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  作者: 実嵐
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親子の会話

「親父は智穏に会った時どう思った?冷たい奴だと思った?」

潤紀の言葉は問いかけではあるが心配があるのが見える声で言った。課長を守るとかいう概念は根付かせてはいないはずだ。

「相宮はいつも1人でいた。そのときは荻学を失ってすぐに捜査一課に起用したから構えていなかったのだろう。ただ冷たい奴とかには映らなかった。悲しい、むなしい奴に見えた。」

「あいつの過去を変えたのは警察と佐伯琢磨であることは分かった。1人で迷路でさまよっているのなら出口へ導くのにな・・・。」

潤紀がつぶやくのは救えぬ気持ちがあるのではないのか。隠した声を聴きたくて耳を澄ませているのに聞こえないのがむなしくて情けなくて。

「親父、智穏を僕らが守れなかったら代わりに守ってほしい。特殊犯罪課はたった5人しかいない課だから突拍子のないことをされたらあいつを死なせてしまう。そんなの嫌だ。絶対いやだ。」

「わかった。捜査一課の枠を超えて救って見せる。後悔なんてさせないからな。相宮の幼少期を過ごした町は嘆いていたからね。」

圭吾は息子にかけてやる言葉を間違えていないかと悩んだ。ただでさえ家族というものをよくわかっていないのだから。

「おふくろと仲よくしろよ。喧嘩ばかりしてるって聞いてるから。」

「わかった。相宮のことを含めてな。お前にはいろんな意味で負けているからな。」

「僕らだって天才じゃない。苦しみを抱えて生きているのは知ってる。それを表に出すかどうかの違いだとも思っていない。見ていることが大切と教えてくれたのが智穏だったから。」

天才と警視庁の中では騒がれる。過去の苦しみを抱えながら戦っているのだ。認めることの大切さ。余裕を持ったほうがいいことを感じながら学ぶ。

「井本は資料室にいるのか?今からでも行きたいんだよ。」

「連絡を取る必要はないよ。親父とおふくろは僕の両親ということでそこまで警戒はしていないんだ。一課の2係と署長ぐらいだよ。智穏はそこまで厳しい奴ではないからな。勘違いしてないか。」

「そうだな。相宮は俺たちのことを考えていてくれたんだな。」

潤紀の背中は大きく感じる。全てを断ち切ることを選ばないのはわかるからなのだろうか。それか親がいないことに対することもあるのだろうか。

「もし僕にとって最悪な結末が待っていても特殊犯罪課がいるから生きていけるんだ。何処かで愛を感じるから。」

どこかにあるものを手探りで探すのをやめて事件を追っているうちにわかることもあるのだと深く深く思ってしまう。切れない糸が導いてくれればいいのでは思ってしまう。小さな課を守ることが大切だとしみじみ思う。

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