真の裏切り者
捜査一課2係は別の事件を行っていたが一課長が署長に伝えたことにより外れることになった。過去が明かされたことは出世に関わることになる。
「佐伯琢磨については和翔が詳しく調べてくれてる。花通りにある養護施設について調べてるよ。」
「優唄は調べろ。」
智穏は署長室へ向かった。2係に起きたことを全て隠さずに伝えるという作業をしなければいけないと思ったからだ。ノックを数回した。誰が来たかを知らせる合図のようになっていた。
「相宮、そう気にすることはないから。」
「署長は一課長から聞いたんですか。それはいけませんよ。」
彼は苦笑いした。署長は窓を見つめた。政治家に翻弄される警察なんて誰が見たいだろうか。こんな世界にいることが恥ずかしく思う。
「荻の事件もすべて佐伯がつながるのか?」
「それより3人の事情聴取はしましたか?」
「したよ。資料はあとでもっていくよ。2係がひどくかかわるなんてそうとう金に関わったとしか考えられない。」
署長の口調は穏やかすぎた。平凡に済む問題ではないが。
「俺たちはいくら権力があろうとなかろうと関係なく切っていきますから。そうでもしないと不正はなくならないですからね。」
「そうだね。」
コーヒーを出してきた。世間話でもしようと思っているのかと考えた。死神は過去を掘り起こさないと出てこないとしたら署長がつながっているといわれても可笑しくない。むしろどこかで納得してしまう。
「相宮は警察につくきっかけは何だ?」
ソファに偉そうに座りながら言った。嘘の調書を書かれても雅也がいるから大丈夫だ。頭で思いながら口を閉じた。
「俺は従弟を守るためになりました。何時も守られてばかりでふがいないと思ってなったんです。事故の被害者は得なんてありませんよ。」
「君は良いものをもっている。私はもともとは防衛大臣の秘書だった。だが、あることから異動になって今ここにいる。」
智穏は口に空気が入ってくる。佐伯とのかかわりで動かされたといっているようなものだ。手玉に取られていることに気づいた。
「貴方は佐伯琢磨とつながっている。そういいましたよね。」
「君はレコーダーなんぞもっていないからね。櫻野や大葉みたいに用心していない。」
シャツのポケットから薄いレコーダーを出した。これはあくまでも捨て駒だった。署長は足で踏みつぶした。
「君ももっているのか。でもかまわない。あの部屋はそうか。簡単に開かないようにしてしまうか。」
「そうですよ。簡単に信用していないからこの仕事をやっていけるんです。いい話を聞きました。ぼろ出すのが早かったみたいですよ。裏金のことでまた伺いますよ。なり切り署長。」
智穏の手は汗でべたべただった。そのくらいの裏切りだった。




