転機
吉崎は分厚い資料をもって来た。机の上に載ってけることはできるが重さに耐えられるのか心底心配になった。
「どうしてこんなものをもって来たのですか?貴方にとって俺はなんですか?」
「君には潤紀と関わりがある。それは何かにつながると思っているからいいことなんだ。君たちの課は異常なほど人に対して信頼性は関わりをはっきり持たないとダメな感じがするからね。」
智穏は下を向いたまま茶を飲んでいなかった。いや、飲めなかった。ある程度の緊張感に堪えられなくなりそうだった。
「君の過去を知りたい。軽々しく話せないことがあるかもしれないが、特殊犯罪課の皆には語っているだろう。ある出来事がきっかけであるとしか思えなくてね。この世界は裏切りはないがただ信頼できない子が多くてね。潤紀もその一人だった。」
「俺の過去はどういえばいいのかわかりません。ただつらかったんです。両親はアジサイの元園長に交通事故で殺され、従弟の家では金目当てで育てられました。その中で守ってくれたのが次男でした。学校でもいじめられていたのに支えてくれたんです。警察に入ってもそのように支えてくれていたんです。ある事件で亡くなりましたが、弟とはいまだに交流があるんです。」
吉崎は静かにお茶を飲みほした。空間の中に重さとどことない軽さをもっていた。彼の手はつかみどころのないほど揺れていた。
「君がこのようになった人達は最強だね。守る人がいた。だから警察として守ろうとしたのではないのか。」
まるで論破するかのように言葉を巧みに扱っていく。さすが、元総理大臣の秘書であると思った。悪く思うことばかりだ。
「俺には守るものははっきりとしていることはないままきているんです。だって裏切りとかは散々受けてきたましたし。だからあいつらもよくわかっているんです。死ぬ覚悟があることがあるなんてよくわかっているんですよ。」
「けれど、死んでほしくはないと思ってることくらいは君はよくわかっているだろうしね。抱えた荷物はゆっくり下せばいい。支えてくれる人もいるからね。」
応接室を出たときに思いもよらない荷物が来た。それは死神の件の大きなカギとなるに違いないことなのだ。車に乗せて出した。サイドミラーに女性が一礼したまま動かなかった。何に対する感謝なのかわからないままだがどこか晴れ晴れしくなっていた。智穏はコンビニに寄って4人の好きなものを買って帰った。喜んでほしいからという純粋な思いだった。




