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12.内輪揉め

 深夜にもかかわらず、王妃はきちんと王族らしい服装をしていた。

 当たり前かもしれないけれど。


 ベッドに腰かけている女性を見た俺が思ったことはまず、ブレンダの母親だと告げられていなくてもこれは親子だということだ。


 温和な印象を与えるやや垂れ気味な深く青い目。

 ブレンダと同じく肩まで伸ばして流れるような銀髪。

 

 多分ブレンダをこのまま大人の女性として成熟にしたらこうなるんだろうなってイメージそのままだ。



「夜遅くにごめんなさいね」


「いえ、あの」


 俺はかなり緊張した状態で返答する。

女性のタイプで言うとはっきり言ってドストライクすぎる。人妻だということを除けば。


いや、その部分が一番重要なんだが。

 


「デックス、貴方は下がってくれるかしら?」


「……仰せの通りに」


 一瞬俺の方を見たが、すぐに頭を下げてすぐに退室した。

 俺の馬鹿魔力を知っているからこそ、何かされないか不安なんだろう。



 因みに後日聞いた話によると、俺が鼻を伸ばしていたかららしい。なんでだよ。




「ごめんなさいね、デックスも私のことを心配してくれているの」


 深々と頭を下げられる。

 いや、これ王族が一庶民に頭を下げるってダメじゃないか。見られるとまずい場面だと思う。



 礼儀なんてよくわからないけれど、とりあえず片膝をついて俺も頭を下げる。


「あ、謝られる必要はありません」


「うふふ、そこまで畏まらないで。私はエレナ、どこまで聞いているかは知らないけれどあなたが助けてくれたブレンダの実母よ」


 エレナ王妃は座ったままで失礼するわね、と続けた。

 これは俺も名乗るべきなんだろうけれど、許可されるまで待った方がいいのかな。


 でも、畏まるなと言われているし。



「わ、私はアラタ・テンライと申します」


 更に頭を下げる。

 そしてそこの椅子に座るように言われたので素直に移動することにする。



「アラタ、こんな深夜にも関わらず、会おうとした私のことを不審に思うかしら?」


「い、いえ」


 なんだ、何が狙いだ?

 俺は努めて表情を変えないようにする


「デックスからあなたが強力な人間だということを聞いています。折り入ってお願いがあります」


「……なんでしょう。私にできることであれば是非」


 こんな美人にお願いされたらなんだって聞きますよ!

 人妻じゃなければなぁ……人妻でなければ。



「アラタ、あなたは私たち王族についてどのくらいご存じかしら?」


「……あまり、ですね。東の方の島国生まれでして」


 美人に嘘など付けない俺は、なるべく本当のことを言う。


「そう、簡単に話させてもらえない?」


 俺は迷わず了承する。


 そして深夜にも関わらず、1時間弱語られる。

 簡単に要約してくれているようだが、俺からしたら初めて来た国の知識を一から聞かされるわけで圧倒的に時間がかかった。


 要約を要約する。

この国では王族が代々国王として貴族を束ねる存在でまとまっている。

代々国王には男性がなってきたのだが、現国王の子供にはブレンダ含めて女性3名しかいない。

 本来であれば王族としては血を絶やさないべく子をなし、男児を生むのが普通だ。

 しかし、現国王は呪いをかけられていて子供を作れる状態ではない。

 そうなると、王族に近い貴族の男性と王女を結婚させるしかない。


 で、第一第二第三王女でもめているらしい。



 ……なるほどね。内輪揉めか。


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