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20.地下牢

「ここにいるのか?」


 食事の後に俺たちは地下牢を進んでいた。

 地下であり基本的にすれ違うのは王宮で働く兵士のみで、極稀に牢屋の中に力尽きているようにぐったりしている罪人を見かけられる。

 

 俺たちの方にコンタクトを取ろうとする罪人は見受けられず、誰もが俺たちと眼を合わせることなく手錠が繋がっている鎖を擦らせて時たま鳴らしているだけだった。



「もっと奥ですね。ここは尋問や拷問待ちですね」


 ……拷問。


 デックスも罪人に目を向けることなくすたすたと進んでいく。

 俺の中で色々きになることもあるが、とりあえずは俺の目的の為に目を瞑っておこう。ここを地球と同じように考えるのは流石に無理だ。



「彼に会いに来ました」


 地下牢の奥には、明らかに何かを厳重に閉じ込めるための分厚そうで重たい両開きの扉が閉まっていた。

 両端には全身真っ黒の鎧で固めた兵士が直立しており、この日の当たらないところでもしっかり守り続けている彼らに俺は頭を下げる。


「…………待て」


 手に持っている槍を同時に傾け、扉を開けようとしたデックスを止める。

 その全く寸分も違わないシンクロされた動きに俺は感動しつつ、彼を観察する。


 二人とも身長は2m近くあり、鎧によって更に大きく見えた。恐らく男性であるようには見えるし、その声は低く聞き取りにくい。


 槍の柄には何か模様が描かれているようだが、それが何かはわからない。王国の紋章とかだろうか?



「なんでしょう」


 デックスは目を丸くしているところを見ると、そもそもこの門番である兵士が話していることを見たことがないのかもしれない。



「…………入れ」


 今の間はなんだこれ。

 そして今俺らに許可を出したのはどっちだ。くぐもっているせいでどちらの声かもわからない。


 槍をまた直立に戻し、扉は独りでに俺ら側に引かれて開けられる。

 もう魔法の世界だからそこまで気にしていないけれど、こんな重そうな扉を開けろとか言われなくてよかった。まあデックスが明けてくれている可能性も勿論あるが。


 扉が開いているはずなのに、その向こう側は何も見えない。

 まるで黒いカーテンがかかっているみたいだ。


「行きましょう」


「お、おう」


 王宮魔導士は歩みを止めることなく進むので、俺も続く。そして二人で扉を潜ると、同じように独りでに閉まっていく。

 



「君ははじめまして。そしてデックス君、先日振りだね」


 中の部屋はそこまで広い空間ではなく、多分俺が昨晩泊った部屋の方が広いと思われる。

 ただ物は殆どなく、一人の青年が金属による目隠し、手錠、足枷がつけられているうえに、更に腕と体幹をまとめて鎖で固定されていて如何にも危険人物だという印象が与えられる。


 それでも恐らく年齢は俺とそう変わらないように見えるし、デックスよりも年上にも見える。はっきり言って全く分からない。


 白髪を短くまとめ、白い囚人服に身を包んでいる彼は、捕まっている者とは思えないような陽気で暢気な声をしていた。


 魔法によって空中で座標ごと固定されているみたいで、宙に直立しているように見える。


 隣のデックスをちらりと見ると、かなり警戒しているのがわかる。

 俺と話した時とは違っており、敵対している雰囲気と言われても違和感はない。



「……取引しに来た」


 柔らかく、人当たりのよさそうな声と違ってデックスは怖い声だった。



「ふーん、デックス君。席を外してもらえないかな」


 まだ俺は一言も発していないし、デックスは取引に来たことを告げただけだ。

 なのに、この青年はいきなり席を外すように言った。



「お前と二人にさせるわけにはいかない」


「急がないともっと遠方に逃げられてしまうかもよ?」



「…………」


 デックスが表情を全く変えていないだけすごいと思った。

 俺からしたら、こういう強キャラがいることを知っているからそこまで驚きもしなかったが。


 わかるのは、クリスが逃げていることを把握しているようだ。



「デックス、俺に任せてくれないか?」


「先に約束しろ」


「わかったよ。逃げた人間については彼に教えよう。それをデックス君に伝えるかは彼次第だろうけれど」


 なんだこう仲違いさせようとするようなセリフを言うんだろうね。

 そして無駄に意味深な発言は面倒だからやめてくれ。



「ま、それについては安心してくれ」


「……わかりましたよ。出ていきますよ」


 残されたのは雁字搦めに囚われた青年。そして俺。


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