警告
正は病院に向かった。母の病は悪くもなくよくもないという状態だ。誰が見ていても悲惨に思われてもかまわない。病室に行くとベッドで本を読んでいた。
「母さん。どうかな?」
「いいといえるのかしら。先生はまるで答えてくれないのよ。それよりとも君は?」
母は情けない姿であるが仕方なかった。全てを話す必要があると思った。
「相宮と話したんだ。当分これなくなるかもしれない。大切なことだからね。あいつは少しだけ変わった。いい感じにね。」
本を机の上に置きメモを出して書き出した。何か大切なことなのだろう。メモを渡してきた。
「本なんて俺が渡したかな。」
「正じゃなくて井本雅也って言ったかな。とも君が来てないと聞いてきたって。俺は関係ないとは思えなくてって。」
正は雅也がメッセージを残していたという。それをメモに書き込んだのだ。狙われることを恐れているのだと。屋上に上がってメモを見た。
荻さんへ
佐伯琢磨の関係者である秘書の方に話を聞くことを5人で考えています。それは智穏も公認しようかとしているところです。最初は優唄に聞き込みをしてもらいます。ある意味、クビになることも殺されることもみな認識済みです。署長が過去に防衛大臣の秘書から署長になったと知ったことで信用がなくなりました。一課長も同様です。捜査一課の2係にも気を付けて下さい。もしものことがあっても思い出すことはやめてください。それを貴方のお母さまに伝えるのはいけないと思いました。智穏と同じ経験をするかもしれないと。でも、負けないです。特殊犯罪課は無敵であるべきだと。
井本雅也及び特殊犯罪課一同
警告をしてくれているということを肌に染みた。死を意識してまで死神と戦う。警視庁に信頼を置けなくなって正に伝えたのだと思った。負けないと雅也の言葉があった。無敵であるべき。強さと失ってしまうかもしれないといっているのだ。メモの端に暗号のようなものが書かれていた。何かを意味するものなのか。利用しなければいけないものなのかと思った。大切なものを一度失い再びわかってやっている人達だから。全てを明かすことはできなくても残してくれていることだけでうれしかった。潤紀も和翔も関わって。簡単な条件ではなく死神を倒すと。
自動販売機で缶コーヒーを買った。安っぽい味のするものは少なくなってきている。苦味も感じることができる。感情的に久しぶりだった。何かを無くしてしまうかもしれないと考えることを。




