伝えるもの
優唄はおしゃれな喫茶店である人を待った。その人はどのような恰好をしてくるのかはなんとなく想像することができる。コーヒーすら頼まずにただ席に座って待っていた。その人が来たのは優唄が来て数分後だった。
「すいません。極秘で会いたいというのはなんでしょうか?」
警察手帳を見せた。彼は少し驚いた様子だったが落ち着いた感じをすぐに取り戻した。彼は名刺を取り出した。総理大臣秘書 長谷明憲。
「長谷さんは佐伯琢磨をどう思っているのですか。彼の過去は我々が調べているところです。佐伯は隠し子がいたことはご存知ですか。」
「いいえ。知りません。佐伯さんは国民のために再建しようと奮闘しています。どうして警察が探っているんですか。おかしいじゃありませんか。」
店員は近づきがたいのか注文を聞こうとはしない。タイミングの悪さが示されている感じがした。それでもかまわない。
「なぜ調べているかは詳しく話すことはありません。貴方が強力的でないことが証明されたので。我々はただ凶悪犯を調べていたら佐伯琢磨の悪事が出てきたから貴方に探ってもらえるか相談をしたかっただけでしたがそうしてもらうつもりもなくなりました。貴方はきっと捜査一課に属していないからバカにしているでしょうけど一言言っておくと捜査一課より解決している事件がたくさんあります。権力に左右されないです。捜査一課なんて飾りだと考えている団体ですから別にかまいません。貴方から情報がなくてもやっていけますから。」
「櫻野さん。待ってください。貴方はどうしてこのような活動をしているのですか。」
「裏切りものは警視庁にいることもすべて知りました。その黒幕に佐伯が出てきただけですから。裏切りの経験がこの団体を作りだしたと思ってください。」
店員があたふたしているのが目の端に移っているのが見えた。見た目はいくら綺麗に見えても中身がよくなければいけないとしみじみ思った。
「手伝わせてください。これは多くの人の命に係わることなんでしょうから。」
「それならしないほうがいいですよ。ばれたらよくないことを貴方にしてもらうんです。度胸がない貴方にはできないと思います。会話から読み取ることができましたから。貴方は佐伯の味方をして裏切られるのを見ていてくれればいいんです。」
優唄はコーヒーも頼まずに出て行った。長谷は空気の悪さから注文をした。彼の言葉は重くのしかかった。裏切りられてしまったからあのような態度しかできないのか。それか信用できる相手が少ないのか。守るべきものを守ろうとしているのか。隠し子という単語が心に齧りついた。




