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舞い込んだ依頼

[執筆中]

執筆スタイルは、書きながら修正し、一話一万文字。ストーリーは組み立て済みで、それに沿って想像や偶然出来た描写を交えながら進めています。

「ほんっっとうに!すみませんでしたー!」


都市迷彩装備に身を包んだままの姿で、サファイアは両手を合わせて謝る。

それに同様の見た目をしたミカゲとヒスイが続いて頭を下げた。


現在、周囲の状況は混沌としている。


まず、ウンモ達が話し合いをしていた部屋には壁に大穴が空き、窓ガラスが吹き飛んでいる。

そして、白のバイザーとプロテクターをつけたボディーガードは床の上で伸びたままだ。

事務官らしき人物たちは、大慌てで各部署と連絡を取り合い右往左往としていた。



「『すみませんでしたー!』じゃねえだろ!!この馬鹿野郎が!!」



謝罪を口にするサファイア達に向かって、ウンモが怒鳴り散らす。

それに、ヒスイが顔を上げて言った。


「ごめんね。でも、どうしてもお父さんを助けたくて」

「おお、いいんだよヒスイ。お父さん、うれしいぞ」

「ほんと!ありがとう!!」

「てめぇじゃねえよ!!サファイア!!」



時間と場所を数時間前のジャンク屋に遡ろう。

事情を説明するミカゲの話を聞くうちに、サファイアとヒスイは理不尽さを覚えていた。


「そんな強制連行みたいな・・・」

「みたい、じゃなくて強制連行だよ」

「俺もどうしていいか分からなくて。車が最後に止まった場所だけ確認して、そのまま走って帰ってきたんだ。すまない」

「ミカゲのせいじゃないよ」


ヒスイがミカゲを慰めるのを見ながら、サファイアは顎に手を当てて思案する。


しかし政府が住民を連れ去るということ自体は、やはり違和感のある話だと感じた。

知っての通りウンモはただのジャンク屋だ。薄暗いところがないことは、自分が良く知っている。


厄介事に巻き込まれたのか。はたまた、政府に目をつけられたのか。

いずれにしてもこのまま考えていても仕方がない。


「となれば、行くしかないでしょ」


考えても分からないのなら、行動あるのみだ。

そう考えてサファイアがぽつりと口にした言葉が、ヒスイとミカゲにも火をつけた。


「そ、そっか」

「そうだな。ウンモの旦那を助けに行こう」


行くのならば早いに越したことはない。

それから彼らは、僅かな時間で装備を整えウンモが話し合いをしていた施設に突入を仕掛けたのだ。


実は、急な流れにサファイアも当初は疑問を抱いていた。

けれど、到着する頃には彼女もエンジン全開になっていた。



「んで、その結果がこれってわけか・・・ミカゲ、お前もいたってのに全く」

「いや旦那。さすがにあの状況なら勘違いもするって!」

「言われてみれば・・・まあ」


ジャンク屋のメンバーがそんなやり取りをしていると、スーツについた埃を払いながらポールが近づいてきた。


「やれやれ。賑やかでなによりだ。君のところはいつもこうなのかい?」

「んなわけねぇだろ。たまにだ」

「たまになるだけでも十分に驚きだよ。で、この際なので話の続きをしたいわけだが場所を移そう。君のところの全員が揃っているなら話が早い」


イレギュラーな事態など何もなかったかのような様子で告げたその言葉で、別室で話し合いを続けることとなった。


「あらためて名乗らせてもらうが僕はポールという」

「はじめまして。私はサファイア」

「ミカゲだ」

「ヒスイです」


3人と丁寧な挨拶を交わし、ポールは話を続ける。

移動した室内には、ウンモと自警団の二人もついてきていた。


「まず、ウンモを勝手に連れてきてしまってすまなかった。ただ、君たちにお願いがあってね」

「お願い?」


ヒスイが聞き返したのを皮切りに、ポールはウンモにした話と同じ話をジャンク屋の3人に話した。


「というわけで、調査を依頼したいというわけだ」

「んで、俺は今のところ受けるつもりでいる。お前ら異論はあるか?」


ウンモの言葉に、全員が首を振る。

内容的にも納得し、何よりジャンク屋の主人であるウンモが決めたことに異論を述べたりはしなかった。


「決まりだ。この依頼、受けさせてもらう」

「良い返事が聞けて何よりだ。で、我々が先程受けた損害についてなんだが―」

「え?」


見るとポールのにこやかな表情に隠されて気がつかなかったが、彼の笑顔には青筋が立っていた。

別段、許容してくれるわけでもなんでも無かったようだ。


その後、厳重注意を受けたのちに解放された面々は徒歩でジャンク屋に戻ることとなった。

都市内とはいえ、車両で移動した距離は短くはないが帰れないというほどでもない。

幸い建物を出た頃には、既に雨は上がっており雲の隙間からやや西に傾いた陽光が差し込んでいた。


雨上がりの都市に、太陽の光が反射している。

空気は降っていた雨のせいか、やはり少し湿度を感じさせた。


サファイア達が今歩いている通りは、都市中央部に整えられた数少ない舗装しなおされた道路で、都市国家の中央を貫いている。

きちんと整備されていることや、軍や自警団の施設があることから安全だ。


そのため、人通りも多い。


行商が勝手に出している露店も並んでおり、中々に賑やかだ。

主に飲食物や燃料、銃器などを取り扱ったものが殆どだ。

たまに、旧世代の書籍を取り扱っている店などもある。


サファイア達は、そんな大通りを会話しながら歩いている。


「何よ!あたしだけタダ働きなんて!」


周囲の人目も気にせず、サファイアはぼやいた。



「いや、お前が無茶苦茶やったせいだろうが。それに報酬は他の3人分を全員で山分けだつっただろ」

「まあ普通に考えて、弁償させられなかっただけマシだな」


最初は怒っていたウンモだったが、さすがに自分を助けるつもりでやったことだったこともあり今はなりをひそめていた。

ミカゲもウンモの言葉に続いてサファイアをなだめにかかった。


それに、納得したようなしていないような微妙な表情でサファイアは続ける。


「大体さ、ウンモもウンモでなんで話受けたの?受けるって言ったから何も言わなかったけど」

「悪い話には聞こえなかったからな。実際、あいつらの金払いだけは信用出来る」

「そりゃそうなんだけどさ・・・」


ふとミカゲはその表情に影が差したことに気がついた。

自分一人分の報酬が減ったことが原因で、イラついているのかと思ったがそれだけでもないのかもしれない。


「どうしたんだよ。やけに引っ張るな」


それに、難しそうな表情でミカゲの方を見てから彼女は答えた。


「あのさ。あたし、こう見えても傭兵だったの知ってるよね。だから、政府の連中がどんな感じなのかも知ってる」

「ああ。それがどうした?」


それから間を置いて、彼女は続ける。


「確かに貰いはいい。けど、あいつらはどこまでも利用してくる。

 都市国家の政府は、みんなどこもそうだった。他の都市との競争や資源確保のためなら何でもやる。

 効率がいいのも、生き残るために仕方がないのも分かるけど。気軽に近づくべきじゃない」


その言葉を聞いて、ヒスイははっとしてサファイアの方を見る。

彼女の過去の話を思い出したのだ。


そこで、ただ不機嫌であるだけにしか見えなかった表情に真剣な色が含まれていることに皆が気がついた。

それに、どうしたものかとミカゲとウンモが顔を見あわせたが言葉は出なかった。


しばらく全員が、無言で道なりを進むこととなった。


だんだんと通りの両脇に広がっていた露店がなくなり、それに合わせて人通りも少なくなってくる。

建物を出た頃からさらに陽は傾いており、既に夕日と呼んでよいものとなっていた。

高層ビル群の名残と、照らす夕日が都市に陰影を作り始めている。


「サファイアは、心配して言ってくれてるんだよね?」


ちょうど、露店の切れ目に差し掛かった時にヒスイがサファイアに言葉をかけた。

その言葉に、先頭を歩いていたサファイアは後ろを歩いていた三人に振り返る。


夕日が照らし、彼女の緋色の髪を燃えるような紅に染め上げていた。


「そりゃそうでしょ。そうじゃなかったら今日だってここまでしてないわよ」

「はは。まさかお前に心配される日が来るとはな」

「それどういう意味よ」


腰に手を当てて、当たり前のことに今さらなんだという態度で言う彼女に、ウンモが茶化して返し空気が柔らかくなった。


思い返してみれば確かにそうだ。

サファイアはよく無茶をするが、それは基本的にはジャンク屋の面子である自分達を助ける場面ばかりだ。重要な局面ではいつも彼女は体を張ってでも彼らを助けている。

無論、今日のように空回りに終わることも多いのだが。


「まあ、お前の気持ちはありがたいし分からないでもねえんだがな・・・」


そんな彼女に、ウンモは声のトーンを少し落としてそうつぶやいた。

そのまま真剣な調子で続きを口にする。


「正直言うとな。俺だって馬鹿じゃねえし、何よりかれこれ長い付き合いだ。

 お前がどう考えるとか、政府の奴らにしたって根っこから信用しちゃならねえくらいは分かってるさ」

「じゃ、なんで受けたの?」

「身も蓋もねえ話だがもちろん報酬だ。そんな目するんじゃねえ。欲目が出たとかそんなんじゃねえよ」


そこで一旦途切れたウンモの言葉に、聞いていた三人は疑問を抱いた。

報酬の大きさが決め手だというのに、欲目ではないというウンモの言葉に納得していないようだ。


そんな三人の様子を確認してから、夕日の方に視線を向けながらウンモは続ける。


「ここに来てからもう長いな。助けることもあったし助けられる場面もあった。

 感傷に浸るでもねえが、しょっぱなからあれこれあって、今がある。

 別に、なんていうことはねえ。ありがてえ話だと思う。だが」

「だが?」

「だがな、いつまでこれを続ける?次を考えなくちゃならねえ。勿論、今すぐじゃねえ。

 だけど、いつかは辞めなくちゃならねえ。加えて、俺から見てお前らは若い。若すぎるぐらいにな。

 お前らの生い立ちとか事情とか一切突っ込むつもりはねえが、これだけは言わせてもらう。

 お前らは金の有難みが分かってねえ。これからも生きてくんならこれも絶対の話だ」

「旦那・・・」


ウンモの話には、説得力があった。

実際、生計を立てられない者の末路は言わずと知れたことだ。


それは、サファイア達もよく知っていた。

生きて、食べていられること。

今の世界では、これに勝る幸福などないのだから。


そして、その方法は通常は限られている。


「だから、この辺りで山を当てておくのも手なんじゃねえかと思ってな。

 それにお前にしても、もういいだろ?」


最後にサファイアの方をしっかりと見据えて、ウンモは言った。


「お前が引き摺ってる質じゃねえのは分かってる。だけど引っ張られてるようにも俺には見える。

 実際、今のその反応にしたって過去の出来事から来たもんだろ。

 もうそろそろ、新しい生き方してもいいんじゃねえか」

「それは・・・」


その言葉に、彼女は視線を落とす。

ウンモの言葉に、サファイアは戸惑いを覚えていた。


「まあ、すぐに答えを出せとは言わねえよ」


そう言って、ウンモは再び歩き始める。

すれ違いざまに、サファイアの肩にぽんと手を置いた。


それに顔を上げて、サファイアも歩き始めた。

ヒスイやミカゲもそれに続く。


サファイアには、ウンモの言う新しい生き方というものが、ピンとは来なかった。

それでも、彼女の琴線に響くだけの言葉だった。


留守番中にヒスイに話した通り、彼女の国は戦争で無くなり、それが切欠で強化人間となった。

復讐に時間を費やし、そして最後にはそれをつまらないと感じて逃亡した。

けれど逃げたところで争いごとや、ひいては自身の生存という問題から遠ざかることはなかった。


皮肉なことに、彼女が最後につまらないと断じた復讐のために身に着けた力が、彼女を最も助けた。


傭兵だったからこそ彼女は生き延びてこれたのだ。

それが復讐心から来たものであっても、彼女は戦おうとしたからこそ生き残った。

けれど、彼女はそれを決して心地よいとは感じていない。


むしろ、気分の悪さ。本当に、つまらないことだと本心からそう思っている。


引っ張られている。そう、私は引っ張られているのかもしれない。

過去の亡霊とでも、なんとでも呼べばいい。


自分自身の生い立ちと、そこにかつてあった感情。

それらに、引っ張られている。



じゃあ私はどうしたい?私は、何を求めて生きればいいの?



そうだ、私は確かに選んできた。だけど、それは必要だったからだ。



両親を失った。自分が保てなかった。だから復讐を選んだ。

復讐をするために必要だったから、強化人間になった。

逃亡後は、必要だったから傭兵になった。


結局、全てが必要だったから選択した。

後悔はしていない。自分で選んだから。



だけど、これからは?

私が欲しいものは何?



彼女は気がついていた。

必要だから選択することと、自分が願うから選択することとの違いを。




私は―




彼女は沈んでいく夕陽を眺めながら必死に考えた。

しかしそれは、ジャンク屋に帰る道のりの間だけでは当然のように見つからなかった。



ジャンク屋に帰りついた頃には、陽はとっぷりと暮れていた。

歩いて帰った面々は、その疲労からしばらく休んでから夕食をとることにしたのだった。


サファイアは今、自室で休んでいる。

食事の当番は4人で隔週で交代となっているので、呼ばれるまで待っているのだ。


ちなみにウンモのジャンク屋は1階建てで、店舗部分と住居部分に分かれている。

奥と表で二分しており、奥側はちょうど四角形を4等分した形だ。


一番左奥が、サファイアに割り当てられた部屋だ。


「・・・寝れない」


サファイアは、ベッドに仰向けになって天井を見つめながら言った。

一休みするつもりだったが、まったく休めていない。


「新しい生き方ね」


ため息とともに、目を瞑る。


だめだ。さっぱり思い浮かばない。

今とは、違う生き方。

傭兵でも、ジャンク屋でもない自分。

そんなものを、サファイアは知らない。


それでも、ウンモの言葉は彼女に重く響いていた。


『―もうそろそろ、新しい生き方してもいいんじゃねえか』


言っていることの意味は分かっている。


「いっそ、ミカゲと結婚してみるかな」


そうだ。結婚すれば変わるかもしれない。

それで、子供を産んで育てるのだ。

それも悪くないかもしれない。


「いや、さすがにそれはないわ」


しかし口に出した後、彼女は否定した。

やけくそ気味に結婚するのもどうなのかというのもあるし、母親になる準備などそもそも皆無だ。


そんなことを考えていると、当の本人から声がかかった。

ミカゲはいつの間に、サファイアの部屋に入り込みベッドに腰かけていた。


「ん?僕がどうかしたのか?」

「!?」


慌てて跳び起きて、ベッドの上で構える。

年頃の女というと色気を想像するかもしれないが、ベッドの上で構えるサファイアのそれは、完全に子供が寝室で遊ぶそれだ。


「また考えすぎてんじゃないのかと思って」

「いや。まあ。確かに考えてはいたんだけど・・・ノックくらいしてよ」

「したんだが、反応がなくてな」


反応が返ってこなかったから入ったという。

それもそれで、何かおかしい気がしたが触れないでおいた。


直前の思考に引っ張られているためか、サファイアの態度はぎこちない。

それに、疑問符を浮かべながらミカゲは続けた。


「ウンモの旦那も言い過ぎだ。そう重いものでもないだろ」


一見、軽々しい言葉を口にしているように感じるかもしれないがそうではない。


ミカゲも、サファイアの過去についてはよく知っている。

そして、それを言っているミカゲの生い立ち自体もサファイアと遜色のないほど過酷なものだった。


それはサファイアもよく分かっている。

だから怒りもせずに、聞き返した。


「重いもんでもないって?」

「ん?ああ。言葉通りの意味だ。そもそもな、考えても始まらないだろ。将来的に何がしたいとか。お前、あるわけじゃねえんだろ?」

「ぐ」


ミカゲの言葉に、サファイアは言葉が詰まる。

加えて心中を言い当てられ、ムッとしたのでそのまま次の言葉を言い放った。


「じゃあ、あんたはどうするの?」


それに、笑ってミカゲは返した。


「わかんねえ」

「はあ!?」

「いや、落ち着け。睨むな怖い」


真面目な話が返ってくると期待したところに、分からないと返されふざけているのかと感じた。

苦笑いを浮かべながら、ミカゲは続ける。


「まったく。いや、睨むな。言いたいことはなんだ。そもそも、考え込んだってそんなもん見つからねえよってことだ」

「・・・どういうこと?」

「今考えて出てこないんなら、今のままどれだけ考えたところで、何も出てこねえよ。なら、時間かけて見つけりゃいんじゃねえか?って言いたかった」


胡乱な目つきになったサファイアに慌てつつ、彼は早口に語った。

それに、サファイアは神妙な顔つきになった。


たしかに、言われてみればそうだ。

分からない状態で、どれだけ考え続けたところで無駄かもしれない。


後からだって、見つかるかもしれない。

むしろ悩んで過ごすより、そうしたものを見落とさないようにその時を過ごすことの方が大事だろう。


「あんたって、もしかして天才?」

「何かよくわからんが、褒めてくれてありがとう」


ふと、そこで会話が途切れる。

顔を見あわせて、お互いに違和感に気がつく。


違う。そうじゃない。


「で、何の用?あたしの部屋に忍び込むなんて」

「変な言い方をするな。流れで忘れてたがこっちがメインだった。飯が出来た」


夕食が出来たようだ。


夕食は、ホワイトシチューだった。見た目は完全にブラウンシチューなのだが。

ヒスイが焦がしたらしい。


大口に切ったジャガイモや、ニンジン。

その他の具材が、程よいバランスで煮込まれており、それに口当たりの良いスープが良く絡んでいる。


独特のコクのある、塩から味がついており舌を楽しませてくれる。

長時間、外を歩いて冷えていた体を温めるのにも丁度良いメニューだ。

見た目はともかく、味は良い。


そして、食事中の時間はもっぱら明日以降の作戦会議に割り当てられていた。


「―でだ、情報屋を使えば一気に見つかりそうではあるが、俺らが何かの目的で動きまくってるのが周りに丸わかりになっちまうってわけだ。

 うちは、お前がいるせいである程度には名前が通っちまってるし、目立ってる」


スプーンを、サファイアに向けながらウンモは言った。


「だけど、しらみつぶしに行くなんて出来ないと思うけど。さすがに偶然出くわすのを目的にして、都市内を走り回るのもおかしいでしょ」

「それが悩みどころなんだ。そもそもの話、消えた人物の話はあるが、消えたところを目撃した奴は一人もいねえ」

「はいはい!それ、根本的に詰んでると思うんだけど」


それに、サファイアとヒスイが意見を返した。

ミカゲもそれに続く。


「旦那、今のところどんな情報持ってんの?」

「えー。名前、職業、消えたことが分かった大体の日付、最後の目撃情報だ」


ふむ。とミカゲが考え込む様子を見せた。


「まあありきたりだけど、とりあえずそれ地図に重ねて見てみりゃなんか分かるんじゃねえかな。これ見た目の割にはうまいよな」


そういって、シチューの残りに口をつけた。


「それだ。とりあえず情報整理してからか。他になんかあるか?」

「あたしは他の件と絡んでるとかありそうだから、変わったことがないか聞いて回りたいんだけど」


サファイアが手を上げて、主張した。

それに、ウンモが頭に手を当てて考える。


「あー・・・。さっきも言ったと思うが、お前目立つからな」


前述の通り、サファイアはこの周辺ではそこそこ有名だ。

本人の自覚は全くないが、それなりの人気がある。


腕利きの傭兵で、ウンモの視点から見ても、十分に容姿が整っていると言える。

また、それ以上に本人の雑ではあるが明るさのある性格と、時折見せる優しさが人を呼ぶのだろう。


そのため時折、変な気を起こした連中が返り討ちに会う話もしょっちゅう聞く。主に、本人の口から。


「フード被って顔隠して出歩いたら、いけるんじゃ」

「どこの不審人物だ。それに、知り合いにゃ一発でバレるだろうが。いや、いい。普通に出回ってくれ」

「あれ?いいの?じゃ、街出歩いて、気になるところ何か所か行ってみるよ」


考えてみると、目立っているのはサファイア本人だけだ。

ウンモは陽動の意味も兼ねて目立ってもらう方が逆にいいのかもしれないと思った。


「気ぃつけるんだぞ」

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