置手紙
智穏は久しぶりに署長室に向かった。写る鏡はない。悪事を映すものは発売されてもいないし成敗もろくにされない。それを訴えるためというのはうわべかもしれないと心の片隅で思ってしまう。ノックせずに入ってみた。
「君か。特殊犯罪課は進んでいるか?」
「署長。貴方に相談をしに来たんですよ。貴方にとって得かどうかはわかりませんが話してみる価値はあると思いませんか?」
彼がもっている紙が不自然に揺れ動く。脅されていると思ってしまうのは間違いなのかは内容次第といいきれる。
「なんだね。俺には過去に前科っていうものはもっていないよ。」
「貴方であることはわかっているんですよ。俺の両親が殺されたのは貴方しかできなかった細工が原因で交通事故のように起こり誤認逮捕が行われたことはわかりました。加害者にも謝罪をしてほしいものですね。同じ被害者ですからね。貴方の過去の経歴と研究していたことを調べたらあっさりですよ。」
ジャケットの隠しポケットからコピー用紙が出てきた。署長は渡された紙を見た。裏から操作されて入ったことはもうわかっているみたいだ。
「金が目的か?そうなんだろう。」
地響きのような音がした。智穏は無視した。興味なんてサラサラなかった。捜査協力してもらえるかと思ったがやっぱり偉そうだ。退散しようか。
「貴方は警察に向いてないですね。辞めるべきだ。佐伯琢磨とともに。それか警視庁を全て、いや国会も解体するのもいいですね。金しか頭にない人は部下から信頼はもらえないんですよ。都合が良すぎるってね。考えが変わらない限り、付き合うこともないでしょう。捜査一課の評判がガタ落ちですね。このネタ、どうにでも生まれ変わりますから覚悟しておいてください。では。」
署長室を逃げるように出た後、屋上へ上がった。特殊犯罪課が良く使う場所であるから構わない。
「和翔。」
「なんだよ。智穏。」
「署長は使えない。だから、大学の事件はほっといておけ。帰ってくる評判は警視庁捜査一課とかだ。俺たちは関係ない。手柄目当てで存在を記してないしこのタイミングで出すのはわざとだとわかってしまう。国民はそこまでバカじゃないよ。呆れているだけだ。」
和翔はコーヒーをもって来た。頭の回転を速めるとか大した理論とか論理は関係ないと思った。
「隠れ課が解決していたことをあとで流す用意はできているから。安心して好き勝手やればいいよ。正義が最後に勝つ。のちに未来は正しさを知り過ちを隠し通すことができなくなる。お前の親父の言葉。いいよな。まさにだよ。」
2人は笑いあった。馬鹿げたことばかりする。持論ばかりを突き通す警視庁に。




