0.2キロ
0.2
「また落ちたのか。国府津は」
先生の声が怖い…
そりゃあそうだろう。50人居るクラスの中で、私だけがまだ進路が決まっていないのだから。それに下手をしたら、責任になってしまうのかも……
「はい……ごめんなさい……」
「じゃあ、これからどうしたいんだ?」
「鉄道会社に就職したいです……」
「まだそう言うのか。ここまで落ちているのだから、いい加減路線を変更しろ」
確かに先生の言うとおりだ。
こうして何十社も落ちているのに、鉄道会社にこだわるのはやめた方が良いかもしれない。
「でも……」
「とりあえず考えろ。今のお前に望みはない」
「はい……」
トボトボと職員室を出て、教室へと戻ることに……
私には黒い闇が目の前を支配している……
「あっ、舞衣!」
「バルジ」
クラスメイトのバルジが私の前に。
どうせからかいに来ているのだろう……というよりも、それしか無い……
「就職先は見つかった?」
やっぱりこれか……
私を見下したいのだろう……
「いえ……」
「やっぱりね。こんな暗くて弱っちい舞衣に就職先なんて決まらないんだよ!」
「痛っ……」
今度は脛を蹴られた。
とても腹を殴られるよりもかなり痛い……
「私はアウタミ商会へ就職が決まっているのよ」
「そうですか……」
彼女が大手の就職先を言った所で、私には関係がない。
だって私の事を優先しないといけないから。
「せいぜい見つけなさいよ。どうせ無理だけれども」
「はい……」
ここでなんとか言ったって、またひどい目に遭いそうだから何も言わないことにする。
私が悪いんだ。
何一つ取り柄がないから……
就職先が決まらないから……
とりあえず、教室へ行こう。
「はあ……」
ため息が出てしまった。
これで今週に入ってから何回目だろう……
「おはよう……ございます……」
教室のドアを開いて、入っていく。
一瞬、クラスメイトは私を見つめるけれどもすぐにいないもの扱いに。
だって、私の机には花瓶と花が。
私は死んだような扱いにされている。
もう慣れてしまっているけれども、正直慣れてしまったのはいけないのかもしれない……
だって、私は死んでいるようなものと言っているみたいだから。
「さあ、授業を始める」
先生が入ってきた。
一応私は見てくれているけれども、すぐに同じような扱いをする。
「……であるからして」
授業が始まった途端、ゴミとなった紙くずは私に向かって飛んでくる。
私の机はゴミ箱みたいな扱いもされている。
誰もいないという扱いだから、そんな風にされているのかも。
早く終わって、帰りたい……