間違えた決断
一課長は日にちを開けてだが相宮が生まれた土地に行くのはどうかと考えて調べてきた。育った場所より比較的静かな場所だった。家兼事務所であった建物は残っていた。ボロボロで空き家状態だった。
「貴方、この辺で見ない顔ね。相宮さんに用事があってもダメなのよ。なくなったから。息子さんもどこかにいるみたいなんだけど。」
優しい声で問いかける女性に警察手帳を見せた。彼女は驚くことはなかった。頷いている。
「あの事件の事をまた調べ直してくれるの?」
「違うんです。息子の智穏がどのように過ごしてきたのか気になったので。彼は警視庁にいますよ。刑事です。」
「刑事になってるの。親のこと、忘れたのかしら。幼かったからしょうがないわね。」
近隣の人は交通事故とはとらえていなかった。意図的にやったのだと。警察はそれに捜査された悪な組織であると。
「彼は親のことは知ってます。それが裏に権力があることも。解決というより真実を明かそうとしています。幹治さんと同じ能力をもっているのは確かです。」
「お父さんと同じ能力をもっているということは苦しみも同じってことね。あの子の両親は言ってたのよ。同じ苦しみを味わうことはさせないと。いいことはないって苦しんで終わるだけだって。警察に入ろうとしたあの子のお父さんは利用させるということが一番に浮かんで辞めた。私立だけど探偵をすることにしたらしいのよ。」
女性はこぶしを固くしていた。奏と仲が良かったのだろうか。
「幼稚園の年少くらいに殺されたのよ。警察が動いていればこんなことはならなかった。誰かに追い回されていると気づいて智穏君を預けてきたのよ。その頃うちの子と仲よかったからね。そしたらなくなったのよ。」
「お父さんの幹治さんはわかっていたのよ。奏さんもわかったはずよ。1人で殺されるか2人殺されるか3人殺されるか。ただ人数の問題だったはず。智穏君を残したのは事件を隠蔽されることをわかって残したのよ。きっと。少し残酷だと思ったわよ。だけど、真実を隠されたままのほうがよほど残酷だと思うのよ。」
女性の背中には十字架はない。けれど隠し扉があるのならきっと重くて大きな十字架があるはずだと心のどこかで確信していた。幼い頃、きっと平和に暮らしていたのだろう。探偵という職ではあるが周りからは信頼があるため小さなことでも手伝っていたのだろう。しいて言えば大きな事件をもってくるのは警察ぐらいだ。何処かで歯車が壊れてしまった。家族が殺されると思い自殺も考えたはずだ。残酷な決断を迫ったのは警察だと結論が付いた。




