1.3キロ
1.3
「ちょっと待ちなさいよ!」
誰だろう……
そう思って、最後の力を振り絞ってなんとか意識を取り戻していく。
けれども、彼女達の声を聴く事しか出来なかった。
「貴女は誰!?」
「誰でも良いわよ!」
「なんで来たのよ!?」
「嫌な雰囲気がしたから気になってきてみたら……とりあえず、その少女を早く出しなさい!さもないと人を呼ぶわよ!」
「ふん!」
その瞬間、大きな音と共に、勢い良く水が引いていった。
同時に私は呼吸が楽になっていって、解放されたという気持ちになっていった。
目の前が見えるようになったので見てみると、クラスメイトに言い寄っている知らない黒髪ボブの少女が。
誰だろう……
「これで満足?」
「ええ」
クラスメイトは私を置いて何処かへと行ってしまった。
どうせ捕まるのが嫌だろうから。
それにしても、助かった……
「あ、ありがとうございます……」
「良いのよ。身体に変な所はない?」
「いえ……」
「だったら良かったわ。とりあえず着替えたほうが良いわ。風邪ひくわよ」
「はい……あ、あの……」
そう言ったら彼女は、そのまま立ち去ってしまった。
お礼を言いたいと思っていたけれども、そのまま言えずじまいになってしまった。
また逢えるだろうか……