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【書籍化】死に戻り魔術姫は勇者より先に魔王を倒します ~前世から引き継いだチート魔術で未来を変え、新しい恋に生きる~  作者: 葵 すみれ
第1章 新たな始まり

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12.護衛獲得

「こんなところでどうしたの?」


 深くフードを被ったローブ姿の男が三人に近寄り、声をかけてきた。

 三人はそろって警戒するが、アナスタシアはその声に聞き覚えがあることに気づき、強張っていた体の力を抜く。


「……ブラント先輩?」


 アナスタシアが呼びかけるのと同時に、彼はフードを下ろす。そこには見慣れたブラントの彫像のように整った顔があり、不思議そうな表情を浮かべていた。

 それを見て、レジーナとホイルが固まる。


「……先輩には関係ねえっすよ。俺たち今ちょっと忙しいんで」


 だが、ホイルはすぐに立ち直ると、刺々しい声でブラントを拒絶しようとする。

 少し首を傾げたブラントだったが、すぐに何か思い当たったらしく、ぽんと手を叩く。


「ああ……きみは、昨日の威勢の良かった子か。この状況を見ると……少しは自分を省みることができたのかな」


「ちっ……」


 あからさまに不機嫌な顔をして舌打ちするホイルだが、ブラントは微笑ましいものを見るような眼差しを向けるだけだ。

 いたたまれないように、ホイルはそっぽを向く。


「私たち、ハンター登録しにきたんですけれど、魔術学院一年生は準六級からで、ダンジョンに行くには護衛を雇う必要があると言われて……」


「そうか、一年生だと【白火】もまだ使えないからね。あれが使えるようになると、むしろ引っ張りだこになるんだけれど」


 アナスタシアが説明すると、ブラントは納得した声で答える。

 【白火】とは、学院ダンジョンで授かることができる魔術だ。魔物に対して威力の高い攻撃魔術で、人間や動物相手に使っても効果はない。体内に魔石を持つ存在のみに害を与える。

 ラピス魔術学院が大陸最高の魔術学院で、他の追随を許さない理由のひとつに、この対魔物用魔術を授かれるダンジョンの存在がある。


 ちなみにアナスタシアは前回の人生において習得済みなので、今も使用可能だ。

 だが、今回の人生ではまだ学院ダンジョンに行ったことがないので、本来は使えるものではない。

 そのため、学院ダンジョンに入れるようになるまでは隠しておく必要がある。


「よかったら、俺が護衛やろうか?」


 思いがけない申し出がブラントから出てきた。

 アナスタシアとレジーナは、驚いてブラントを眺める。

 だが、ホイルは険悪に睨むだけだ。


「護衛は五級以上じゃないとなれねえの。先輩はお呼びじゃねえから」


「俺、四級ハンターだよ」


「えっ……?」


 突っかかるホイルだが、あっさり返ってきたブラントの答えに、言葉を失う。


「え……そんな……ブラント先輩が、どうして……」


 ブラントが現れてからずっと混乱して、まともに動けずにいるレジーナがようやく言葉を発した。だが、その内容はまとまりがない。


「俺は二年生の頃からハンター活動しているからね。休日に時々、小遣い稼ぎをしている程度だけれど。さすがにそういう休日ハンターじゃあ三級の壁は超えられなくて、四級止まりなんだ」


 それでもブラントはにこやかに答えた。

 レジーナは答えが返ってきたことによってさらに混乱したらしく、きょろきょろと視線をさまよわせて、挙動不審になっている。


「……四級といえば、十分一人前扱いされるレベルじゃねーか。三級なんて、専業でも簡単になれるもんじゃねえよ……」


 ホイルはぶつぶつと悔しそうに呟く。

 どうやら四級と三級の間に壁があるように、五級と四級の間にも隔たりがあるようだとアナスタシアは思う。


「三級になれば指名依頼もくることがあるし、本格的なハンターだよね。俺は別のところに就職予定だから、今のところ目指すつもりはないけれど」


「就職予定? もう決まってんのか。さっすが首席様は違うなー。だったら、こんなところに来てないで、就職準備してればよかったんじゃないの?」


 ブラントはもう就職が決まっているのかとびっくりするアナスタシアだったが、何か言うよりも早くにホイルが険のある物言いをする。


「就職準備は特にすることがないからね。それよりも実験用の魔石や素材集めたり、ちょっと小遣い稼ぎしたり、ダンジョンに潜るほうが有意義なんだ」


 しかし、ブラントは気を悪くしたような素ぶりはなく、平然と答える。


「……ホイル、変に突っかかるのはやめてくださらない? あなたは別に無理して行かなくてもよろしいんですのよ。わたくしとステイシィがブラント先輩にご一緒してもらえばよいだけですもの」


「ちっ……」


 ようやく気を持ち直したらしいレジーナが、ホイルに注意する。

 ホイルは舌打ちして不本意そうにそっぽを向くが、それ以上何かを言うことはなかった。


「今日はちょっと魔石を集めてこようと思って、日帰りできる近場のダンジョンに行くところだったんだ。ついでに素材集めの依頼でもないか見に来たら、アナスタシアさんたちを見かけてね。ダンジョンに行きたいなら、一緒に行こうか?」


 改めてアナスタシアに向き直ると、ブラントは再度提案してくる。


「そ……そうしてくださると、助かります。護衛料はいくらでしょうか?」


 アナスタシアにとっては、渡りに船だった。護衛料について尋ねると、ブラントは首を横に振る。

 しかしその顔は、報酬を断る無欲さとは程遠い、貪欲ともいえるような期待に満ちていた。


「お金はいらないよ。ただ、ダンジョンでアナスタシアさんの魔術を見せてほしいな。どんな魔術を使うのか、とても興味がある」

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