組み合わせ
荻は特殊犯罪課に向かった。廊下には刑事として誇りに思っているような感じの姿の者はほとんど見かけなかった。ドアノブに触れると小さな音で電子音が流れた。驚いてしまう。
「荻だろう。開いてるから入ってくれ。」
相宮が伝えられるくらいの大きさの声で言った。やはりこの部屋から出ようとはしていないことが分かった。ドアを開けた。5人は楽しそうだった。
「お前ら、署長が佐伯琢磨と関係があるとわかったというのに。一課長も含まれるなんてな。」
「俺はわかってたよ。うじうじしてても何も変わらないから一課長を使って動いてもらおうと思ってさ。かけをするのは良いことではないがな。まぁ、総理という肩書を持った黒幕に近づく方法なんだけどな。」
智穏は悪気のない軽犯罪の犯罪者みたいに見えた。和翔もみな頷いていたり自由な行動ばかりだ。特殊犯罪課は縛られていない。
「秘書と会うのか?賭け事をしてうまくいくとは限らないぞ。」
「まず、秘書との関係性を築いてからじゃないといけない。あの人はプライドを簡単に脱ぎ捨てられるような感じはしない。優唄がうまいから最初に任せてあとから5人がかりでやってやる。それでいいと思う。」
潤紀は鑑識に使う機材すらもって来れるだけもってきて傍観している。此処まで落ち着いていられるのは智穏が推理の天才と呼ばれていることにもあるのだろう。
「雅也、資料はどうだ?署長につながることがあるのか。不正が見つかったか。」
「今さ。和翔と協力してコピーしてデータとつなぎ合わせてるところ。」
「優唄は聞き込みデータを照らし合わせてる。」
智穏は正と会話するだけではない。きっとホシがわかってるから止める材料を探しているように思えて仕方ない。
「俺は何をすればいい?」
「交番業務をただいつも通り努めればいい。学さんみたいになってはいけないから。お母さんを悲しませるようなことはできないからな。刑事は最後の砦じゃなくてはいけないような感じがしてな。」
「そんなこと言うなら会ってくれよ。おふくろに。心配してるんだ。兄貴が死んでから姿を見せないお前に。井本が来て本を置いて行った。」
雅也は静かに話の輪に入ってきた。片手に束をもって。
「いいんですよ。俺は智穏についてもわかってる部分がありますから。後悔で人は動けなくなるのは零さんでわかってますからね。それにその日いいことがありました。」
「何があったんだ。」
「零さんは無期懲役になったんですよ。後はどれくらいになるか。それだけです。」
うれしいことは他人の事ばかりだ。これだからやっていけるのだろう。




