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【書籍化】死に戻り魔術姫は勇者より先に魔王を倒します ~前世から引き継いだチート魔術で未来を変え、新しい恋に生きる~  作者: 葵 すみれ
第2章 学院祭

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38.救援要請

 ちらほらと現れる弱い魔物たちを蹴散らし、アナスタシアとブラントは試練の部屋までやってきた。

 しかし、番人である甲冑は現れず、奥に台座がぽつんとたたずむだけだ。どうやら【白火】を授かった者しかいない状態だと、現れないらしい。


「この台座の下が開いて、中にスイッチがあるんだ」


 ブラントはそう言って、台座の下部分を軽く二回叩く。すると、台座の下に小さな窓が開いた。

 そして、ブラントがその中に手を入れると、台座の後ろにあった壁が重たい音を立ててずれていき、道が現れる。


「少し時間が経つと戻るから、早く進もう」


 二人は奥に進んでいく。

 周囲の様子はそれまでとさほど変わらないが、どことなく空気が重たい。

 やがて、石でできた人形型の魔物が二体現れた。見るからに、試練の部屋より前で出てきた魔物よりも強そうだ。


「ちなみに、最後まで全部【白火】だけで押し通すこともできるよ。でも、それならあまり訓練にならないかなと思うんだ」


「そうですね。せっかくだから、違う戦い方もしてみたいところですね」


 ブラントの発案に、アナスタシアも頷く。

 おそらく【魔滅】も通じるだろうが、それではあまりにも簡単に終わってしまう。

 アナスタシアはすでに【魔滅】や【白火】は極めているといってもいい。これ以上練習したところで、得られるものはほとんどないだろう。

 ダンジョンの最奥に到達することが目的ならばそれでよいのだが、ここには鍛えるために来ている。

 危険な状況にならない限り、【魔滅】や【白火】は封印して、他の戦い方を試してみるべきだろう。


「もしよければ、拳で直接魔力を叩きつけるやつ、見せてもらえないかな」


「いいですよ」


 アナスタシアは頷くと、前にいた石人形に向かって駆けていく。

 石人形の動きは鈍く、アナスタシアの拳はあっさり石人形に届いた。

 拳はそのものの威力ではなく、魔力を通すための媒体とするためなので、触れさせるだけでよい。

 魔族と戦ったときとは違い、何らかの術式を一緒に乗せるわけでもなく、単純に魔力だけを叩きつける。

 次の瞬間、石人形はバラバラに砕け散り、床に石の破片と魔石が崩れ落ちた。


「……なるほど、そうやってやるんだ」


 感心したようにブラントが呟いた。

 そして、今度はブラントが後ろにいた石人形に向かっていく。

 石人形に拳を叩き付けると、爆発が起こった。石つぶてが飛んできて、アナスタシアは障壁を張る。


「はは……加減が難しいね」


 ブラントも咄嗟に障壁を張ったようで、無傷だった。

 気まずそうに乾いた笑いを漏らす。


「叩き付ける魔力量が多すぎます。あと、拳が痛くありませんか?」


「うん、痛い」


「拳で直接ダメージを与えるわけじゃないので、軽く触れる程度でいいんですよ。ちょっと見せてください」


 ブラントはかなり力任せに石人形を殴り、拳と魔力を叩き付けていた。

 強化していない拳は赤くなり、過剰な魔力を注がれた石人形は爆発してしまったのだ。

 アナスタシアはブラントの赤くなった拳に治癒魔術をかける。あっという間に赤みは引いていった。


「ありがとう。これ、結構難しいね。アナスタシアさんのように綺麗に崩すのは大変そうだ」


「慣れるまで、自分に防御魔術と強化魔術をかけておいて、爆発覚悟で殴ったほうがいいかもしれませんね。力加減のコントロールも練習していくべきですけれど、ブラント先輩は威力の高さが武器なので、そこを潰さないように慣れていったほうがいいと思います」


「そうだね。次は防御魔術と強化魔術を使ってからにしてみよう」


 そうして二人は、学院ダンジョンの奥へと進んでいく。

 魔物が現れると、アナスタシアもブラントも拳で魔力を叩き付ける方式で戦う。

 端から見れば、魔術師ではなく、格闘家としか思えないだろう。

 やがて最後の部屋にたどり着く頃には、二人ともぐったりと疲れ果てていた。


「……体力が……きつい……」


「……威力を抑えるのが……つらい……」


 アナスタシアは前回の人生で格闘術をそれなりには学んだが、この体はそれ以前のものだ。

 こうしたときにはこう動くといった知識はあっても、体がついていかない。

 もっと体力をつける必要があると思い知らされていた。


 ブラントは魔力制御が思うようにいかないらしい。

 魔術だけを使うのならまだしも、格闘術と魔術を組み合わせての動きのため、それだけに集中できずに制御が乱れ、威力を抑えられなくなってしまう。

 それでも、だんだん爆発する回数は少なくなってきていた。


「……訓練にはいいですね」


「そうだね。転移石のところまで来たし、ちょうどよかったね。戻ろうか」


 部屋の中央には大きな六角柱の水晶にも似た、転移石がある。

 それに触れれば、学院ダンジョンの入り口まで戻れるという。


「明日も来ましょう……自分の問題点がはっきりしました……」


 ここまで自分の体が貧弱だとは思わなかったと、アナスタシアは歯がみする。

 今までもダンジョンには行っていたが、既に極めた魔術ばかり使って、楽をしていたので気づかなかったのだろう。

 魔力を直接叩き付けていくのも、魔力回路の貧弱さが浮き彫りになった。前回の人生の最盛期とは比べものにならないくらい、乏しい。これまで魔素を取り込む術式を多用していたので、これも気にならなかったのだ。

 体力と魔力回路、両方とも鍛える必要がある。


「そうだね、明日も来ようか。少しマシになってきたから、もっと練習すれば……」


 ブラントも、自分の課題について考えているようだ。

 こうして明日も学院ダンジョンに行こうと約束して、二人は転移石で入り口に戻った。


 そして翌日、またダンジョンで魔物を倒しながら進んで行く。

 前日よりも少しマシになったようだった。

 その翌日もダンジョンに行き、さらに翌日も、連日ダンジョンに潜る日々が続いた。


「……なんだか、魔物の数が減っていますよね?」


「そうだね……短期間で倒しすぎたかな。魔物の生産が追いつかないのかもしれない」


 日を重ねるごとに、徐々に出現する魔物の数が減っていったのだ。

 試練の部屋までに出現する魔物の数は変わっていないようなのだが、それより後の魔物は目に見えて減っている。

 今日は最奥の部屋までたどりついても、息切れ一つすることはなかった。

 体も鍛えられてきているだろうが、魔物が減ってしまったことも大きい。


「明日はちょうど休みだし、別のダンジョンに行ってみようか。休み明けにはここの魔物も回復しているかもしれないし」


「そうですね。魔物がいないと意味がないので、回復していてほしいですね」


 休みの日は初級ダンジョンに行ってきた。

 そして休み明けに学院ダンジョンの受付に行くと、受付の女性が眉間に皺を寄せながら、声をかけてくる。


「ダンジョンに入ったまま、長時間戻らない子たちがいるの。二年生のモーヴとノーヴなんだけれど……前にも、救援されたことがある子たちなのよね。まさか、まただなんて……」


 ため息を漏らす受付の女性。


「救援要請ですか?」


「ええ、ちょうどブラントくんが来たし、お願いするわ」


 ブラントは頷くと、学院ダンジョンの入り口に向かう。

 一緒に行ってもよいものかとアナスタシアは迷うが、ブラントがアナスタシアに行こうと声をかけてきたので、追いかけていった。

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