仲間に伝えたい
智穏は署長室に呼ばれた。次いでとも言い難い状況である。クビだと宣言されても大して驚かない自信がある。大きな態度をとったのだから。高そうなソファに座るように促された。やわらかい感触に体を鎮めた。
「相宮は賭けをしてしまう。荻にそっくりなほどな。あいつはいつも自分を試していた。お前が捜査二課に来た時、一匹オオカミのようにしていて扱いにくいと知っても相棒にした。」
「そんなことがあったんですか。巡査が終わって初めての刑事の部署が捜査二課でしたから緊張していただけなんです。加えてひとを信じられないということもありましたよ。」
さっきの行為についてどういいたいのだろうか。学はあることには一切顧みなかった。それは真実を見つけて問い詰めることだった。事件を悪用することが裏で盛んにおこなわれていた。感づいていたのだ。
「君はクビになることはない。なるとしたら梅津だ。自ら作った課に潰されると思ったらゾッとするだろうな。だって正論を言われて間違いだとあっさり言われてしまうんだから。味方だと思っていたら敵だったというどんでん返し。」
「一課長は潤紀の親父です。驚くほど悪党にしか見えなかったんです。雅也も優唄も和翔も潤紀もいます。死神に対する圧に怯えながらやっているんです。3人の事情聴取ができないのは管理の怠りだとも考えます。」
署長は窓を開けた。生温かい風が吹き付けた。町は彩を付け始めた。真っ暗な闇に複数の光が飾っていた。
「そうだね。梅津は捜査一課にいた頃に何かを起こしていたのかもしれない。エースといわれていたんだ。梅津圭吾という男は。」
彼はソファを眺めながら言った。過去の出来事はあまり語ろうとしないらしい。それくらい口が堅いとはいえる。
「エースが犯罪に手をかけたというのは考えられませんか。だっておかしいじゃないですか。操られていることも。刑事だけじゃないです。政治家だってあり得ます。」
「3人の事情聴取は俺がやる。梅津の件はこの聴取が済んでからにしよう。隠し事も明かしてもらうことにしよう。」
署長が告げるとコーヒーが出てきた。黒く染まった闇を見ているような感じがしてしまった。
「仲間思いの君にはできることで死神を敗北へ向かわしてくれ。それくらい力の強い課なんだからな。」
「大したことなんてないと思うのはやめました。死神と戦う覚悟がないといけませんからね。弱っていたら飲み込まれてしまう可能性がありますから。」
彼の発言に笑顔を見せた。




