王女の物語
その青年は心を病んで、全身に憎悪を纏いつかせていた。一体何を抱え込んでいるのだろうと興味を惹かれて、私は腰元≪メイド≫に扮して彼にしょっちゅうちょっかいを出すようになった。
間近で見ると、憂いを帯びたその瞳は珍しい澄んだ青で、空を映したようだった。―空の色。私の焦がれて止まない自由の象徴。
どんなに手を伸ばしても完全には手に入らないと一度は諦めた自由。
けれど今やこの手が届く距離にある。
砂漠の国の姫君が恋した相手は一介の旅人だった。
間近で見ると、憂いを帯びたその瞳は珍しい澄んだ青で、空を映したようだった。―空の色。私の焦がれて止まない自由の象徴。
どんなに手を伸ばしても完全には手に入らないと一度は諦めた自由。
けれど今やこの手が届く距離にある。
砂漠の国の姫君が恋した相手は一介の旅人だった。
一
2019/10/27 08:16
(改)