえず高そうという印象はある。
「なんでだあああああっ!!!!」
「……おかえりなさい」
「ふざけてんのかああっ!!」
流石に神に掴みかかることなんてしないが、俺は頭を抱えて叫ぶ。
これでわかった、魔法撃った瞬間にここに戻ったということは、
「俺これ魔法使えないんじゃね?」
「下級魔法でも世界を滅ぼすとは流石ですね」
「流石じゃねえよ! ふざけんなこのポンコツ神様!」
「それについて否定はできないですが……本当にすみません」
ぺこりと頭を下げられるが、これクーリングオフきくんだよね?
「すみません、一度お渡しした力に対しては返品出来ません。頑張ってくださいね」
もう何をがんばれというのだろうか。
俺の人生はこれからどうしろと?
「この世界って魔法がないと迫害でもされるのか?」
「それはないと思います。一部の種族は魔力を持たないとされていますし」
……それならいいか。
もういいや。無双しながらの夢の異世界ライフは諦めて、何とか楽しく生きるしかないのか。
「で、またこれから俺は戻るんでしょ?」
頷く元凶。
異世界に旅立たせてくれるだけ感謝するしかない、そう思おう。うん、仕方ない。
「私は世界に干渉は出来ないので詳細は言えませんが、どこかにどんな願いが叶うといわれているアイテムがあるみたいですよ」
俺ははっと神を見る。
つまり、それは俺が制御できるようになる可能性もあるという事だ!
「あと、一応先に申し上げておきますが」
と前置きをつけて。
「身体能力強化をすれば体が耐えられなくて破裂しますし、精神操作などすれば貴方の思考キャパシティが足りず廃人になって死にますのでお気をつけてくださいね」
「…………つまり、なにも魔法は使えないってことか」
神は苦笑する。
「それについてはお答えできません」
そして俺は希望を持てた。
つまり、どんな魔法であるかは別としてないとは言っていない。
それならまだまだ希望があるじゃないか。
「では、またいってらっしゃい。亡くなったらまたお願いしますね」
「もうお願いしたくないけどね……ポンコツ神に一応感謝してるよ」
とりあえずまた森に出るだろうし、今度は何とかしないといけないわけだ。
これ餓死してもまた神の元に戻るのかな。
……俺にサバイバルできるとも思えないし、街を目指すしかないな。
本日だけで視界の暗転が三度目だが、最早慣れてしまった自分が悲しい。