過去の試合
翌日、智穏は捜査一課の部屋へ向かった。捜査には参加はしないといい切ったので気持ち的にはすっきりしていた。
「一課長、いいですよね。此処でいうのは貴方のプライドが許さないでしょうから。」
「わかった。廊下で話そうか。」
一課長の机には特殊犯罪課の写真はなくなっていた。家族の存在すらなくなっているように思えってしまった。廊下に出ると一課長は壁に寄り掛かった。
「俺のプライドなんぞズタズタにしてくれてもかまわなかったのに。」
「俺の何処かに潤紀の親父だということで頭にあるパズルのピースをはめようとしないのでしょう。特殊犯罪課に行って少し取り調べ的なことをするだけです。」
小さな部屋へと誘導した。4人はレストランにいる店員のように並んでいた。何処となく緊張しているようだ。
「コーヒー、飲みます?」
「取り調べじゃないのか。それなのにコーヒーだなんてふざけているのか。」
「取り調べじゃありません。過去のことを少しばかり掘り起こすだけですよ。潤紀もいますから手ごわいですよ。」
実の息子は何処か堂々としていた。背を伸ばして立っている。どんな事も受け入れる覚悟しかないといわんばかりに。
「佐伯琢磨知ってますよね。この事件は過去を探らないと何も出てこないんですよ。全て話してくれるほうが信頼がありますけどね。」
優唄の口調に乗っけられるそうになる。さすが、聞き込みの天才だ。和翔は腕を組んで上で眺めている。雅也は資料を机の上に並べている。潤紀はただじっと座っている。智穏は一課長の目をにらみつけた。
「ああ。知ってる。潤紀の生まれてどうしてすぐ養護施設に入ったのかもすべてつながっている。相宮があった事件も。」
「佐伯琢磨はあの総理の手下のようにしていた。だけど、彼は自分の都合が会わなくなると殺し屋に殺すように指示した。それができたのは愛人の隠し子である佐伯海斗だった。うまくいけば政治家にしてすべてを帳消しするつもりだった。海斗はお前らは調べただろ。犯罪を犯した。大麻はあいつの実の親父にはめられた。」
海斗はすべて琢磨にはめられたのだ。自殺なんかじゃなくて他殺であったのだ。雅也は頷いた。
「嘘を書いてあったことはわかっていましたよ。裏に必ず警察関係者がいるとね。それが貴方であることも。」
「正解だよ。井本。脅されることになりそうなこともわかっていた。その時はプライドを守りたいということだけだった。」
噂の養護施設に入れることを選んだ。圭吾は静かに話している。耐えられない過去であるとも戦わなくてはいけない。




