プライド
正は警視庁に行った。自動販売機のコーナーに立っていた。ある人をただ待っている。紙コップの安いとは言えぬコーヒーを飲んだ。捜査一課であるからといって課長としているため抜けてくることは可能であろう。1人の魂の抜けかけた男がしたを向いて歩いていた。
「荻君じゃないか。どうしてここに・・・。だって交番にいるんだから。」
「時々来るんです。特殊犯罪課を見に。協力もできるだけしているんです。貴方がしてはいけないことへの後悔をするべきです。此処で話せる内容ではないので屋上に上がりませんか?相宮もあの部屋から出ることはないでしょうから。」
梅津は頷いてついていった。靴の音がリズムよく鳴り響いてはいなかった。階段が感じ悪く感じてしまった。屋上に上がるときに買った缶コーヒーはぬるくなっているであろう。屋上では雲行きは怪しいままだった。ベンチに正は座った。
「一課長も座ってください。これから大切な話をしますから。」
「こんな接待、前にも受けたよ。それも特殊犯罪課でさ。」
圭吾の手は缶コーヒーへといった。何処かで落ち着きを得たかった。
「井本から俺の母親に託したメモを読んでもらいたくて来たんです。それも驚くような決断をしてしまっているんですから。」
荻の手から梅津の手へメモが移った。正は缶コーヒーを開けて飲んだ。2杯目である。苦くも甘くも感じていない。
「これが本当なんだな。死ぬ覚悟でやっていることだな。」
「父親としてのプライドみたいなのはないんですか。息子は署長も誰も信じれないわけじゃないからいいにしろ課全体で自決するつもりですよ。」
「俺もな。調べてるんだ。佐伯について潤紀への罪滅ぼしだよ。守れなかった。いや、守ろうとしていなかった。あの子は裏切りも真相も静かに見て聞いていた。羨ましかった。」
メモを手帳に入れようとした。荻は手をかけて止めた。安易に扱ってほしくない。内容が佐伯にばれたら特殊犯罪課の命に係わる大事な命綱だ。
「わかってるよ。大切なものだと。俺にもお守りを欲しい。」
「わかりました。もっていて下さい。5人の命が詰まってます。署長にも気を付けて下さい。一番の要注意人物だろうと考えています。俺に託された意味ばかり考えずに貴方にわかって欲しくてきてしまって迷惑でした?」
「いいや。俺はあいつらの部屋の中に入れなくていてどう考えているかもわかっていなかった。これではっきりわかって動くことに躊躇する必要がないという意味だ。」
荻と梅津はコーヒーで飲んだ。ある意味苦しみを味わう誓いをしたような行為だと思えた。




