18 蜂
そろそろ半角記号を全角に変換したいと思ってます。(直後にやりました。)
台詞も少し手を入れたいなぁ・・・
でも続き優先かなぁ・・・
「あのね?ケニー、あなたの近くにこれを打つんだけどどうなると思う?」
「ガルド、分厚い鎧でも隙間に当たったら貫通するけど良いの?」
エリスが怖い・・・
扉を長細く割り、矢の棒の部分を器用と思える人達で削っているのだが・・・
と言うか、ガルドは人選ミスだぞ絶対に。
最初はみんなが削った物を先輩とケニーが矢尻を付け矢筈を切り、エリスが仕上げに羽を付けて調整すると言う作業だった。
最初のケニーの一本でエリスが切れた・・・
「なによこれっ!矢をなんだと思ってるのっ!!」
そのタイミングでスッと差し出された先輩作の一本目を見て・・・頷く。
「ケニーは削る作業に格下げ、後ね・・・」
棒状になった物を鷲掴みにして・・・
「全員ちゃんと削りなさいよ!せめて床に付けて転がして隙間が見えない程度にしたら私に持って来なさい!!大丈夫と思ったのだけ先輩に加工してもらうわっ!!」
それで冒頭の台詞である。
俺はたった今出してお言葉を頂いた。
「狼の牙より痛い、とか思える場所に当たると良いわね」
心に矢を受けました・・・
確かに説明されるまで弦につがえる方を矢尻だと思ってた俺には、奥が深すぎて理解できないかもしれない・・・
あ、木の棒って言ってるのはそこの呼び方だけ聞きそびれて、エリス様こんな状態なのでもう怖くて聞けません。
結局、時間も足りないので棒状になった木を仕上げに削って矢尻と矢筈を付けるまでを先輩がほぼ一人でやることになった。
唯一の例外がガルドと交代した通りすがりのメイドさん・・・エリス様も完璧だわ、と太鼓判を押した。
そして精神ダメージで瀕死の俺達は、エリス様が軽く試射した矢を素早く取りに行きエリス様に渡すと言う有り難いお仕事を頂いた。
扉が全て矢として生まれ変わった時のお言葉がまた・・・
「狼は牙や骨を矢尻として使えたけど・・・・それ以下ね」
たっぷり10数えてから・・・
「もちろん今までのは全部冗談よ?」
蜂の巣つついた方がまだ痛くないと思える言葉の針を、人間は冗談とは言わない。
夕飯は店主がじっくり狼肉を煮込んだシチューと固めのパンだったらしい。
なんか・・・味が感じられなかったんだ・・・
いかん気合いを入れないと、と頬を両手で叩く。
そう言えば同席しているメイドさん、やけにシチューをかき混ぜてるな?
猫舌だったりするのかな・・・
しばらく見てると、肩を落として食べ始める。
スッと持ち上げたスプーンの縁に引っ掛かった・・・・超極薄の・・・狼肉?
それをかなりの時間をかけてゆっくり飲み込む。
気になったので見ていたのだが・・・
肉は、それだけだった・・・
今日の不運はこの程度で、村長の魔力温存できて本当に良かったと思いかけた俺は・・・本当に狼の牙以下かもしれない・・・
屋上に積み上がった矢は60本程。
弓は3本あるが、先輩とエリス様は確定としてケニーの弓を誰が使うかで迷った。
チームウルフと俺は別の役割なので除外、他のメンバーは物理的に使えない訳ではないが経験が一切無い。
弓はまっすぐ飛ばないのである程度の経験が無いとむしろ誤射の元となるため、数を撃てばどこに行こうが問題無い状況で無い限り撃たない方がいい。
至近距離なら大丈夫と思っているあなた、撃った瞬間に右に向かって進みますからね?
1m先の直径10cm的に当てるのでさえ一発じゃほぼ無理ですよ?
「なんなら私が撃とうか?」
予想外の所から声が上がった。
「いやいやいや、お客様にそんな真似は」
「安全は確保されてるようだし大丈夫・・・」
もめているのは村長と、面接に来ていたギルドの人!
確かにギルドの人なら弓を撃った経験も有りそうだし、元冒険者だったりするかもしれない。
「よし、では報酬を貰おう。ここで報酬を貰った事がばれたら、ギルドで問題になるから口を滑らす事も無いぞ」
村長押され気味。
「よし決まりだな。報酬は・・・そうだな・・・」
押し切られて報酬も言い値とは・・・
「風呂だ」
「は?」
「わしら風呂に入ってなくて気持ち悪いんだ。なので一段落着いたら夜中でも露天風呂に護衛付きで連れて行って貰おうか」
そう言えばお偉方2人は露天風呂行ってなかったな・・・村長もだが。
決定。
自分の使う弓を見るギルドさん(仮名)。
手で押して曲げてみたりしてから弦をじっと見る。
弦を一旦外して・・・指でしごいたりしてまた張り直す。
それを試しに引いて離す。
その音を聞いたエリスが近づいて・・・頷きあった後に握手してる。
わからん世界だがかなりの人・・・なのか?
日が沈んだ頃、狼の肉と内蔵を店長が煮込み始めた。
良い匂いが辺りに広がる。
ある程度煮込むと肉だけ取り出しそのまま煮込み続ける。
煮るだけなのだが火加減の仕方等、ライト兄妹に細かい事を教えている。
生物関知をたまに掛けて狼達がどれ位匂いにつられて集まってきているか見ているが、まだまだ数匹ってところだ。
「どうだい、集まりは?」
「村長、まだ少ないですね。匂いだけでは足りないかもしれません」
「狼引き付けるのに他に何か無いか専門家?」
「奴等は目も耳もいいから目立つものや弱っている獲物の音や鳴き声も聞き逃さんな」
意外と敵を分析してるホセトール、さすがリーダーと言ったところか。
「火には寄ってこんし、激しい音も警戒するからの」
「囮になる時は鼻唄とか気が緩んでるようにすると効果的だったぜ」
ガルドとケニーも鎧を着込み始めながら加わった。
そして・・・
突然目の前に現れた甲冑に腰が引けた。
やはり威圧感あるよな・・・
「皆さん遅いですよ」
レドリックか・・・本当にガチ鎧着る魔法使いとは・・・
しかも素手攻撃とかもう温厚イケメンキャラ台無し。
「女性で誰か歌ってもらうように頼んでみるよ」
村長が探しに行った。
全員防具を着終わったが・・・厳つい。
鉄の固まり3つと皮の固まり1つ。
「バサはいつ着替えるんだよ」
「着るのは一瞬なんだが、着てると魔力持ってかれてたまに体を乗っ取られる魔法の鎧だから」
「呪いの鎧じゃんかよ!!」
「だから奥の手なんだよ」
もちろん嘘だよ、ケニー。
盗難防止とこちらの都合でな。
「二人歌えそうなの連れてきたぞ」
村長の方を向いて全員一瞬硬直した。
「村長」
全員で手招きをする。
近寄ったので小声で・・・
「受け付けちゃんは外に出すとヤバイだろ」
「狼じゃないもっとヤバイのを呼び寄せるかもしれん」
「転ぶ、位で済めば良いんだがな」
「落ちたら大惨事ですよ?」
狼組の連携攻撃。
「いや、なんか乗り気でな・・・・」
村長がかわす。
「なんでサキなんですかっ!」
「使えそうな魔法があるらしい」
・・・
サキを手招き。
部屋の隅まで離れて更に小声で会話。
「使えそうな魔法があるって?」
「効果範囲が歌が聞こえる範囲全部なんでここならかなり広範囲に聞こえますよ」
「で、どんな効果?」
「セイレーンって知って」
「まて!!」
・・・
「うん、続きを」
「その子達に習ったんですけど」
海の中の魔物とどう知り合ったのか聞きたい。
「性別雄にしか効きませんが、とにかく側に寄りたいと衝動が止められなくなり、命に関わる問題があっても判断できずに近寄ります」
狼って個体数どっちが多かったっけ?
「雌でも普通の歌にしか聞こえないから寄ってくるかもしれません」
悪くはないんじゃないかな?
「ただ脳に直接響くので、耳を塞いでいても範囲全員にかかるので人にも」
「却下だ!!」
内容を伝えないで範囲全員にかかるから、とだけ伝えた。
「ちょっと聞いてみたいよな」
うっかり村長。
「じゃぁこの中だけで」
口を塞ごうと駆け出すが・・・
あれ、俺寝てたっけ?
辺り全員寝てる。
ちょっと記憶がハッキリしないが・・・
そうだ、生物関知を・・・
「起きろっ!!皆、始めるぞっ!!」
急いで立ち上がり屋上に登る。
そこには・・・
建物の周りに群がる無数の狼達。
そして・・・
跪き、声も出なくなっているのに喉を押さえながら必死に歌おうとするメイドさんの姿があった。
出来上がってみたらエリス様とメイドさん回。
一度戦闘前まで書いてみたら分量的に全然足らなくて、矢の軌道の話をねじ込んだ。
でも足りなくてもう少し、で歌の部分を追加した結果、メイドさんは喉を枯らしただけで狼の群れの中に落ちたり逆さで宙吊りにならずに済みました。めでたしめでたし。
え?エリス様は書き出しからああでしたよ?
前回の小ネタ:桶。
いや室内戦闘で長物武器は使えない、弓もダメじゃん、ダースは魔法あるけどエリスはやっぱ精霊、でも室内で使えそうなのが火と水で、松明とか無いから水だよな、いま水が汲めるのは井戸用の・・・桶。