36 燃えろ狼
ガルド視点の部分は少し前の時間からとなります。
色々考えて戦っていたんですね・・
(注意)口調は違いますが、暫くガルドの視点です。
なんとか動きは目で追えるのだが、だからと言って避けられる物じゃない。
斧の本体の部分に触るのを嫌っているのは固いから、ではなさそうだ。
先程奴の攻撃をたまたま斧で受けたが、拳を痛めたのか気にしている様子が見えた。
斧が直撃すればダメージを与えられるだろうが、その一撃で倒す自信は無い。
そして斧を振り切った無防備な俺の顔や首を狙われて終わりだろう。
兎に角なにか切っ掛けが有るまでは守りに集中するしかない。
くっ!あえて攻撃を鎧で受けて懐に入り、斧を構えたまま体ごとぶつかる戦法も最初は当たったものの2回目は当たりが浅く、今は完全に交わされた・・・
「キカネエヨソンナモン」
こいつ、喋れるって事はおつむも人並みか・・・
しかしその程度の挑発に乗る程俺は短気じゃない。
じゃなきゃとっくに始末されてるさ。
今度は一歩では届かない遠い間合いの時に、相手が踏み出した瞬間に俺も前に僅かに踏み出す。
警戒してすぐ離脱できる軽い攻撃に変わる。
首や頭狙いで無かったら、刃に近い方の左手だけで押して軽く切り傷でも付けてやるつもりだったがとことん警戒心が強いな。
ん、なにか向こうで動きがあったな・・・
通路の落ちる音が
「ぐっ!」
一瞬気が逸れた瞬間に鎧の上から蹴りを食らった・・・
「ソッチノアシオカシイダロ」
トロールにやられて治りきっていない左足を・・・
倒れずになんとか踏ん張るが右肩にも一撃食らう。
首狙いをずらして肩に食らったんだ、痛かろうが首が飛ぶよりましだ。
突然間合いを取り、耳を押さえる狼男。
「ナンダコノオトハ!」
チャンスと近寄ったがさらに距離を取られる。
全く追い付かん・・・
横から、誰か鎧の音が走ってくる。
今度は目を離さず油断せず。
「ガルド、加勢するぜ」
「ベイリー、助かったわい。わしじゃ全く追い付かんわ」
ベイリーと挟み撃ちにしたい所だが、奴の動きが早すぎてすぐに横に逃げられてしまう。
ベイリーの武器は見た目は酷いが軽そうで、振る早さは小剣並みに早い。
だがベイリーも鎧が重く、移動速度が致命的に遅い。
追いかけっこにもならない。
「はいおまたせっ」
3人目の、唯一攻撃が当てられそうな者の声を聞いた。
キャナルの後ろを少し離れて俺は追いかけていた。
手には一枚の銀貨を持って。
「はいおまたせっ」
文字通り横槍を入れて、狼男を通路から距離を取らせる。
足音で気づかれるよな・・・
キャナルの移動速度と槍の突きの早さは、素早い狼男と言えど本気にならなければ逃げられない。
そして上手く追い立ててガルドとベイリーで包囲して、逃げづらい形に持って行く。
キャナルの動きに合わせて移動だけしている2人だが、暫くすると慣れてきて上手く行く先へと回り込めるようになってきた。
キャナルの攻撃は追い込むため狙いを身体の中心線から外して、追い込みたい側に逃げるようにコントロールしているようだ。
俺はあるタイミングを待つ。
俺から見て、右にベイリー、左にガルド、上手く回り込んで奥側にキャナル。
よし、このタイミングだ。
「おい狼男っ!」
足元に魔法の矢を打ち込んでこちらに意識を向けさせる。
「ソノテイドノマホウデハオレニハキカン」
わかってる・・・レベル低くて一本だけだし・・・
「降伏しないならこれで止めを指す」
持っているコインを見せつける。
「ククク、ヤッテミロヨ」
「このコインが俺の手元に落ちたら終わりだよ」
呪文を唱え始める。
その間、包囲から逃げられないように威嚇する3人。
「行くぞっ!」
コインを指で弾く。
コインは真上に飛び・・・
狼男は、俺に向かって走り出す。
コインが重力に引かれて下に落ち始める。
「グガッ!」
踏み出して次の一歩を踏み出した瞬間、狼男は・・・
コケた。
「今だっ!」
ベイリーが尾ごと腰を金属バットで・・・いやこん棒で骨ごと砕く。
次いでキャナルがジャンプで自重を乗せて背中から胸を槍で貫く。
「グアァァァァァァァァァ!」
ゆっくり近づいたガルドがゆっくり振りかぶり・・・
あ、また角度がずれてる・・・
グシャリと頭を粉々に粉砕する。
そして足元の弾き損なった銀貨を拾う俺。
「ゲーセンのコインで練習したけど難しいんだよな・・・これ」
もう残り数匹だったので、弓隊に射撃してもらった。
・・・誰だレドが投げようとした狼の眉間に撃った奴は・・・ってバレバレだろ・・・
生物感知でも下段以外の狼は見当たらない。
「なぁ、バサ?」
「なんだベイリー?」
「ガルドが凄く頑張って頑張って、終わりがこれ?」
「俺にも見せ場があったって良いじゃないか」
「で、見せ場がこれか?」
「ベイリーは知らないだろうがな・・・俺も物凄い犠牲を払ってるんだぞ?」
「でもガルドもキャナルも・・・」
キャナルは槍を引き抜いた時に先端が外れたようで、ただの長い棒を持ったまま佇んでいた。
ガルドは・・・
「わしが折角緊張感ある戦いをして・・・納得行くかあぁぁ!」
「エリース、ガルドが落ち込んでるから撫でて慰めてやってくれー」
「・・・お前は・・・」
疲れ果てて座り込むガルド。
その視線の先には・・・
とりもちに足を取られたままの、頭の潰された狼男が転がっていた。
それをエリスの影が横切り、ガルドに襲いかかった。
「今日はわし、もうどうでもいいわい・・・」
時間はもう深夜に近いだろう。
上段の縄ばしごの穴を塞ぎ、更に上段の縁の部分を少し高くして落ちないようにして交代で睡眠を取った。
前半は落とし役のベイリーと弓役のギルガさん、と感知係の俺。
後半はガルドとエリスと敵発見能力の高い先輩。
「なんかメチャメチャだったなぁ」
ギルガさんが笑いながら喋り始める。
「それで終わりがアレってのが・・・」
ベイリー、そんなにショックだったのか?
「いやあれは痛快だったぞ」
「そりゃ、傍から見てる分にはそうだろうけど・・・」
「あれはキャナルの功績が大きいな」
ギルガさんはあの動きをしっかり見てたようだ。
「俺との打ち合わせ通りですが、あの形で囲めたキャナルのお手柄ですね」
「もしバサの方に来なかったらどうなってたんだ?」
ベイリーはたまたま上手く行ったと思っているようだ。
「コインを弾くのを待っていた時点で奴の敗けだよ。行くぞと声を掛ける前に魔法は発動していたから」
「あれ、声と同時じゃなかったのか?」
ベイリーは魔法使えないからそう思っちゃうんだよなぁ・・・
「実は魔法を発動させる時に掛け声とか必要無いんだ。攻撃魔法とか気合いを入れたい時とか思わず何か言うけど、飛行の時何も言って無い時が多いし、レドの炎の嵐も手はかざすけど無言だったろ?」
「・・・ああ、確かに言ってない時もあるな」
「それで攻撃魔法が苦手でガルドが手こずる程の腕の持ち主ならきっと、発動する瞬間の口の動きで動き出すと。奴は口の動きに集中して足元の違和感を見逃したんだ」
「じゃぁ、銀貨は全く関係無かったのか?」
「いやあんな物でも奴の弱点だから、何されるか判らない分それにも気を回すしか無かった。十分嫌な囮だよ」
「小さいけど高度な読み合いで大当たりした結果がああなった訳だ」
大笑いを始めるギルガさん、とそれにつられて吠える狼達。
「まぁ、事前に何が居るか判っていればそれほど苦戦しない相手なんだがな。そういえば昔こんな事があって・・・」
誰か、うっさいギルガさんと笑い声にキャンキャン吠える狼達を何とかして下さい・・・
翌日
狼達は狼男になる伝染病を持っている可能性があるため、レドリックの炎の嵐の魔法で狼男と共に焼却処分された。
この場所は再利用できるかもしれないのでそのまま放置される。
女性陣とベンさんの強い要望と反対する者が居なかったため、川で水浴びしてから町へと戻り始めた。
狼男がほとんどの狼を従えていたようで、周囲には狼は見当たらない。
「新人、どうだった今回は?」
俺達は声を掛けづらいので、あの時一番関係の薄かったギルガさんが聞いてくれた。
「俺だって腕とか鎧無い所有るから死ぬ所だったぞ!」
「だよな」
「でももっと軽装の奴等に行かせたんだよな・・・」
後は無言だった・・・
町に戻り・・・速攻俺は教会の治療院へ放り込まれた。
エリスが寝てた場所に俺が入り、ホセと今回の流れを話していた。
それ以外にすることが無い・・・
俺、腕だけだから外出ても問題無いはずなのになぁ・・・
町長達との話し合いは明日行われることになった。
村長は一度村に帰り、こんな時でも慰安旅行する町役場の職員達の様子を見に行った。
本当にお役所って奴は・・・
そして夕方頃。
「ツバサの部屋はどこかのぉ?」
「はい・・・えっ、あなた達はっ!」
なにやら外が騒がしい・・・
ドアがバタンと開き飛び込んで来たのは・・サキ?
「なんでここに?」
「怪我したって村長に聞いたから町役場の馬車借りたのっ!来るでしょ普通っ!」
「いや来ないだろ・・・」
普通じゃないの知ってるんだし。
「うん、本当は服買ってくれるって聞いたから来ただけっ」
「だろうな・・・」
「俺も何か作らされるって聞いて・・・」
「アキタカっ、何があったっ!」
アキタカの黒い髪は、白く染まっていた・・・
「あのメイドさんが・・・」
「判ったから喋るな、とにかく黙れっ!」
怖くて聞きたくないよ・・・
「ここに来る時も」
「やめてくれえぇぇぇ」
俺は耳を塞ぐのに必死だった。
「まったく脱走だなんて・・・今度は逃げないで下さいよっ!」
教会の人たちに連行されて来たのは・・・エリスとガルド・・・
そして他の面々も後ろからついてきた。
「いやもう私は大丈夫だからっ!」
「許可が出るまで入院ですっ!」
エリスは奥の寝床に両手を二人に抱えられて運ばれて行った。
ガルドは渋々付いて行く。
・・・教会も役所とは別の意味で融通効かないな・・・
もちろん、数十分後に一人を囮として全員脱出して夜の宴会へと繰り出した。
「いや、まだ動けないけどさ・・・酒位見舞いに持って来てくれよ・・・一応リーダーなんだからさぁ」
おい作者、なにいきなりガルド視点で書き始めてるんだよ・・・
と数行書いた自分に言いました。
最近どうも勝手に書いちゃう別の猫が居るっぽいんだよな・・・
でもそれが無かったらいきなり20行で決着だったし、良しとしよう。
この系統の呪文で苦渋を嘗めさせられたGMにはガルドの気持ちがわかるよね・・・
別パターンではレドが組ついて滅多刺しコースもあったけど捕まえる速度は無理なので没。
純粋に戦闘のパターンも有りましたが重すぎが続いたので没。
前回の小ネタ:緊張感に耐えられなくなりエリス様に暴言吐いた事、深くお詫び致します。
消そうかどうか結構悩んだけど・・・エリスの見せ場が少ないので・・・つい。
銀の加工でも悩んだし調べまくった・・・でも結局折り方が上手く伝えられなかったかも・・・




