国会の見えない本音
智穏は小さな居酒屋に行った。ただの通りすがりで見つけたところであったが特に躊躇なく入って行った。カウンターしかない店だった。
「いらっしゃい。何にしましょう?」
「ビールとおすすめを下さい。」
来た事がない店はたいていおすすめで済ませてしまう。よくあるものでも特徴があったりするのでこれといって頼まない。
「お兄さん、見ない顔だね。こんな店に立ち寄るなんて変わってるな。もっとおしゃれなとことかあるだろう。」
「飲みたいと思って近くにあったからここにしたんです。おしゃれな店なんてこの仕事していると興味がないんですよ。」
「なんの仕事をしてるんだ?」
大将らしき人物は話すことが好きなのかずっと話しかけてくる。つまみが続々と出てくる。ビールを少し飲んだ。
「警察です。特に役に立ってないように思うんですけどね。まぁ、考えようかなとか思うんですよ。続けている意義とか見つからないんです。」
「そんなときは少し立ち止まることだ。抱えていることが重すぎて回転していないんじゃないのか。休んだほうがいい。」
「今は大きな事件をしていてそんなことしてられないんですよ。だって解決しないと迷宮入りになってしまうんですから。」
隣のおじさんが話を聞いていたのか強引に割り込んできた。嫌な感じはしなかった。追及できるところまでしてほしいと思った。
「死神とかっていう奴いるだろう。あいつは何を考えているんだろうな。テレビ局にメールを送りつけていたらしいけど今はほとんどやってなくて大学を爆破したんだろう。頭がいかれているとしか思えないんだよ。」
「詳しいことは言えませんけど本音を有難うございます。大学は大きな爆破によって復旧もできていない状況です。」
「総理大臣を輩出した大学とか歌ってさ。大した総理大臣なんて出してないじゃないか。佐伯琢磨なんて特にだよ。外交もろくにできないしどうせ親の七光りかなんかだろう。金さえあれば国会議員できるんだからな。」
死神の話から大学~総理大臣の悪口になっていた。国会議員は懐を肥やすことを考えている。国民のためという嘘を長年つきながらのうのうと暮らしてきた。借金は国民が作ったんじゃなくて国会議員が作り出し返せと言っている相手を間違えているのだ。
「やめてしまえばいいんだ。あんな嘘つきはいらない。金を出しても肥しだろう。国会ごと誰か壊してくれないかな。そしたらすっきりするのに・・・。」
「犯罪ですよ。考えたことはありますけどね。」
居酒屋には本音が埋もれている。高級店では聞けない話ばかりだ。安いものの良さを知らぬものがよく口に出すと思ってしまう。




