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 ザクロのように弾けた人の頭を見た。

 毛ガニを食べるように腕を引き千切られ恐怖に発狂し痛みに失神する人を見た。

まるでグレープフルーツの実をほじくり出すように、開いたお腹から中身をほじくり出される人を見た。

 ゼリーのようにスプーンの上でぷるぷる震える目玉を。

 クッキーのようにむしり取られ、嚙り付かれる鼻や耳や歯や唇を。

 頭皮ごとむしり取られパスタのようにゆでられた髪の毛を。

 剝ぎ取った人の皮で人の肉と骨を巻いて揚げた肉巻きを。

 ありとあらゆる食人死、生きたまま食べられる人の絶望と恐怖と狂乱を知った。


 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。


 無駄だと知りつつも、何度も何度も血と肉にまみれた手で謝った。

 どれもこれも私という存在が巻き起こした悲劇だと、私は知っていたから。

 人を殺したくない。その気持ちは今でも変わらない。

 でも、世界には自分の気持ちだけじゃどうにもならない事が確かにあって。

 私のような嘘つきでは、いくら抗おうとも決して捻じ曲げる事のできない決定事項というものは確かに存在して。


 だから今日も私は設定された自分に惰性で抗い、誰かに命じられるまま惰性に孤独で、誰かが決めつけたように惰性に人々を狂乱と不幸のどん底へと突き落とす。

 抗っても抗っても、結局私にできるのは、誰かを食い物にして自分を守る事だけ。

 死んでしまおうと思っても、死ぬ勇気すら神様は私に与えてくれなかった。

 私は近づく者を不幸にする呪われた女。嘘と裏切りで人を地獄に突き落とす魔女。


 人の未来を(ルナテ)狂わせる者(ィック)


 そんな私に助けを求める資格なんてなくて、誰かに愛される資格なんてなくて、笑顔を浮かべる資格なんてなくて、幸福になる資格なんてものはある訳がない。 

 できるのは一つ、私が私に抗う事だけ。

 だから私は抗い続ける。最後の瞬間まで、絶対に。けれど、もしかすると私は最後の最後まで何も変わらないままなのかもしれない。


 それが私という女の立ち位置(ポジション)個性(キャラクター)で、役回り(キャラクター)だから。


 くそったれの神様が、私をそういう風に決めつけたから。


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