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第三話 皆



ジョパン次郎は深く溜息をつきました。


「ドグラマグラ太郎。


また僕たち二人きりになつたねえ。


どこまでもどこまでも一緒にいこう。


僕の身体は使い捨てだ。


みんなのほんとうの幸せになりたい。


そのためならば僕なんか。


僕の身体なんか百ぺん灼いてもかまわない」


ドグラマグラ太郎は答えました。


「ジョパン次郎の身体が百ぺん灼かれたら。


真面目に考えてみるよ。


灼く人がどんな気分になるかをね」


ジョパン次郎は困つてしまいました。


それで窓の方を見て云いました。


「みんなの本当の幸せは一體何だろう」 


ドグラマグラ太郎がはつきりと答えました。


「ジョパン次郎。みんなつて誰?」


「ドグラマグラ太郎。そこからか」


「ジョパン次郎。そこからだ」


「結構面倒だね」


「わかる」


「みんなはみんなだよ」


「死者は?」


「みんなに入る」


「遠い昔の死者は?」


「みんな」


「胎児は?」


「みんな」


「遠い先の未来の可能性としての命は?」


「みんな」


「君のおつかさんは?」


「みんな?」


「君は?」


「みんな?」


「僕は?」


「みんなかなあ?」


ジョパン次郎は深く溜息をつきました。


「みんながゲシュタルト崩壊してきた」


「わかる」


電車は揺れます。


「ジョパン次郎。ちよつと騙されてみないか?」


「騙し方次第かなあ」


「大丈夫。上手くやるから」


「本当?」


「本当さ」


「どうすればいいの?」


「こう云うだけさ。『おーい!みんな』」


「それだけ?」


「それだけ」


「おーい!みんな」


「・・・」


「誰も答えやしないじゃないか」


「これでみんなの不在証明が出来ただろう」


「みんな不在なのか」


「ああ。みんな不在さ」


「呼び続けたらどうなるの?」


「ああ。勿論疲れる。声も枯れる」


「わかりやすいねえ。僕そういうの好き」


ジョパン次郎は深く溜息をつきました。


「ドグラマグラ太郎。何の話だっけ」


「僕知らない」


電車は揺れます。


窓の外には沢山の星が見えます。


ジョパン次郎は深く溜息をつきました。



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