心配
鑑識長である由美はパソコンを触っている。捜査一課が絡む事件は解決をしていない。迷宮入り事件を作りだしている。
「鑑識長、新たな事件があって被害者の遺族は来ないし、大した証拠品がないんですよ。名刺と小さなプラスチックの塊みたいなのしか。それはUSBの差し込み口があったのでパソコンにさして見ても何も起きないんですよ。」
「それなら特殊犯罪課に渡してくれる?解決に導いてくれるからね。信用する課であるから。君がもっていても価値のないかは彼等がわかってる。」
由美はあまり深く考えていなかった。相宮智穏に伝えることや思うことがあるかもしれない。彼は推理ができるから重宝しているのだと。ドアのノックの音がした。振り返ってみると署長であった。彼もまた特殊犯罪課から突き放された人である。
「話をしたい。特殊犯罪課が考えていることが知りたい。」
「屋上が話しやすいんで行きませんか?彼等に見放されたのでしょう。貴方も。」
部下は知っている。二松潤紀の実の母親であること。夫が佐伯琢磨のいうことを聞いてこの地位についていること。それを嫌がっていること。それ以上に知っているのだから困る。2人で廊下を歩いた。遠くへ行くわけでもないのに浮世を感じた。
「特殊犯罪課は悪の組織を見ているように感じてしまうのはただの幻想だろうか。俺は感じるだけだ。状況だけを見ているといい課なんだ。脅しているわけでもないから。」
「署長は特殊犯罪課に突き放されたのでしょう。それには理由があるはずですから。その時の事を話してくれませんか?」
弱り切った署長は威厳がなく権力を振りかざそうとしているように見えなかった。勢いだけじゃないかと思うほど過去の栄光に思えた。
「相宮に会って話したときに佐伯琢磨の事を明かしたんだ。それ以降関わってこなくなった。ボイスレコーダーを1つ潰してからね。」
「ボイスレコーダーを壊したんですか。彼等の大切にしているものの1つですよ。人に対して信用とか信頼の言葉をろくに知らないんですよ。機械を借りてやっていたりするので簡単に言えばそれが原因かと思うんですが・・・。」
簡単に縁を切ってしまうと厄介な課ともいえる。防衛省と関わりもっているとしたら上に伝わっている可能性だってある。
「相宮君はだって課長だ。威厳とかあると思ってしまった。」
「威厳とかあると思います?だって課長と呼ばれることも嫌がっている感じがするんですよ。」
「そうだな。」
署長が警戒をしているのは一体なんなのかと思ってしまう。見つめていても見つからないものを都合よく見つけようとしか映らなかった。




