第五話 青
◇
ジョパン次郎は深く溜息をつきました。
「ドグラマグラ太郎。
また僕たち二人きりになつたねえ。
どこまでもどこまでも一緒にいこう。
僕は傍観者で評価者だ。
人を雑に評価したい。
そのためならば僕の時間なんか。
暇であれば幾らか浪費してもかまわない」
ドグラマグラ太郎は答えました。
「それが自己陶酔の答えかい。ジョパン次郎」
「星2。返事が想定範囲内。冒険心が足りない」
「星は何と交換できるの?」
「気分と交換できる」
「気分かあ。ジョパン次郎。僕そういうの好き」
「だろう」
「星1だとどんな気分と交換出来るの?」
「現実逃避に失敗」
「星2は?」
「想定の範囲内。珍しくも無い」
「星3は?」
「ねぎらい」
「ねぎらいかあ。ジョパン次郎」
「ねぎらいだよ。ドグラマグラ太郎」
「星4は?」
「順当。趣味嗜好の一致」
「星5は?」
「仕方ない」
「仕方ないのか。ジョパン次郎」
「仕方ないんだ。ドグラマグラ太郎」
「とりあえず窓の外の星を見ようよ」
「見飽きた。闇と星しか無いし」
「荒んだねえ。ジョパン次郎」
「だって本当もみんなも幸せも無いんだよ」
「そうかもねえ」
「自己犠牲すら尊く無い」
「わかる」
「荒ませてくれよ」
「3分くらいなら」
「そのあとは?」
「シーつて云う」
「それでも荒み続けたら?」
「不意に耳を叩く」
「こわ」
「窓の外の星。一緒に見よ。ジョパン次郎」
「うん」
「星が沢山あるねえ」
「うん」
「あれ全部僕の星だよ。ジョパン次郎」
「ずるくない?一個くらい僕にもくれよ」
「いいよ。どの星がいい」
ジョパン次郎は窓から顔を出しました。
「あれがいい。あの青い星」
「いいよ。ジョパン次郎。君にあげよう」
「・・・」
「どうしたの?」
「星を所有するとどうなるの?」
「星の色に寄る」
「青色は?」
「最初は気分が良くなるよ。ジョパン次郎」
「うん」
「最後は責任に押し潰され気が狂つて死ぬ」
「こわ」
「あれ『みんなの本当の幸せ』だからねえ」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「どうしたの。ジョパン次郎」
「『僕知らない』つて云つて良い?」
「いいよ」
「僕知らない」
「星1」
電車は揺れます。
窓の外には沢山の星が見えます。
ジョパン次郎は深く溜息をつきました。
◇