6 できるかな
話のはしょり方がちょっとだけ上達してきたのかも?
どうなんでしょう・・・
バーン・・・バーン・・・バーン・・・
鉄板を叩いたような音がする。
目を覚まして外に出て何事かと音のする方を見る。
家の山側少し先が防壁になるのだが、その近くでかなり大きい鉄板を村長(仮)が叩いてる。
ような、ではなくまんまだった・・・
「おはよう御座います村長(仮)、これは?」
「朝の目覚ましの鐘・・・の代わりさ。鐘はまだ予算が取れない」
「鳴らす時間はなにが基準で?」
「早く起きた者が夜が明けてると思ったら鳴らすことになっている」
アバウトだなおい。
「皆で飲んで夕方に鳴った時もあるぞ」
「町とはずいぶん違いますね」
「町は光の女神の教会が鐘を打っているからな」
日時計や朝と夜の区切りから光の女神は時も権限に含まれている。
時間の移動は別の神の権限なのでできない。
時と言うか時計の神だな・・・
今日は特に仕事をせずに生活の準備を整えて、と言われたのだが・・・
役所の裏にしか無い井戸に行っても水を汲める物も無い。
何でも屋で買おうとしても財布の中身が無い。
食べ物は支給されるので困らないがせめて水は確保したい。
仕方無い、簡単な物を自作するか。
旅の道中で使っていた水筒に水を汲み、空と大地亭で支給の朝御飯を頂いた後、俺は山に素材取りに、奥さんは洗濯に行きました。
マストさんを見つけ切って良い木等を聞く。
この辺りは全部切り倒すので回りに声をかければ良いらしい。
ついでに使えそうな端材をもらう。
中に空洞がある直径50cmの売り物にならない木があるのはラッキーだ。
まずは枝から30cm程の棒状の物をナイフで削り出す。
持ってきた手斧の頭の部分を持ち手側から通して・・・よし太さピッタリでいい場所で動かなくなる。
三角の止め木を石で打ち込んで完成。
同じ要領で木を伐採する大きめの斧の柄も作る。
これが道中とんでもなく重かったのだが前の村で餞別に貰ったものだ、ありがたく使わせてもらおう。
道具が揃ったところで空洞の木に向かう。
手斧の裏側でコンコンと叩いて行き、たぶんここまで空洞だと当たりをつけてその少し先で切断する。
大きい斧だと割れてしまうことが多いので手斧で地道に。
運良く空洞が無い部分で切れたのでそこから50cm位空洞側を切る。
手斧でも油断すると割れてしまうので慎重に慎重に・・・
よし、桶状にはなった。
ここから手斧とナイフで根気よく中の部分を整形していく。
俺の腕では5cm位の厚みが限界かな?
後はこの道具・・・日本だと園芸用品に良くある三角の刃が直角についてるあれ、柄は短くて太いが・・・の出番だ。
日本語で知らないので変換できないし、現地の言葉だと文字で表記できない。
無理矢理意訳すると中削り?
これで地道に桶の壁面と底を綺麗にしていく。
「ほお、ずいぶん器用だな」
「雨の日は事故が多くて木を切るのを禁止されてたんでよく作ってたんですよ。売り物になる腕はないですけど。」
「俺は雨の日は寝てたぞ」
マストさんは笑う。
「俺はやり方わからんが良ければ暇な時にでもみんなに教えてくれんか?」
「この中削りがボロボロなんで手に入ったらみんなでやりますか」
「じゃあ夕飯の時に何でも屋に持って行こう」
雨の日の産業としては良いかもしれない。
外側の木の皮を剥いで縁の部分を綺麗にして完成。
あぁ、教科書で見た江戸時代のカンナの小さい版だと今気づいた。
みんなが順番に中を触ったりしているが・・・表面は怪我をする引っ掛かりはないが平らに出来ない下手くそなんだ、程々にして欲しい。
気がつくともうすぐ夕方だ、集中して時間がわからなかった。
桶一つで一日が終わってしまった・・・
手斧とカンナを桶に入れ斧は手に持ってさあ帰ろうと立ち上がった。
「おいおい、あれを忘れてるぜ」
指差す方には・・・あ、葉っぱっすか。
桶にゴッソリ入れられて帰宅。
いいか、どうせ一度水で洗うんだし。
今日はまず桶を洗うついでに風呂で体も洗い、何でも屋でカンナを3つほど発注しそのまま夕食、向かいの井戸で水を汲み家へ。
できたと思っていた桶がまだ未完成なのに気づく。
取っ手が無いから抱えて帰るしかない。
何でも屋で村長(仮)も夕飯を取ってたのでカンナを経費で買って貰うことの了承を得た。
村長(仮)、話わかるー、と誰かが言っていたのでもうみんなに広まったなと確信した。
気になったのは冒険者組を全然見かけない事。
今日はキャナルも見てないが何かあったのだろうか?
翌日、昼過ぎに村長が呼びに来た。
町役場のお偉いさん達が馬車で到着したので顔合わせして欲しいらしい。
桶の横に穴を開ける作業の途中だったが同行する。
役場ではなく空と大地の何でも屋で食事中だったので飲み物だけお付き合いする。
町役場の頭が寂しいおじさんと町のギルドのサブマスターらしい。
そして初対面の同僚、同じ冒険者の舵取りをするレイナール、皆からは先輩と呼ばれているらしい。
先輩は村にずっといるのだが見かけなかったな・・・
明日冒険者の面接をするための段取りを・・・5分もかからずに終わる。
そこからの雑談が長いこと長いこと・・・
「そうだ、冒険者達に明日面接だと伝えないと」
にげる、を選択。
「実はずっと面接の練習をしていて私が指導しているので私が行ってきます」
先輩に回り込まれた。
「頑張っていますのが付け焼き刃なので、多少の粗相はご容赦ください」
一礼して逃げ切った先輩、こっそり窓から覗いて笑顔と親指を立てて行く。
今度は新人の面接時の失敗談に花を咲かすお偉方。
奥さんが夕飯時に探しに来てくれて食事を食べた後やっと解放された。
そして桶は・・・取っ手にするための蔦がこの時間じゃ探せないので完成しなかった・・・
やっと説明だらけのが終わって最初のプロットに入れるっ!!
だが次はやりたくないステータス画面だらけになる事実・・・
こんなんで文字数稼ぎたくないから表記法をちょっと考えてます。
前回の小ネタ:ちゃんとトレーとコップの行方は書いてなかったよね?
濡れたタオルで頭冷やして寝たけど大丈夫だよね?