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【書籍化】死に戻り魔術姫は勇者より先に魔王を倒します ~前世から引き継いだチート魔術で未来を変え、新しい恋に生きる~  作者: 葵 すみれ
第6章 勇者

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188.意味不明な目的

「キーラのことはとりあえず措いておくとして、問題は占い師のほうだと思うの」


 不快な勘違いではあるし、女子生徒三人組を惑わせるきっかけとなった虚言は問題ではあるものの、キーラの行動に深慮遠謀があるとは考えにくい。

 キーラはいずれ締め上げたほうがよいかもしれないが、今は得体の知れない占い師の行動のほうが気になる。


「ああ……セレスティア聖王国で、占い師として潜り込んでいた魔族がいたね。捕らえられそうだったけれど、結局逃がしちゃったやつ」


 過去に取り逃がしたことを思い出したようで、ブラントは苦い表情を浮かべる。


「もしその魔族だったとして、あの三人組に声をかけて洗脳したのは何故かしら。仮に彼女らが魔術学院の生徒であることを知って、何か利用しようとしたのだとしても、それが何なのかがさっぱりわからないわ」


「うん……その三人組にやらせたことって、アナスタシアへの嫌がらせだろう? もしうまくいったとしても、俺とアナスタシアが喧嘩するくらい……? 本当に何がしたいのかわからないな……」


 アナスタシアとブラントは、さっぱりわからないと唸る。

 セレスティア聖王国から魔族を追い払ったので、恨みを買っている可能性はあるだろう。復讐を考えていてもおかしくはない。

 だが、この程度のちょっとした嫌がらせは意味不明だ。


 占い師として潜り込んでいた魔族は、自分のことを下っ端だと言っていた。実際に、下位魔族だろう。

 そして、誰かの命令を受けて動いているようでもあった。


 セレスティア聖王国を影から操っていた魔族の目的は、黒い翼の魔王を作り出すことだったはずだ。

 そのことはエリシオンから聞いたが、潜り込んでいた魔族がその後どうなったかは、これまで聞いたことがなかった。


「……おじいさまに聞いてみるのが、一番手っ取り早いだろうな」


「そうね……」


 二人は頷き合うと、魔王城に転移する。

 部屋で待機していた自動人形に、エリシオンはどこにいるのかと尋ねると、玉座の間に案内された。

 進んで行くと、アナスタシアとブラントが初めて訪れたときと同じように、エリシオンは玉座に座ったままぼんやりとしていた。


「……そなたたちか。どうかしたのか?」


 エリシオンはアナスタシアとブラントに気付くと、座ったまま声をかけてくる。


「ちょっとお伺いしたいことがありまして……以前、セレスティア聖王国に占い師として潜り込んでいた魔族がいたのですが、その魔族が今どうしているかご存知ではありませんか?」


 アナスタシアが尋ねると、エリシオンは少し考える様子を見せた。


「……儂は知らぬが、そこを裏から操ろうと指示を出していたのは、ヨザルードの参謀だったはず。そやつに話を聞けば良い」


 そう言って、エリシオンは何やら思案する。

 いつもならばすぐに殴りに行こうとするのに、珍しいことだとアナスタシアは様子を窺う。

 もしかしたら、ララデリスのように苦手な相手なのだろうか。


「そうだな……そやつを呼び出してやろう。今のところ魔王として動く案件ではないので、儂はそれ以上の手出しはせぬ。いざとなれば祖父として手助けはするが、まずはそなたたちで話してみるがよい」


 落ち着いて一歩引いた態度のエリシオンに、アナスタシアとブラントは顔を見合わせる。

 普段の殴ってから考えるエリシオンからはかけ離れた、思慮深い姿だ。


「おじいさま……どうかしたのですか……? もしかして、また苦手な相手なのですか?」


「いや、ヨザルードの参謀は単なる小物に過ぎぬ。ただ、そなたたちが直接尋ねてみたほうがよかろう。……少々思うところもあってな」


 思わずブラントが心配した声を出すと、エリシオンは苦笑しながら答える。


「早速、呼び出してやろうか?」


「そんなにすぐ、呼び出せるものなのですか?」


 何でもないことのようにあっさり言ってくるエリシオンに、アナスタシアもブラントも驚く。

 まさか、ヨザルードの参謀は魔王城に勤めているとでもいうのだろうか。

 だが、自動人形は何体もいるが、魔族の姿は見かけたことがない。


「ダンジョンコアを通して呼びかける方法もあるが、強制的に召喚することも可能だ。魔王に伝わる魔術だな」


 魔王に伝わる魔術と聞いて、アナスタシアは納得する。

 前回の人生でも、さすがに魔王のダンジョンコアは手に入れられなかった。代々の魔王のみが知っている魔術というのも、存在するのだろう。

 だが、強制的に召喚するというのは、相手が抵抗すれば膨大な魔力が必要となりそうだ。

 これまでエリシオンは魔族たちを直接殴りに行っていたので、おそらくそちらのほうが強制的に召喚するよりも楽なのだろう。


「そなたたちが探している者を直接呼び出せば手っ取り早いのであろうが、誰かわからぬ。ヨザルードの参謀に尋ねて誰かわかれば、その後呼び出してもよい」


「それは負担が大きいのではありませんか? 何だかおじいさま、少し元気がないような……」


 ブラントが心配そうに声をかける。

 確かに、エリシオンの様子がいつもと違う。

 いつもからは考えられないほど思慮深く、どこか体調でも悪いのだろうかと思わされる。

 すると、エリシオンは無言でしばし目を閉じていたが、ややあって大きく息を吐き出しながら目を開けた。


「実はな……ここのところ、衰えてきたような気がするのだ。魔王としての守りの力が弱まったと感じる。もしかしたら、儂も寿命が近いのかもしれぬな」

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