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第一話 味
◇
ジョパン次郎は深く溜息をつきました。
「ドグラマグラ太郎。
また僕たち二人きりになつたねえ。
どこまでもどこまでも一緒にいこう。
僕はあのさそりだ。
みんなの本当の幸せになりたい。
そのためならば僕なんか。
僕の身体なんか百ぺん灼いてもかまわない」
ドグラマグラ太郎は答えました。
「ジョパン次郎の身体が百ぺん灼かれたら。
真面目に考えてみるよ。
君のおつかさんがそれで幸せになるかどうかをね」
ジョパン次郎は困つてしまいました。
それで窓の方を見て云いました。
「みんなの本当の幸せは一體何だろう」
ドグラマグラ太郎がはつきりと答えました。
「甘いと思う」
「味あるんだ」
「勿論ある」
「あつたかい?つめたい?」
「揚げたアイスみたいに兼ね備えている」
「たまらないねえ」
「ああ。みんな満足さ」
「食べ続けたらどうなるの?」
「ああ。勿論太る。みんな後悔さ」
「ああ。いいねえ。僕そういうの好き」
ジョパン次郎は深く溜息をつきました。
「ドグラマグラ太郎。何の話だっけ」
「僕知らない」
電車は揺れます。
窓の外には沢山の星が見えます。
ジョパン次郎は深く溜息をつきました。
◇