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24.手鏡

「……魔法で探すなら、魔法で片付けろよ」


「それができれば早いのですが、この世界にはないんですよ」



 さっきの記憶を俺は思い出しつつ、俺はため息をついた。

 なんでこう……もういいや。



「これ本の上に腰かけてもいいのか?」


「どうぞどうぞ」


 ……手頃につまれた本の山の上に座ることにする。

 こんな場所に座る機会がなかったが、意外と座り心地は悪くない。



「で、アイテムの情報が欲しい」


 あくまでもオールミラーというアイテム名だけは言わないでおく。もしかしたらあの名前はジールしか知らない可能性があるわけだし。


 流石に自滅だけは避けなくては。



「オールミラーと言って名前の通り手鏡のようです。勿論、私も実物は見たことがないのですが……」


 手で大きさを示してくれるのだが、多分片手くらいの大きさという事だ。

 そして一冊の本を開いて見せてくれる。


 そこにはかなりシンプルな作りでかつ木の持ち手がある手鏡の絵が描かれていた。

 白黒ではあるが、こんな鏡はどこにでもありそうというのが俺の第一印象だ。



「これは伝承ですが、自らを映すことによってそのものの願望が映されて実現するみたいです」


「使用制限とかあるのか?」


「文献上はないとされています。ただ」


「ただ?」



 ただ、で止められると嫌な予感しかしない。


「その願いが果たされるまでは次の願いは叶わないらしいです」


 ……これは、トンチか何かなのか?

 俺の心でも読んだかのようにちょんまげ魔術師は笑った。


「面白いですよね。願いを叶えるはずのアイテムなのに、果たされるまで次は叶わないという」


「意味が分からん」



「私にもわかりませんが、解釈としては『完全に願いを叶える』わけではないようです。過去の例が調べられていますが、世界征服を願った場合にはそれ相応の強大な力が与えられるようです」


 目的と手段ってことか。

 世界征服が目的になるけれどそれを叶えるのではなく、それを叶えるための手段が与えられる。

 実際のところ、いきなり世界征服が叶ってもすぐに崩壊しそうだしな。



「一番くだらない例では、一夫多妻になりたいと願った人間はチャームの魔法を魔力消費なしで無限に撃てるようになったとか」


「……なんだそりゃ」


 他者を魅惑する魔法だが、それはもう願いが叶えるという事なのだろうか。

だが、色々と法則を無視できるという点を考えるととんでもないアイテムであることは確かだ。


「さっきの例で行くと、世界征服を願って強大な力を得た。でも世界を征服するまではオールミラーを使えないってことだろ?」


 デックスは頷いた。

 でも基本的には願いを叶える手段は手に入れたわけだし、願望が叶うといっても差支えはなさそうだな。


「それを言うと、ある意味あなたはそれに近い存在だと思いますよ」


「どういうことだ?」


「魔法というのはそれだけの力があるという事です。世界を騙せば嘘も実現してしまいます」


 なんだその詩的な表現。

 そもそも世界を騙すというのは理解できないけれど、嘘もばれなきゃ真実ってことだな。



「俺の膨大な魔力を使えればできるってことか」


「そうなれば貴方がそれをできた暁には、貴方をめぐって戦争でも起きそうですね」



 ……俺はただチートでのんびりしたいだけなのにな。

 時には悪役を倒してハッピーになれればいいと思っていたが、未だに前途多難だ。



「これも伝承ですが、北方の天を貫くほど高いといわれる山に祀られていたとされています」


 それで北に向かえってことね。



 こうして俺の目的は決まった。

 まずは北に行こう。話はそれからだ。


 それまでに使える魔法は三回。心許なさ過ぎる。


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