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そのに。カツ丼と大福。

 

「レフィアちゃんこんにちわー」


「こやつ……また来おった」


「そりゃ来るよ。毎日来るって言ったでしょ?」


「こっちは毎日狂っていきそうじゃよ……」


 あれからと言うもの、村人Aは本当に毎日やって来た。

 そして下らない世間話ととてつもないセクハラをして帰っていく。


 気が狂うぞマジで……。


「ちゃんとご飯食べてる? なんか顔色悪いよ?」


「た、食べておるわい! 貴様に心配されずともわしは一人で生きていけるもん!」


 嘘じゃ。

 ここのところ魔王城の外に生えてる雑草を毟って食いつないでいる。


 ひもじい。


 この城のまわりには食べられる果実が成るような木もなければ、食料になるような動植物も居ない。


 今まではメイド達が用意してくれていたから気にした事などなかったが、なんと住みにくい場所じゃろうか……。


「心配だったから今日はご飯持ってきたんだけど……」


「な、なんじゃと!?」


「……でも俺が心配するような事無かったみたいだね。ちゃんと食べれてるなら良かったよ」



「……う、うむ……そう、じゃな」


 わしのバカバカ!

 本当はお腹減って死にそうなのに……。


 しかし、こやつの施しなど受けてしまったら最後じゃ。

 毎日食事を持ってくるようになってわしは生きるためにそれを食べるしかなくなって、そのうちいろいろ要求してくるようになっておぱんちゅ見せたりそれだけで済まずに色々してくるに違いない。


 そうなったらもう終わりじゃ。

 わしはこのド変態ロリペド野郎の嫁として生きて行かねばならなくなってしまう。


 なんとかして一人で生きて行く方法を見つけなければ……。


「本当に大丈夫? お腹空いてるなら食べる?」


「……ち、ちなみに何を持って来たのじゃ? わしは、その……お腹いっぱいなので食わないけれども? しかし何を持って来たのかは気になるのじゃ」


「えっとね、今日はカツ丼」


 なんで丼物持参するの? おかしくない?


「そっか、お腹いっぱいならしょうがないね。折れはまだ食べてなかったから俺がもらう事にするよ」


 目の前で村人Aが荷を解き始め、中から本当にカツ丼が出てきおった。


 しかもどういう訳か湯気まで出ていてこちらにまで香りが漂ってくる。


 ぐ、ぐぬぬぬ……負けぬ、わしは負けぬぞ……。



「うん、こりゃ美味い」


「そ、そんなにか?」


「何が?」


「そんなに美味いのかと聞いておるんじゃっ!!」


「美味いよ? 食べてみる?」


 だ、駄目じゃ……もう我慢できん。


「ひ、一口くらいなら……」


「でも今日はこれ一つしか持ってきてないから俺の食べかけになるけど……ま、大丈夫だよね? ほら、あーん」


「い、いるかそんな物ぉっ!!」


「あら残念。なら食べちゃうね」


「あ、あぁぁぁ……」


 美味そうに食いおって……。

 こやつ絶対いつか殺す。


「ふぅ……ごちそうさま。明日もまた来るけどご飯いる?」


 負けぬ……! 負けたら嫁、負けたら人生終わりっ!!


「い、いらん! いらぬぞ! いいか、絶対に持って来るなよ!?」


「そんなに……? そっか……」


 自分で言っておいて後悔が凄い。

 早く食料問題だけでもなんとかせねば……!


「じゃあ今日の所はそろそろ帰るね?

 また明日来るから」


「帰れ帰れっ!」


 カツ丼の残り香を漂わせた村人Aを追い返し、一人になった玉座で頭を抱える。


「かつどん……たべたかったなぁ……」


 ふと、村人Aが立っていた辺りに何かが落ちているのを見つけた。


「なんじゃ忘れ物か……? まったく……明日返せばよいか」


 いや、いやいやいや、わしどうしてしもうたんじゃ。

 この流れが当たり前になって常識がバグっておる。


 明日来るから?

 来んでいいわぼけぇ!!


「はぁ……はぁ……む、こ……これは……!!」


 透明な半透明の包み紙から透けて見える白くて丸い物。


 だ、大福……じゃとぉぉ!?



 あやつ、これを落とした事に気付かずに帰ってしもうた。


 これは……食べてもいいじゃろうか?

 いいよね?


 さすがにこれは食べてもセーフじゃろ??


 やっとまともな食い物が手に入ったぞ!!


 やった! やったやったぞ!


「いただきま……」


「そうだレフィアちゃん、言い忘れたんだけど……」


「落としもんじゃ持って帰れぇぇぇっ!!」


「うわっ! びっくりした……急に投げないでよ……あれ? 大福だ。落としてたんだね。食べても良かったのに」


「貴様が床に落としていった物なんぞ食えるかぁぁっ!!」


「そ、そっか。じゃあまた来るよ」


「さっさと帰れ!!」


 何しに来たんじゃあやつは!!

 クソがぁぁぁっ!!



 一人になった途端お腹が限界を迎えてぐぎゅるるる……と、情けない声をあげた。


「だいふく……たべたかったなぁ……」


「あ、そうそう、また言い忘れちゃった」


「帰れぇぇぇ!! 頼む……帰ってくれぇぇ……」


 ほんとわしもうだめかもしれない。

 泣いてしまう。情けなくて泣いてしまう。



 そう思ったのに、わしの体は涙に回す水分すら無くなってしまったかのように何も出てこない。


 せめて形だけでも泣いておこう。


「……ぴえん」






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