過去に伝わるもの
一課長は初めて訪れた町に来た。人口が増えることはないとどこかで断言をされている町なのだ。希望もろくにないと感じてしまう。相宮智穏について知りたかった。頭の隅に隠しているような態度を見せるときが多々あった。足で答えを見つけるのは悪くないと思った。昔住んでいた家の周辺を聞いてみても知らないといわれる。30年とか経っているわけではないのに。いうことを嫌がっているようにも見える。休憩するために近くに会った商店に入ってみた。缶コーヒーもあったり総菜があったりなんでもやとか言える感じだ。
「ここはなんでも売っているんですね。ドラッグストアみたいですね。」
「過疎になりかねている地域だろう。国からも見放されたところだから買い物難民のためのただの気休めなんだよ。赤字続きだからやめたいとか思うのだけどしょうがないよね。」
老人は腰に手を置き立ち上がった。黄ばんだ写真を見たかったのだと思った。
「これは良い子なんだよ。いじめられていてね。学校とか行くとね。俺にとっては後悔から動いたんだけど
ね。」
「名前を教えていただけませんか?貴方が語っている子の。」
「相宮智穏君だよ。笑顔は見せていないけど、優しい子だよ。」
相宮の面影の残る写真には彼は真顔で写っていた。制服ではなく体操服のようなものを着ていた。
「この時は?」
「何かの大会の時だよ。スポーツはできて頭もよかった。部活もいじめで行けていなかったから隣町の小さなチームに行ったから。」
優勝をしている。野球をしているのか。ピッチャーをしていたのかと思わせた。
「あの子はピッチャーもキャッチャーもしなかった。外野をしていた。フライとかゴロをとるのがうまかった。打つのがうまくてそれで大学でもしていたみたいだよ。死ぬのを止めたのはこの町にはなかったはずだよ。」
「どうしてあなたは答えてくれるんですか?」
「ニュースで聞く死神がどこかあの子じゃないかと思うようになってしまってね。貴方、警察でしょ。」
信じたいと思っている心と信じたくないと思っている心が喧嘩をしているのだ。コーヒーを飲む刑事に聞きたかった。
「相宮は今、刑事の仕事をしています。葛藤しているのは色々あるみたいですよ。相棒が死んでしまったとか自分の両親が交通事故じゃないことは分かっていて加害者を可哀そうに思って自殺行為をしてみたりとかです。」
「気を付けたほうがいい。あの子は再び死んでしまおうとか考えているかもしれないから観察してね。」
老人との会話は良い。相宮の過去の真相をこの人にまだ聞きたいことがある。




