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【書籍化】死に戻り魔術姫は勇者より先に魔王を倒します ~前世から引き継いだチート魔術で未来を変え、新しい恋に生きる~  作者: 葵 すみれ
第2章 学院祭

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54.アナスタシアvsブラント

 アナスタシアとブラントは、順当に対抗戦を勝ち進んでいった。

 圧倒的な魔力で相手をねじ伏せるブラントと、巧みな術式操作と格闘術の組み合わせで他の追随を許さないアナスタシアは、出場者たちの中でも飛び抜けていて、とうとう残すのは決勝のみとなった。


 決勝戦の前に設けられた休憩時間になると、観客たちは今までの戦いについての意見を交わし合ったり、勝者がどちらになるかの賭けに興じたりしていた。

 一年生の頃から負け無しだったブラントが最高学年になり、始まる前から彼の圧勝しかあり得ないと思われていた対抗戦に、思わぬ伏兵が現れたのだ。

 しかも、アナスタシアはこれまでの対抗戦で見たことがないような戦い方をする。

 それがブラントに通用するのか、あるいは上回るのか、人々は盛んに語り合う。


 そして当の出場者となる二人は、控え室で仲良くお茶を飲んでいた。


「いよいよだね。ドキドキしてきたよ」


「私もドキドキしています」


 やたらと嬉しそうなブラントと、緊張のほうが強いアナスタシア。

 だが、これは命のやり取りではなく、学院の対抗戦だ。敗北が死に繋がるわけではないので、その点は気楽だった。

 それに、アナスタシアもブラントという強者と戦うことに、わくわくしてくる気持ちがある。

 ダンジョンにはよく一緒に行き、魔物相手に共に戦うことは多かったが、互いに戦ってみたことはなかったのだ。


「さて、時間だね。これだけ楽しみな決勝戦は初めてだ。よろしくお願いします」


「はい、よろしくお願いします」


 二人が舞台に上がると、客席から歓声と拍手が送られた。

 距離を置いて向かい合い、客席が静まり返ったところで、開始の合図が響く。


 だが、ブラントは動こうとはしない。

 学年が下の自分から攻撃するべきだろうと、アナスタシアは術式を編み上げる。

 無数の光の刃がブラントを取り囲み、刺し貫こうと一斉に放たれる。

 しかし、ブラントは障壁を張り、光の刃は霧散していく。


 ここまではよくある、普通の流れだ。

 そこで、アナスタシアはブラントが張った障壁の術式に手を加え、ごくわずかな一点を解除する。

 そして、そこに向けて本命の光の矢を放つ。

 障壁を張り直す余裕を与えず、光の矢は障壁に空いた穴をすり抜け、ブラントの胸元にある青い玉へと向かっていく。


「……っ!」


 だが、ブラントは手に魔力をこめて光の矢をつかみ、消滅させた。

 岩を貫くくらいの威力はあったはずだが、それ以上の魔力でもって封じ込められてしまったのだ。

 さすがにこの程度では無理かと、アナスタシアはブラントからの攻撃に備えようとする。

 しかし、どのような攻撃を仕掛けてくるのかと様子を窺っていたところ、ブラントの姿が消えてしまった。


 アナスタシアは驚きながら、ざわりとした悪寒に襲われ、ほぼ勘だけで後ろに飛び退いた。

 すると、目の前に突然ブラントが現れ、アナスタシアの首から提げられた青い玉目がけて、蹴りを放ってきたのだ。

 反射的にアナスタシアは両手で防ごうとする。

 少し距離が空いていたことから、ブラントが一歩踏み込む間があったため、無事に受け止めることができた。

 しかし、咄嗟のことで魔力を少ししか通せず、手が痺れてしまう。


「……わりと隠し玉だったんだけどな。これを止めるか」


 驚きと感嘆の混じった声で、ブラントが呟く。

 おそらく【転移】をアレンジした魔術なのだろう。

 まさかこのような手段があるとは思いもよらず、アナスタシアが防げたのも何となくの戦闘勘によるものだった。


 痺れた手ではうまく魔力を通せず、拳を使った技は不可能だ。

 いったん離れようと、アナスタシアは電撃を降らせて後退する。

 だが、ブラントは片手を振っただけで電撃を消滅させてしまう。それ以上の魔力をぶつけて打ち消してしまったのだ。


 ブラントはすぐに追いかけてきて、蹴りを繰り返す。

 だが、狙いが青い玉一点であることから、アナスタシアは容易に避けることができた。

 蹴りが放たれては一歩引き、まるでダンスでも踊るかのように二人は息の合った動きを披露する。


「狙いが単調すぎますよ」


「いやあ……やっぱりね……自分が怪我する分には構わないんだけれど、怪我させずに勝とうとしたらこれしかないからね」


 アナスタシアが指摘すると、ブラントは苦笑しながら答えた。

 相手にダメージを与えずに勝つには、青い玉を直接砕くしかない。

 それはアナスタシアも同じ事を考え、狙いを青い玉に定めてきた。

 だが、互いにそれだけで勝てるほど甘い相手ではないのだ。


「そんな甘いことで、勝てると思わないでくださいね」


 逃げているうちに、手の痺れは回復した。

 今度は攻撃に転じる番だと、アナスタシアはブラントの蹴りをかわした後、動きを封じるための術式を投げかける。

 魔族との戦いで使用したのと、同じ技だ。


 しかし、ブラントの魔力抵抗力が高すぎて、一瞬しか効果がない。

 それでもその一瞬があれば、十分だ。

 アナスタシアはブラントに向かって蹴りを放つ。


 やや反応が遅れながらも、ブラントは蹴りをかわした。

 だが、ぎりぎりでかわしたために、ブラントはわずかにバランスを崩してしまう。

 その隙を逃さず、アナスタシアは足を踏み込ませて、青い玉に向けて拳を突き出した。

 魔力を乗せた拳が、青い玉に触れた。

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