友人
和翔はある寺にいた。そこには友人がいる。墓をもっていなかった友人の両親は墓を持つことはよくないと思い寺に入れておけば一生経を唱えてくれるのでいいと思ったらしい。大学にいる頃は死とか考えたことはなかった。楽しいばかりの学生生活といえた。バイトもほどほどにやりながら副業をしていた。それは俗にいうハッカーとかだったりする。
「あんなことになるなんてな。俺も考えたことなかったよ。あの頃は。」
遺骨を見つめて語った。返事が欲しくて喋ったわけじゃない。いまだに信じられない自分と向き合うのに疲れはしないかと思ってしまう。情報を扱うことの楽しさを知り遊んだ。それが不幸を襲った。暴力団とかが複雑に絡み合った。
「来てたのか。大葉君。」
「親父さん。命日だからせめてと思って。あいつも学部で習うことをうのみにしていたんだ。」
友人の親父は花をもっていた。カラフルな色合いではなくどこか色が偏っていた。これが花であると思った。
「あの学部はなくなったよ。だいぶん前にね。逮捕者が出ているのはおかしいと思わずに無視していたけれど死亡事件が起きて慌てて廃止にしたんだ。」
「第一期生であるということでどこか緩かった。教えていることは明らかにハッカーとかに誘導するような感じだった。それは真実を知られることを恐れた大学は消したんだ。抗議を。」
和翔は黒のスーツを着ていた。何時もなら着ない。親父さんはラフな格好だった。おふくろさんの姿がない。
「おふくろさんは?」
「去年病で倒れた。あの子を失ってから生きているか死んでいるかよくわからないときが時々あったんだよ。それから施設に入ってる。後遺症を残したんじゃ1人では手に負えないからね。」
「そうだったんだ。伝えてくれれば行っただけどな。何のために勉強していたか最近はよくわからない。大切な人を無くすなんて。」
大切な人を亡くしてしまった心が何かを求めていた。
「大葉君。考えすぎだね。俺もむなしくなって考えることはもうやめた。警察は有名暴力団に目を付けていた。けれど解決は何処か落ち着かせるための行動ように思った。」
墓石はなく遺骨を淡い光が導いていた。寺を出た。何処か居心地が悪かったからだ。外の空気は晴れ晴れした気持ちに錯覚させるだけだった。
「君はもう来るべき場所じゃない。それは今の犯人を逮捕してから報告にきてくれ。命日じゃなくていい報告がある日にきてくれ。警察の改善をしてくれているはずだからな。」
「わかった。じゃあまた会える日まで。」
「そうしておこう。」
親父さんの背中は小さくなったが遠くなるほど大きなるのを感じた。覚悟があるのだと思った。全てとは言わないが少しでも覚悟がもってればと思ってしまう。




