豪華とものなし
優唄は都会といえるような場所に建てられている木造建築を見た。普段は入ることのないだろう豪邸とか名の付くものだろう。インターホンをどこか遠慮しながら押した。アルファベット表記になっているのが現実を増す。
「どちら様でしょうか?」
家政婦を雇っているのかと頭の端で考えている。余計なことだということは分かり切っているのだが・・・。
「警視庁の刑事です。相宮さんのお宅で間違いないでしょうか?」
「はい。内容は中で話されたほうがよろしいかと思われますので鍵を開けるので待っていてください。」
重苦しい扉がうめき声をあげながら開いた。中は言葉ではいい表せないほどの広さだった。裕福な暮らしだといっているように感じた。玄関についても落ち着きがなかった。外国製のドアを開けた。
「貴方が刑事さん。何について聞きたいのですか?」
「息子さんに当たる幹治さん、そしてお孫さんに当たる智穏さんについて。」
智穏に敬意を示す言葉を付けるのは違和感しかなかった。出てきた男性は中に入るように言われた。着ている服は何処か質素のような感じがした。家の中は外のように豪華さ、華やかさは消えていた。
「幹治のことを話すのは良いことなのかね。事件が起きたのか?」
「幹治さんが数年前に殺されました。彼には1人息子がいたんです。それが智穏さんです。会ったことはありませんか?」
男性は緊張感はなさそうだった。事件に関係することはないといっているようだった。ソファにどっぷり座っている。
「あるさ。1度だけ。このことと何かがつながるのか?」
「誰にも言わないでいただきたいんです。死神とつながります。けれど、智穏さんは死神ではありません。幹治さんが取り扱っていた事件につながるんです。」
優唄は手帳を上着から出した。相宮の親が残した遺品を知っているはずだから。
「遺品だろうな。事件のファイルと日記と家族写真があった。幹治だけだ。子供ができたのが・・・。探偵なんて仕事を選ばなければうちを次いでほしかった。それくらいの子だったよ。でもしょうがないか。」
「どういう意味ですか?」
「能力について1番嫌がっていたから。子供に受け継いでしまうのが嫌で探偵なんて仕事を選んだ。けれど、運命は変わらなかった。」
相宮家と結婚して子供が生まれると予知する能力が受け継いでいる。恵まれたと思えないものばかりがある。
「今、智穏は何をしている?」
「刑事ですよ。」
ほっとした顔が何よりの示しだと思った。この豪邸に住むことができなかったのは親の所為ではないと思った。断ったのだろう。邪魔になると思って。きっとこの家の能力はなくなるのだから。祖父母の協力の無さが目に見えて怒りを覚えた。助けを呼ばなかったのはこの所為もどこかであるはずだ。




