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第二話 級
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ジョパン次郎は深く溜息をつきました。
「ドグラマグラ太郎。
また僕たち二人きりになつたねえ。
どこまでもどこまでも一緒にいこう。
僕は薪だ。
みんなのほんとうの幸せになりたい。
そのためならば僕なんか。
僕の身体なんか百ぺん灼いてもかまわない」
ドグラマグラ太郎は答えました。
「ジョパン次郎の身体が百ぺん灼かれたら。
真面目に考えてみるよ。
そんな取引が成立するかどうかをね」
ジョパン次郎は困つてしまいました。
それで窓の方を見て云いました。
「みんなの本当の幸せは一體何だろう」
ドグラマグラ太郎がはつきりと答えました。
「初級者にはハードルが高すぎると思う」
「級あるんだ」
「勿論ある」
「初級者向けは?どうしたら昇級するの?」
「そういう質問が正に初級者」
「たまらないねえ」
「ああ。みんな最初は初級者さ」
「昇級したらどうなるの?」
「最高の気分になる」
「ああ。いいねえ。僕そういうの好き」
ジョパン次郎は深く溜息をつきました。
「ドグラマグラ太郎。何の話だっけ」
「僕知らない」
電車は揺れます。
窓の外には沢山の星が見えます。
ジョパン次郎は深く溜息をつきました。
◇