0.5キロ
0.5
「お帰りなさい、どうだった?」
帰るなりお母さんのはそう訊いてきた。
まだ結果が出てないのに……
「来週くらいに……」
「次も駄目だったら、もう出ていってもらうから」
「そんな……」
「仕方ないでしょ」
うん、仕方ないのかもしれない。
お母さんの期待を裏切って、今まで落ち続けているから……それに現在までにかなりお金が掛かりまくっている。
そんな穀潰しを家に置くわけにはいかないのだろう……
「せいぜい、期待だけはしなさい」
「はい……」
結果が出るまでの一週間、私は緊張の連続だった。
いつ電話が来るのだろうか。
手紙で不採用が来るのだろうか。
落ちていたら、家を出されてしまうし、ここ以外に家がない私は、野宿か最悪死ぬしかないかもしれない。
それだけは嫌だ……
早く受かってほしい……
落ちていないで……
お願い……
「舞衣、電話よ」
ちょうど試験から一週間の時、お母さんから受話器を渡される。
今まで私に電話が掛かってきたことなんて殆ど無い。それってもしかして……
私はドキドキしながら電話を取る。
「もしもし……」
「私は世界鉄道交通事業、総務部総務課のムソウです。国府津舞衣さんでよろしいでしょうか?」
「はい……」
「早速ですが、試験の結果をお伝えします。……国府津さんを採用することに決定致しました」
その瞬間、暗いままだった私の道は明るくなっていった。
同時に達成感が私を支配していっている。
これで……なんとか……
「本当ですか!?」
「はい……」
「ありがとうございます……!ありがとうございます……」
電話が終わるまで私は感謝しかしていなかった。
それくらい嬉しかったのだから。
こうして私は、世界鉄道交通事業に就職することになったのだった。
聞いた話では先輩が一緒に仕事をしてくれるらしい。
どんな人なのかな……?
怖い人だったら、ちょっと嫌だけれども……
私は先輩の姿を想像しながら、働くその日を待ったのであった。