弱いものいじめ
雅也は刑務所に行った。中村に会うためだ。死刑は免れたのだ。言葉は伝えることが難しいと思ってしまう。
「中村なら呼んできますよ。あの人は脅されたことがわかっていたんですか?井本さん。」
「養護施設の実態はよくわからなかったけど養護施設に育った奴がいたから考えてみると脅されていても可笑しくないと思ってね。」
面会室へ連れていかれながら言った。中村は何処か申し訳なく思っているような感じの表情をしている。
「本をもって来たんですよね。それもほとんどが新作なんですから。古本とかでもいいんですよ。どうせ作業をやっているのですから。」
「零さんは深く考えないでください。俺だってそこまで考えていないんですよ。死神とか名乗っているホシを見つけたいと思っているだけで。」
「佐伯海斗は死んでいたなんて知らなかった。薬物に手を出すとは思ってはいなかった。そんなに悪い奴だと思ってはいなかった。」
海斗は崖の下で見つかっていた。防犯カメラに関しては和翔に任せている。解析は済んでいるはずであると思う。
「工場に働いていたというんですよ。ストラップを製造をしているというところなんですよ。養護施設に出荷しているっていうんですよ。」
「知らないんですね。だって課外で出たのは確か政治家の家に入れて貰ったんですよ。地元では有名とは言えなかった人ですよ。豪邸にその頃から住んでましたよ。資料を隠れてみたことがあるんですよ。」
資料を隠れてみていたことは放置をしていた。政治家の力で活動していた養護施設だったのだ。金を盗みとったのかもしれない。
「政治家の名前はわかりますか?これがつながっている可能性があるんですよ。思い出してください。頼みます。」
「確か総理大臣になるとかよく口走っていましたよ。・・・・佐伯琢磨って言っていた気がします。資料に佐伯琢磨と書かれていました。裏金をしていたのか株式会社の名前もありました。会ったビルは焼かれましたけど。」
佐伯琢磨は養護施設の子供を入れていた。簡単に入れていて秘書にさせるために活用していたのだ。
「そこから秘書になった奴知ってますか?」
「いましたよ。名前は忘れてしまいましたけどその奴はすぐやめて養子に入っているらしいと聞いたことがあります。政治家になっている可能性のほうが高いと思います。新聞を見ていたらそう思いました。長谷という人が秘書というのを見て。」
弱い人物を手の内にしまって動かすのだ。殺すことも躊躇しないほどに。




